表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪のマ王がやってくる  作者: うえぽん
1章 国づくりを始めよう。
3/32

003 戦争を始めよう。

 突然、マの国を名乗り3000もの兵力で侵攻してきた。現在、河を挟んでにらみ合いの最中との報が届いた。3万の大援軍編成中で、10日後には進軍とのこと。無事防げるのだろうか「王都新聞」



 遠くでニワトリの声がする。日の出ちょっと前のいつもの時間。剣の型を一通り。筋肉をいじめる運動を四半時行う。パンを買いに行くついでに緩急を付けて走り、館に戻って、身体を拭く。

 野菜や肉などを切って鍋に入れ、火を付ける。この間にテーブルをセット。火を止めると皆を起こしに回る。この時に、ねぼすけなユーリの寝顔を堪能するのが毎朝の楽しみ。

 朝日が差し込む頃には、顔を洗っただけの寝ぼけた面々が現れる。

 スープをよそい終わって、みんなが席に着く頃に慌ててユーリが飛び込んでくるのもいつものこと。

 今日は良い野菜は入ってねとかハムの出来が良いなどと言って、反応を見るのが楽しみ。


 「あれから3月経ち、住居、畑、放牧の問題は無く、武具の準備もできた」シーが言う。

 「後方も大丈夫」とリー。

 「現地の天候は当分安定、相手の配置は想定通り」とルー。

 「出発は10日後、通達済み」とハニーじゃなく、ユーリ。


 「よろしい。戦争を始めよう」


 ここに来たのとは違い、電撃的な速度で進行する。後方と便宜上言っているけれど、補給部隊は配置済みで先端は最前線にある。歩兵を言葉通り歩かせるという無駄なことはしない。人材を行軍で磨りつぶしていては、戦場での計算が狂ってくる。っていうか、出発の時の意欲が残ってないでしょ。1ヶ月も歩いてたら、あちこち痛くてそれどころじゃ無いって。さあ戦えって言われても、え〜だよ。もう帰りたい。


 戦いなんてめんどくさいんだから、パ〜っと行って、パッとやって、美味いもの食べてじゃないとやってらんない。食べ物やお手当に何よりやる気を天秤に乗せれば、丸わかり。数で押すとかとか、バカじゃ無いって思うよ。固いものを固いもので壊すんだから何倍も上回ってないと無理だし、お互いがかなり痛い。このやり方で利益を出すのはかなり難しい。国の威信とか怨念とかを引っ張り出さないとできないもの。


 僕らは、目の前の5000人の街を100人で攻める。ローコストローリスクでハイリターンを狙う。これは、僕らの新しい商売。押しつけだけどお互い益になる。儲からないとまたよろしくもできないから。

 今回はオープン記念、第1回ということで、こちらにとって切実なもの。相手に合わせていなくて申し訳ないんだけど、儲けさせるから良いよね。ユーリはサギって言う、まあ似たようなもの。


 戦と言えば、大量消費。狙いはそこにある。ただし、こっちはそれに付き合うつもりはないけどね。今回の主力の大砲は、打ってもそうそう当たるもんじゃ無い。ドカンドカンとやたら打って当たるように何かにお願いするやり方だから、大砲が出てきてもおおって言うだけで、どうせって思う。それではただの指揮官のストレス発散、兵力アピールにしかならないもの、開始の合図って扱い。そういう慣習を逆手にとって、こっちの陣に大砲をゾロゾロと並べて、見て見てすごい兵力でしょう、攻めてくんなよと。


 こちらは大きな河を挟んだ少し高い陣地で、時折騒ぐ。食事時にはモクモクとたき火をしているだけ。公称3千の軍勢を40人でやっているので、ボロが出ないようにアレコレと苦労している。別にたき火したりして遊んでいるわけではなく、3千人分の食事を演出という小賢しいことこの上ない。少人数の声が届くはずも無くから太鼓や鐘、空砲で誤魔化している。現状は、陣地構築中という事になってる。


 今回の作戦は、「パン職人が足りないという要望が出ている」と「あの娘を呼びたい」から起案されている。パンが無ければもらえばいいじゃない作戦とも言う。あと、この状況通り人員が足りない「特に兵力」

ね、切実でしょう。恋も大事。最初いっぱい連れて来たんだけど、町づくりは大事だし畑無いとご飯食べられなくなるし、人が集まれば店も必要となった。人足りないよ。あれ〜、おかしいなあ。


 今は、合図を待っているところ、開戦の合図。僕が出すと思ったでしょ。


 これからって言うより、ほとんど終わったから、最後のシメって言う方が合ってる。ちょっと準備に時間が掛かっちゃって、慌てて準備してるんじゃないかな。慌ただしさや緊張感が遠くから伝わってくる。結果オーライ。こっちも慌ただしくなってきた。開戦の使者が来たんだろう。

 曖昧なのは、僕はここ。敵地に居るから、今回は人材確保なんだから、事前のご説明が大事、気の迷いがずっとになるくらいしっかりと。それに先祖の土地から離れたくないとか無理な事情があったら悪いでしょ。評判の店を捨てて来てとか難易度も高いよねえ。愛しのは、幼なじみ押しでゴー。新しい場所に来て不安なところを狙うというクズ野郎作戦。兵士の方は、まあ大丈夫かな。


 第一陣の説得が出来た頃を予想して僕が来てるのソロで。あの朝の「戦争を始めよう」は、行ってくるよみんな一緒に行かない? をかっこつけて行ってるだけ。誰も着いてこなかったよ。

