【1】りんね様との出会い。
ん?なんだ?
何も見えない。なんだこれ。
意識はある。でも何かおかしい。
何も見えない。まるで目がないような。
何も聞こえない。まるで耳がないような。
何も動かせない。まるで手がないような。
何も喋れない。まるで口がないような。
そうか!僕はもう死んだんだった!
あれ?でも思考はできるぞ・・・?
記憶は・・・?そうだ!僕はマグロになって輪廻転生したんだった!!
死んだら思考しかできなくなるのか。
しかし僕は輪廻転生の儀式を行ったんだ!!
大丈夫!!
来世は念願のマグロになれるんだから!!
そんな事を考えていたら、目の前がパッと光り輝き見た感じ神様であろう女性が降りたつ。
「ようこそ、ここは輪廻の世界です。そして私はこの世の輪廻を管理するりんね様。何か質問はございますか?」
僕は自分の望む来世をりんね様に伝える。
「僕は死ぬ手前、マグロになるため輪廻転生の儀式を行い死にました。これにより来世はマグロとして輪廻転生できるんですよね?」
「え?ああ……ちょっと待ってね。…………ごめんね。操くん輪廻転生ができていないわ。正確に言うと、輪廻転生じゃなくて輪廻転生と死ぬ瞬間に唱えてるわ。これじゃ輪廻転生は発動せず、来世はご希望のマグロにはなれないわ。」
「そんな!!じゃあ僕は何のために……。」
「しかも操さんは、肉体の残らない通称マグロで死んじゃったから来世は人間にもなれないわ……。」
そんな……。僕は人間にすらなれないというのか。
「でも実は、地球で《輪廻転生の儀式》を宣伝しているのは、私の知り合いなのよね。もしあなたがえんま様にその事言うと私がすっごく困っちゃう……。よし!じゃあこうしない?」
りんね様は責任を恐れたのか、僕に何か提案をする。
「君の寿命は95才と無駄に長い。でも君は16歳という人生で一番楽しい時に寿命を放棄した。換算すると……79年の寿命が余ってるのよ。余った79年の寿命が尽きるまでは成仏して来世に行くことはできないわ。だから今流行りの異世界転生をして楽しい冒険でもしてみない?」
「んー。胡散臭いなあ。異世界転生ってなんですか?どうせマグロになれないんでしょ?」
「失礼ね!!要はあなたの75年余った寿命を使ってとある惑星で冒険してきなさいってことよ!!私にとっても最高の機会……いや、最高の勇者様なわけよ!!あんたマグロになってどうしたいのよ。」
「とある惑星ってなんですか??マグロ好きなんです。」
「いい。この宇宙には様々な文明を持った惑星があるわ。地球で言えば人間が生み出した科学や工業が大文明の一つね。そしてあなたが異世界転生する惑星はここよ!!」
りんね様はどこからか持ってきた宇宙地図にペンでとある惑星に印をする。
「この惑星の名は惑星出雲。この惑星の文明は何と言っても秘伝書よ。宇宙7大文明の一つと言われる惑星出雲に異世界転生するのよ!!」
「秘伝書って何ですか?魔法ですか?」
「ごほん!秘伝書とはすなわち!!出雲人が生み出した大文明である天才的な発明よ!!秘伝書には大きく分けて二つの種類があって、一つはスキルの秘伝書。もう一つは特性の秘伝書よ!」
「ほう。よく分かりませんが、すごいですね。」
「そうなのよ!出雲人は創作と具現化に特化した進化をしていてね。神を驚愕させるようなスキルや特性をたびたび開発しちゃうわけよ!!そこで操くん!君が惑星出雲に異世界転生してとあるスキルを宿して来なさい。」
「とあるスキルって何ですか?」
「うむ。そのスキルとは……死者蘇生の秘伝書さ!!私はどうしてもそのスキルが必要なんだ。どうしても蘇らせたいものがいるんだ。私はその人を愛している………。」
何だよ。リア充かよ。メスの顔して言いやがって。ムカつく。
「嫌です!!僕はリア充にバカにされてきた人生だったので。絶対嫌です!!」
「君は卑屈だなあ……。よし!ではこうしよう!本当は禁忌なんだが、私がこっそりえんま様に頼んで君の来世をスーパーデンジャラスな幸せ人生にしてあげよう。だから死者蘇生のスキルを宿して私の最愛の者を蘇らせてくれ!!君しかいないんだああああ泣操くん!頼むよーー!!泣」
「………。それは……僕がイケメンになれて、金持ちになって、キャーキャー言われるんですかね?」
「もちろんさ!!じゃあ操くん!!国民的アイドルになってあらゆる美女が君を愛すハーレム状態の来世にしよう!!!!」
「でも……どうせ記憶とか無くなってるんでしょう?……それじゃ意味ないんですよ……!」
