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緑告(りょくこく)の旅人

作者: 深海魚

人の命を別の物に例えるならば、草木と私は答えるだろう。

幼い頃から周囲の人々を見て、そう思った時から考えは変わらない。

草木は太陽の光や恵みの雨が必要で、伸びて他の力を借りて子孫を残す事が多い。

人も同じだ。

太陽の光も恵みの雨も必要で、他人の力を借りないと生きていけない。

私は、その在り方を美しいと思う。


水のせせらぎ。

そよ風や木漏れ日。

そんな物に囲まれて私は育ってきた。

都会の喧騒に初めて遭遇した時は目眩を起こした事を覚えている。

私には都会の活力は忙しくて、眩しすぎた。

それでも田舎も都会も同じように旅をする。

私は、私に出来る事をする為に旅をしていた。


私は少しばかり……いや、かなり変わった事を仕事にしている。

何処の調子が悪いのか分からない人に原因の箇所を教えたり、寿命が近いかどうかを教えるのを仕事として扱う。

存在を知らない人の方が多く、基本的には私から話を持ち掛ける。

時々、携帯電話で依頼を受ける事もあるが貴重だ。


何故、調子が悪い原因を言い当てたり寿命が近いかを告げられるか。

それは私の目が少し変わった形で教えてくれるからだ。

人に巻き付く様に生えた植物が私には見える。

年齢によって葉の色が変われば、花が咲いたり実もなる。

初めて見えた時は驚き、そして周囲を戸惑わせた。

病気の部分があれば、その近くの植物の葉も病気に掛かった様になる。

花が咲けば恋をしていたり、心身共に絶好調。

実がなれば妊娠していたり、妊娠させていたりする。

葉が枯れて散り始めれば、寿命が近い。

一気に葉が散れば、その人は必ず倒れる。


見える様になってから長年過ごしてきた事だから分かる事だ。

それを伝えた時は大層気味悪がられた。

人は異端を嫌う。

何処かで聞いた言葉が、その時になって身に染みた。


受け入れてからは開き直って、こうして職業として扱っている。

勿論、これだけで食べて生きていける訳も無いので経歴書等が必要の無いバイトもこなしている。

税金とか、その辺りは払うべき現場に直接行って納めている状態だ。


池の傍を通り、水面に映った自分を確認する。

水面に映った自分にも、その植物が確認出来た。

そして葉が無い腹の辺りを撫でた。

一部だけ葉が無い場合は、その辺りの臓器が死んでいるか無い。


私のは葉を取った場合、どうなるかを確認した結果だ。

子宮や膀胱等がある部分の葉を自ら取ってみた。

すると子宮が駄目になり、摘出手術を受ける羽目になった。

だから、なるべく葉は弄らないと決めている。

勿論、見えている私でしか植物の葉を弄る事は出来ない。

その点は少し安心した。


雲は多少あれど晴れた空の下。

歩いていれば小さな村へ到着した。

古びた家が多く、中には長年放置された事が分かるような家まである。

ここに住んでいる人は少なさそうだ。

そう思いながら歩いていれば畑を弄る女性達と男性の姿が。


男性は年老いており、葉は枯れているが散る気配が無い。

女性の一人も年老いており、同じく枯れているし腰の辺りの葉は枯れながらも変色していた。

もう一人の女性は二人より若く、緑も若々しいが頭の辺りの葉が変色している。

頭の辺りの場合は色々な原因が考えられ、脳の異常の他に精神の異常も影響されるのだ。



「こんにちは。」



話し掛けてみれば一番若い女性だけ気が付いた。

残りの二人は年相応に耳が遠いみたいだ。



「……こんにちは。えと……な、何かようですか?」

「いえ。珍しく人が見えたので話し掛けてしまいました。そこの二人とは、どういった関係ですか?」

「……んと、お母さんの方の……おじいちゃんとおばあちゃんです。え……あれ?その……あ、大丈夫か。」

「なるほど。貴女の母方の祖父母という訳ですね。二人とも、お腹の調子は良い方では無い。そして、祖母の方は腰を何かしら負傷しているみたいですね。」

「……私、そこまで話してなかった……うん、なかった。けど、なんで……その、理解……じゃない。分かったんですか?」

「少し私は特別なんですよ。気になるようでしたら、貴女の祖父母が長生き出来るか教えて差し上げましょうか?流石に、それはお金取りますけど。」

「……えと、なんだっけ?……不必要?違うな。いらない、です?」

「そうですか。何か、ご家族の方で原因不明で困ってるとかいらっしゃいませんか?」

「……お母さんが。あの……呼んできて……お願いして……大丈夫ですか?」

「ええ。金額は多少任意で用意して下されば言いますよ。」

「……じゃあ宜しくお願い、致します。」



若い女性は深々と頭を下げてから去る。

それにしても話すのに、かなり苦労していた。

そうなると精神的な関係で頭の辺りの葉が変色している事になる。

私は医者では無いから、速く治る事を祈るしか出来ない。

それが一番歯がゆい。

本来なら医者になりたかったけれど金額も時間の余裕も無かった。

一応、受験こそはしたけれど落ちてしまっている。


しばらくすれば母親と見られる女性を連れた依頼人が戻ってきた。

母親と見られる女性は怪しむような目で私を見てくる。

これが当然の反応だ。

寧ろ、何故依頼人は疑わなかったのか。

精神的な問題もあるが、性格的な事もあるのだろう。



「……連行……違った。えと……連れてきました。」

「大丈夫なの?新手の詐欺じゃない?」

「……さっき呼びに行きつつ、検索かけて?調べて?みたら居るんだって。」

「……ふーん。それで?」

「……私の気が、気じゃないから。お願い。ね?」

「あっそ。分かった。」



依頼人はすがるような目で私を見てくる。

私は彼女の母親を見た。

主に心臓と下腹部の辺りが葉が変色している。

と、いうより全体的に葉が弱々しい。

全体的な体調も良くないのだろう。



「心臓と下腹部の辺りに問題があるみたいですね。下腹部の方に関しては少しずつ回復している事から手術は受けましたか?」

「確かに前に子宮に関しては手術を受けたし、高血圧なのは認める。時々、胸が苦しくなる事がある程度にはね。」

「肺は異常無い結果が出ていますね。でも全体的に身体が弱っている様に見受けられます。バランスの良い食事や運動、きちんとした睡眠。どれか出来ていないでしょう?」

「運動と睡眠は出来てない。一度目が覚めると中々寝れないから。」

「運動は軽い物で良いから行えば、筋肉も減らずに済みます。貴女、冷えやすいでしょう?それで寝れない部分もありますよね、きっと。精神的な負担も多少あるみたいだけど、どちらかといえばホルモンバランスの乱れとか……その辺りが原因ですね。」

「貴女は一体……?」

「不調の原因や寿命の検討をつける事を仕事としています。後は普通の人間ですよ。」


そういって私は二人に笑いかけた。

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