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悪のマ王がやってくる  作者: うえぽん
1章 国づくりを始めよう。
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001 王子様の成人の日。

新しい話を始めました。よろしくお願いします。

 今日は、国にとって最大の慶事。第一王子様が成人を迎えられて、次期王の指名を受けられる。見目麗しい、政治や経済に通じてる素晴らしい方。様々な活躍の童話や歌劇に記されていて創作もあり、どれもが大人気! 多くの救われた者から英雄と称えられている。さらに国が栄える。喜ばしい。「王都新聞」



 さっそくですが、僕マトリニウスシセス・シテイニキリウナ・ミチナチテリキクス・リーセイウト・シーファナリは・・・って長い。マーで。

 マーは、大国シーファナリ国の第一王子。つまり次の王。今日で15になるから次期王の指名をされるのが慣例。現王は民衆の前に全く現れないが壮健である。とても元気というのは、新しい弟ができると聞いているから、ん元気。

 病気や怪我から突然にお隠れはあるので、後継者争いを避けるという先人の知恵。後継者争いで揺れるのは市井しせいでもよくある、それが国になって長い争いで貴族が一新した例があったことから後継者をとりあえず決めて、王子や姫がみな成人してから、一番優秀な者に選び直す。というのが慣例。大きくて古い国ということもあって変化を嫌う、いや、伝統を重んじる体質がある。

 とは言え、前例は国が割れて何年も争って疲弊した末に後継者指名が行われるようになるなど、大きな変化で作られるもの。国が大きく揺れるときにできる。理論的に考えてとか、現在の社会に沿うようにと言うことは一切無い、とりわけ腰の重いこの国が仕方なく、やむを得ずで処理した記録が前例になる。それはそろそろというのは予想ではなく確信、今日だ。


 古く、伸びしろの無い大国では、衰退していくしか無い。大国としての力を使って、財を外に求める方法もあるのだけれど、国交を止めたことが前例となってそのまま。大きいだけに全て事足りるのがいけなかった。戦いという方法も他国を攻める方法が分からないし、そもそも隣国の事が分からない。民の間では盛んに商いが行われているんだけど、前例に従って情報すら求めない。国は何も知ろうとしない。


 まずは敵かどうかも分からない隣人を知らなければと手を伸ばした。一方で味方つまりこの国の隅々まで知らなければ生かし切れない。深く広く。というか分かってくると楽しくって、もっともっとと探っていったせいで、おもてうらに満遍なく届く。この国の諜報部門が名誉職というのまで。

 最初、力やお金、とにかく何も持っていなかった。まだお子様の僕はその外見まで利用して国中を動き回っているうちに、溜め込んだ知識の使い道が分かってきて、お金と力という名の人脈が出来てきた。興味の赴くままに動いただけ、輝かしい大国に陰を見る。わずかな強者の陰には、多くの弱者いた。しかし、明るくたくましい。少しの助けで大きく羽ばたく。もっと出来ることはないかと尋ね歩いただけの僕に次第に情報を集めて持って来てくれるようになったし、力を貸してくれるようになった。経験は僕の力にもなる。気がつくと僕を誉めてくれる人が増えていたんだけど、理由が最初分からなかった。


 成人といえば学校入学になるのだけれど、勉学の場所ではなく社交場と化しており、あの人達から得るものは無い。かえって関わって楽しくない事に舞い込まれる方を心配する。もしもと仮定しても理由をでっちあげて行くことは無いだろう。とっくに教わることも無い。最近は逆に教える事が増えて、王子よりも先生呼びする人が多くなった。


 情報で国を、行動で人心を掌握済み、いつでも王位譲渡可能ですよってするの不味いとは思ってた。でも知ること学ぶこと、それを生かすことが面白いし、みんなの笑顔を見るとつい次もと思ってしまうんだよ。これは仕方ないと思う。分かってる。王は少々おバカさんくらいが良いって、貴族達が思っているってこと。僕が目障りだって思われてるって事も。


 「お立ちください」


 そうそう式典の準備で、顔と頭をいじられてヒマだったところ。さあマントをどうぞって、あ〜顔しなくて良いから、ちっさいの分かってるしね。伝統のマントの寸法をいじれなかったって当たり前だから、縮尺変えてみればかっこよく見えるって、近くで見ないから大丈夫って言っておく。

 このいつもぼくのお世話をしてくれるのが、ユーリ。年は3つ下だけど、同じくらいにしか見えないと言われてるのも知ってる。僕の乳母の子だから生まれた時から知ってる。僕は大好きなので、結婚してってよく言ってるんだけど、相手にしてくれない。身分違いとか考えてるんだと思うな。まあ、僕の作戦と周りの声から君は僕のお嫁さんになるしかないにしてあげるから待っててね。僕は愛情を込めてにっこりする。