 大体の承諾得たけど、最後の一押しは必要。移住だよ。簡単に「来てよ、OK」になるはずがない。今晩はって、僕が行くとみんなわあってする。顔は売ってた売りまくってる。この街にも功績はいくつかあるし、大いに新聞に煽ってもらってるのもそのため。悲劇の王子登場のシーン。ぜひ、私と新しい国に来てくださいという涙もののシーン。年期の入った演技を見よ。多少大袈裟なシーンに感動しない人はいない。


 これを何回か繰り返すの、ほぼ人数分。逃避行と言えば協力者、おとなりにも協力してもらう。まあ、善意だけじゃ、おまんま食えないから美味しいのは当然あるし、黙ってるとは思えないから、うっかり口を滑らせ用の話も教えとく。ここだけの話だからね。


 まあ、軍人はチョロい。僕と接点多いから信者みたいなのも居るし、戦争の経験の無い軍人は鍛錬を欠かさない僕の敵じゃ無いから、襲ってきたら伸して強制的に説得するだけ。この人達にも家族居るし、人数分繰り返さないとだけど、良い人やり過ぎて元の人格よく分からなくなってる僕にはどんな顔だってできる。悪役だってね。

 全員の説得が出来たら、「急に対岸に敵陣地が現れた逃げろ」って騒ぎに乗って、脱出してもらう。


 時間待ちに回想してんだけど、準備完了の合図が来て、いよいよ戦端が開く!

 定番の大砲バーンだなって、向こうの領主や指揮官、兵士たちがどうせ当たらないって、のろのろしてるから準備が終わってない。ところが、大砲の音と光が見えたと思ったら、すぐにこちらに着弾する。その上炎上まで。演習で試射した大砲と全く違う速さで飛んできて、必中である。うわあ!準備はまだかノロマ。慌てた指揮官が矛盾する命令を出し、辺りが混乱する。相手の大砲が次々と着弾して、家を壊していく。あの武力の誇示に並べているだけと思っていた、必中の大砲が城門を狙って、あっという間に壊されるに違いない。誰もが「負けた」と思った。一気に大軍が押し寄せて、粉砕されると。

 ところが、大砲が止むと使者が現れて強固な守りを抜ける気がしない。敗走するので、追撃を容赦願いたいと敗北を宣言してきた。

 全く勝った気がしないが勝ったのは事実、報償をもらわねばと利に聡い司令官は、ほくそ笑んだ。

 攻めてきたのは、マ王が収めるマの国。甚大な被害を受け、失った住民も多数いる。我らは勇敢に戦い、開戦からわずか1日で勝利し、押し返したと王都へ報告し、援助を請う。大砲のことは報告しない、真実みが薄れる事実は余計なこと。


 「よっしゃ〜 負けた〜」

 指揮は、指示を明確にしないと。帰りの合図を宣言する。敗北宣言の使者が走っている間に素早くお片付け。何も残さないように指示と確認に回る。

 机上の策だったが、全てうまくいったと思う。着弾のタイミングが早すぎるとか、火が大きすぎないかとか、ばたついていたとかはあるけど、1回目。上出来だと思う。反省はあとでしっかりと今は素早い撤収をして戻る。早く帰りたい。

 あの大砲は、ただの花火の筒。音がやたら大きい。当たらないなら発射しなければ良いだろうと僕が考えたもの。空砲を撃ったタイミングで爆発させれば良いだろうと。当たらないものが必中するのは、良く知っている者ほど恐ろしさが分かる。司令官、指揮官はさぞや恐ろしかっただろう。当たるだけで無く炎上するなど今までに無かった弾を使っている。恐ろしい。

 お隣さんには、荷物を全部出しておいて、ついでに自分の家も焼くことを耳打ちする。これでバーンバーンって、的確に家に当たり、炎上する(ように見える)。兵舎が大爆発して炎上するのは、面白いかと試したもので仕込んで置いた動物の血が飛び散って、惨状シーンが出来たはず。ちなみに空砲を発案したときに大笑いしたものには、組み手でしごいてやった。


 一方的に停戦を宣言して、撤収する。

 その後、燃やされた家は補償されて新築となる。都は沈静ができたけど、地方はもれなく王子放逸騒ぎで住民に降伏してるから、筋の通った請求には応じるようになっている。隣人を殺され、家を燃やされたお隣さんは、嘘泣きをしばらくするだけ。家が新しくなって大喜び。ここだけの話が広まるのは時間の問題。直撃された家に死体が全くないよ、と言うのは無粋な事。気付いてない人はいないけど黙っとく。

 兵舎を直撃されたり、家が焼失して、建築やそれに伴う物がバカ売れ、災害景気がしばらく続く。

 形の上では勝ってるしで、消費も多くなる。便乗景気がさらに続いていく。


 勝負には負けたけど、美味いパン屋には来てもらった。恋が上手く行くのは気分が良い。でも相変わらず人材不足中で、見かけ兵力無いただの村。まあ、潜在武力が上がっているから良しとしよう。


 今回は、側近4人とも来てくれなかった。というか、料理出来ないんだから、一緒に来た方が良いって。ヒモノみたいになってたし。

 ここでは、僕を王子と呼ぶ者はいない。それが嬉しい。


 戦争をするときには、マ王と名乗っている。ここは、常敗の侵略国マの国である。


本日もありがとうございます。


またよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