「しょうがないな!!よかろう!私が何とかえんま様の靴をペロペロ舐めて、君の前世の記憶を引き継いだままスーパーデンジャラスなハーレム人生を開始させてやろう!これは地球人にとって前例のない人生になるぞ!!これでどうだい!」
「乗ったああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
「ハアハアハアハア……決まりだね。それじゃあ、君の気が変わらないうちにさっさとやっちゃおうか。」
「死者蘇生の秘伝書ってどこで手に入るとか何か情報ないんですか?」
「うーん。確か黄泉の国で手に入るとか何とか聞いたような。相当レアな秘伝書らしいからなあ。」
「とにかく操くん!何とかして死者蘇生の秘伝書を入手して、その身に宿しなさい!!そうすれば君の来世は天国以上に天国になれるんだぞ!!」
「よっしゃあああああ!!!やる気がみなぎってきました。」
「はい。とりあえずこれを渡しておくわね。」
「これはりんね様といつでも連絡できる通話機よ。こんな感じで手首に装着するの。ヤバくなったら即連絡!!」
「うふふ……うふふ。」
「何よ……気持ち悪いわね。」
「いや。女性と連絡先交換したみたいで嬉しくて……初めてなんです……うふふ」
「きもおおおおおおおおおおおおお!!ま…まあいいわ。とりあえず決意あるうちに異世界転生しちゃうわよ。」
「でも僕はもう肉体ないんですよね。異世界転生しても、幽霊となって彷徨うだけじゃ?」
「それなら心配いらないわ!!あなたの言う通り、マグロになって肉体はバラバラ。それでも成仏されずに魂と意識は残っている。」
「あるのよ。そんな成仏すらされていない、あなたにとっておきのいい解決策が!!」
りんね様は手を二回叩くと、りんね様の配下だろうか?僕の目の前に大事に保管されている死体を持ち運んで来た。
「これはただの死体じゃないのよ。生前は伝説の勇者として、あらゆる悪を葬ってきた人物よ!リリちゃん!!出番よ!!」
りんね様がそう言った瞬間、天井から忍者のように舞い降りる。
「紹介するわ!この子は私の秘書のリリちゃん。リリちゃんは、幽体を寿命を終えた肉体にドッキングできるユニークスキルを宿してるの。」
「操さん。ちょっとチクっとしますが我慢してくださいね。」
僕は何のことか分からんまま、リリちゃんの触手か尻尾でぐさっと頭に刺される。
「あ……来ました!!今です!!操さん。息止めてください!行きますよ!!」
僕は息を止めると頭を手で掴まれ、勇者の死体に突っ込まれる。
「さっきと違うこの感じ……。まるで五感全てが機能しているような……はっ!」
僕は目を開ける!!手を動かす!!叫ぶ!!笑う!!怒る!!そして…立ち上がる!!!!
「はっはっはっはっは!!やったー!!戻れたーー!!!!!!」
「元気一杯!!成功ね。」
「情緒不安定……怖いです。泣」
「大体話したわね。じゃあそろそろ惑星出雲へ出発しちゃいましょうか!!エロ爺!!来な!!」
りんね様が言った瞬間、またもや忍者の如く天井から降りてくる。
「ははぁ!!お呼びでしょうかりんね様……。」
「きゃああああああーーーー!!!!!!!」
ばちぃーーん!!豪快なビンタ音が響き渡る。
「こら!エロ爺様!!リリの触手摩らないで!!性感帯なのよ!!いやあああああああ!!!!」
エロ爺ナイス。女性のこんな声初めて生で聞きました。
「茶番はこの辺にしてね。エロ爺やりなさい。」
「はい。」
エロ爺が何か念仏を唱えたと思ったら、空中に謎のブラックホールが浮かび上がる。
「惑星出雲のどこかへリンク完了しました。若い娘の香りが1キロ先から漂います。」
何というエロ魔法。どういう仕組みなんだ・・・。
「うむ。毎度流石であるぞ。さあ操くん。この異次元へ飛べば惑星出雲だ。出発しろ。」
「ちょっと怖いけど。とりあえず、何かあったら連絡しますね。」
僕はりんね様から授かった道具をパンツに突っ込んで異次元に飛び込む。
「頑張るのじゃぞ!」
「どうか、死なないでね!!」
え?何その意味深発言。エロ爺とリリちゃんが僕に言う。
僕は異次元の中をもがきながら進む。
目が回りそうな景色の中、僕は異次元の出口が見える方へ腕を回し、進む。
出口が見えて、僕は何とか出る。
頭から落下して、目を開けると見渡す限り一面木が生い茂る森林だった。
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