 それから2時間も待たされて、着てるものが重くて動きにくい、ぼくの口にパンを突っ込まれたりしているうちに、よくやく呼ばれてズルズルと回廊を歩いて行く。

 ドアの向こうで、やたら長い名前を呼ばれて戸が開く。僕は、見栄えを計算して鷹揚に歩くと、ため息のようなものが聞こえる。近づいてみなければ、引きずっているマントも威厳のあるものに見える。パッと振りかけてもらった光る粉とか、髪に編み込ませた金糸銀糸とか、セコいくらいに計算した、錯覚という効果。窓に鏡係を置いて、服を光らせているという小細工も忘れていない。ユーリがイカサマっていう通り。


 「マー(以下略)が、成人の報告に参りました。陛下より王へお伝えをお願いしたく」


 ホントめんどくさい。尊きものに直接話が出来ないからって、お付きの陛下に伝言を頼むとか、直接にしてよって思う。大きな声ダメって作法で聞こえてないし、伝え間違うことが起きる。ちなみに陛下って言うのはお付きの事。偉い人の下に居る役目。陛は階段で階段下に居る官。「階段下にいる僕が偉大なとーちゃんに誕生日を祝ってってお願いしに来たよ」という意味で言ってる。

 僕が次の王の指名を受けると殿下ってのが付く。尊き部屋にずっと居るようになるというか、軟禁されて外界と遮断される。有用な情報だけ届くっていうのは聞こえが良いけど、飼い殺しって事。やだね〜そんなの。で、陛下を買収してある。そりゃあ内容がすり替わってるのなんてのは、すぐ分かるけど、僕がここに収まってるなんて無理っていうか、居なくなって欲しいって思ってるだろうから、問題無く王の言葉通りの実行となる。最善だと思うよ。大臣達の策謀候補にも無かったと思うけどね。


 四半時、人形のようにじっと待ってると、陛下が現れて王の言葉を言う。


 「マー(以下略)の成人を朕は喜ばしく。成長した姿に(見てないのに分かるはず無い言葉が続く)であり、活躍の機会を与える。マー(以下略)の名を預かり、彼の地への旅立ちを命ずる」


 ザワザワとなる。僕は楽隊に演奏を指示し、鷹揚に手を広げ、騒ぎを静める。

 だよねえ。次期王の指名かと思ってたら、名前から何から剥奪の上で追放だからね。なんだそりゃ〜って。もし突然言われたら言っちゃうよ、僕なら。


 「名も無き者、彼の地に旅立ちますと陛下より王へお伝えをお願いしたく」


 今度は、間もなく。陛下は王の言葉を言う。(まあ、聞いても言ってもいないからだろうけど)


 「うむ。さらば壮健あれ」


 演奏を盛り上げさせて、きらきらしく優雅に僕は、謁見の間を後にした。


 これと同時に、記録を担当する部署に伝令が走り、身分どころか記録抹消を行う。次期王って書く準備をしていた部署は大慌てだろう。広報部門も内容差し替えで大慌て。歴史記録部署では、これを記録。成人で廃嫡の前例ができる。


 「あんなにかっこよく魅せたしね。王子廃嫡は何故、惜しいって思ったはず」


 演奏でざわめきを消しきれず、場は悲鳴が混じる騒然な場となった。

 重さで走ることが出来ないながら、早足で控えの部屋に戻り、服をばっと脱ぎ捨てる。


 「やってやった。自由だ! 行こうみんな」

 「まさか本当にやるとは」「どこまでもついて行きます」「ほんとにもう」「バカよ」


 すれ違う者は、謁見の間の事態をまだ知らない。次期王だと恭しく頭を下げてくれる。僕は、品位を保つ、ギリギリの早足で歩いて行く。早く早っくって、気が焦る。


 衛兵が、僕を見て慌てて内門を開く。すぐに、うわ〜っと、大歓声が起こる。


 僕が手を上げると静かになる。

 「捨てられたぞ〜」で、わ〜。「冒険に行きたいか〜」わわ〜。「着いてこ〜い」一際うわ〜っと。

 僕達は、外門から大勢を引き連れて,大通りを通り、都を後にする。兵士が隊列を組んで行進し、楽団が盛り上げると紙吹雪が舞う。見送る住民は手を振っていて、まるで勝利の凱旋のようだ。


 バンザイコールがあちこちで起こる。勘違いなんだけど、訂正しない。城内門前にいたのは僕達の連れ。一派を引き連れて行進中というか。身分どころか名も無いなんて奴隷以下で、お役所の書類が回るのを待って実施となったら、身1つで放逸なんだから。ばれる前に大勢と大量の物資を持って逃走!を堂々としてるところ。


 隊列は長く長く。都をでて、進むほど長くなっていく。賑やかに楽しげに。

 未開の地は、歩みの遅い隊列で1月ほど。未開の道中に食料を提供する出来たばっかりの村があったり、道が広く整備されていたって言うのは、偶然では無い。5年位前に王を目指さなくなった僕が、この大国をもっと栄えさせてやろうと計画した。壮大な実験。


 栄えるには戦いが一番。なら敵になってやろうと思った。シナリオ通り栄えるかは、この国の努力次第、ある程度の知恵があれば良いから、間違うことはないはず。多少の間違いの修正はするよ。


 準備万端、土地の把握、周辺の情報収集も常に。

 まずは、町づくり、国づくり。


 さあ、始めよう。


ありがとうございます。

また、次もよろしくお願いします。

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