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同族

 フラフィー捜索についてはロンドのメンバーに処理してもらい俺たちは全員で宿屋に戻る。ティティもすごく心配してくれていたようで宿屋の前で待っていてくれた。


「血まみれじゃないですか!」


「ああ、全部返り血だけどな。大きな怪我や命にかかわるようなものはなかった、心配してくれてありがとな」


「それに気を失って……」


 それはクロエがやっただけだから気にしないでほしい。俺たちはそのまま部屋に戻りフラフィーを俺のベッドに寝かせる。苦しそうな寝顔を見るだけで胸が張り裂けそうだ。


 こんな血なまぐさい状態じゃかわいそうだったので、スキルポイントで浄化魔法を取得しかけておく。起きた時に血まみれだというのはショックを受けるかもしれないからな。


「あかね、頼む」


「うん。でも治せるかわからないから期待しすぎないでね」


「ああ、わかってる」


 あかねはフラフィーの額に手を乗せスキルを発動させる。解放のスキルの力によりあたり一帯が清浄な空気になっていく。


 漂っていた微量の魔素すらも解放し、魔物の寄り付かない聖なる場所へと変貌する。解放というか浄化のようなスキルだ。


 しかし教会で感じたような静謐さというよりは、ただ単純に悪いものを取り除いた空気という感じでもある。俺と同じく複数のスキルが混ざり合っている特殊な雰囲気を感じる。


「どうだ……?」


「うーん……だめ、かな……」


 あかねのスキル発動が終わり声をかけてみるがその返事は望んだものではなかった。そしてさらに続けて不思議なことを言ってくる。


「この感じはたぶん……受け入れてるんじゃないかな」


「どういうことだ?」


「私のこのスキルは、その場に必要ないものを取り除くものなの。例えばダンジョンの魔素は他のとこでも出てるから一部分なら完全に取り除ける。屑鉄のダンジョンの十階はそんな感じで薄めていたの。でもフラフィーちゃんのこれは本人に基づくものって感じ。本人がもともと持っていたものは取り除けない」


 ということは洗脳されているが相手の言いなりになるようなタイプじゃないということか……? フラフィーの感情をひたすらに揺さぶって精神を破壊させているって言うのか?


 なんかこれって……。


「私の同族でしょうね……」


 俺の考えを呼んだようにクロエが言う。クロエは自分に対する感情を強く引き出し魅了するという技が使える。そしてこの相手も人の感情を強く引き出していると思われる。


「魔王側のヴァンパイアもいるのよ……」


 クロエは自分と同じ種族の魔法にかかったフラフィーに申し訳なく思っているのだろう。ヴァンパイアとしての能力、そして自分たちを襲ってきた敵の巻き添えでこうなっている負い目から暗い表情になっている。


 たしかに力が強いのに人間と戦おうとしない同族を見たら嫌悪する連中もいるだろう。自分より強いのならば亡き者としようとしている可能性もあるかもしれない。


「クロエ、解き方とかないのか?」


「……無理ね。私の場合もそうだけど、術者を殺したって解けないわ。術者が解くか、本人が強く抗う意思がないと……。でもあかねの結果からするとそれも厳しいかもしれないわ」


「フラフィー、ごめん」


 イリスはフラフィーの手を握り声を殺して泣いていた。もし飛び出さなかったら、もし襲撃に気づけていたらと小さい体で必死に謝っている。


 みんな悲痛の表情でお通夜のような状況に陥る。まるでもうフラフィーが助からないようなその場の雰囲気に俺は怒りを覚えていく。


 悲劇がなんだよ。


 嫌なんだよそういうのは。


 俺は何にも屈したくない。


 それが悲劇だっていうのなら特に、大事な仲間だったらなおさらに。


 言い知れない高揚感と湧き上がる闘志が俺の心の中を支配していく。なんで俺の大好きなロリ達が涙を流しているんだ。


 どうして大切にしてやると言ったのにその人物が倒れ伏しているんだ。


 負けるわけにはいかないだろう。


「俺がやるよ」


 そこまで考えた時、自然と口から出ていた。そしてそれを実行できるんじゃないかと思う自分に少し驚いてもいた。


「キミヒト君、どうするの?」


「俺ならクロエの魅了もはじけるスキルを持っている。もしフラフィーの中でそのスキルを発動できれば、出来るんじゃないか」


「そんなばかなこと!」


「やるしかないんだよ。俺は相手の身体に武器を通すことが出来る。透視で状態を確認することだってできる。それなら自分のスキルを通すことだって出来るはずだ」


 俺のスキルは一見して成長していない。不屈に至っては何がどうなのかさっぱりだし、トオシに至っても視力が良くなってほんの少し情報が増えた程度だ。


 そんなのスキルというよりは単純にステータスの範囲内だ。それだったらスキルらしい発達は別のところにあるんじゃないかとそう思う。


 実質俺のスキルは人の体内でも発動させることが出来ているとも言える。武器を透過させ人の体内にいれて解除。この流れを武器じゃなくスキルで行えるのではないか、そういうことが出来そうな気がする。


 どうなるかは全くわからないが試せそうならなんでもやってみるしかない。もし失敗しても俺の方を壊せばいい。


「フラフィー、少し我慢しろよ」


 流石にお腹とか頭に手を透過させて失敗したら死ぬので左手でフラフィーの手を支え、もう片方の手を透過させフラフィーの身体と同化したような状態にする。


 そして不屈をフラフィーの身体で発動するように強く強くイメージする。


 届け……届け……。


「うぅ……」


 フラフィーはうめき声をあげ苦しそうにしているが、明らかに俺のスキルに反応している。よし、いいぞ。


「フラフィー、お前なら耐えられる。頑張れ」


 俺は声をかけながらひたすらに集中する。不屈は基本的にパッシブ効果だが、強くイメージすればするほどその効果は高くなる。トオシの方も同じくイメージによって多少は変えられる。


 俺の身体を伝って不屈のスキルがフラフィーの身体を巡っていくようにイメージをする。すると俺が持っている方の手に反応があり、ゆっくりと目を開けた。


「うぅ……キミヒト、さん?」


「フラフィー! 気づいたか!」


 スリープの効果はもう少し長いはずだ。つまり今目覚めたと言うことはおれの不屈の効果がフラフィーに作用したと言うことになる。


「ああキミヒトさん会いたかったキミヒトさん……」


 フラフィーは俺を強く抱きしめてくる。しかし、その瞳は洞窟で見た時と同じそれで。……鑑定。


『フラフィー:猫獣人の少女。狂獣化のスキルの影響により理性が飛んでいる。また、魔法による強い洗脳状態も併発中』


 ははは……。何も変わってねぇや。


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