今更敵なそういう感じ?
存分にいちゃいちゃ殺伐としたところで満足したのでそろそろあかねとも話をしておこうかな。背中がめちゃくちゃ痛いけど我慢だ。
「なああかね」
「話しかけないでもらえます? 私ハーレム要員じゃないんで」
わーお取りつく島がありません。目も合わせてくれませんけど辛辣すぎませんかね。いや目の前で女の子口説きまくって一緒にねるだのはなしてたらこんなもんだわ。俺の常識がおかしいわ。
「あーあ、ロンドの連中に話通してやろうと思ったのにな」
「キミヒト君、私あなたの事誤解してたみたい。なんでも協力するわ」
現金なやつって好きだよ。
「いや協力っていうかまじでその話だけなんだが」
「え? キミヒト君仏か何かの生まれ変わりだったの?」
「うん」
「うそつけこのロリコン」
じゃあ言うなよ。まったくの正論だけど気持ちが傷ついたわ。あかねのこういうドストレートなところ結構好きだわ。友人としてな。
「でもその前に一つ言っておくことがあるんだけどよく聞け」
「あんなイケメンなのに何か問題が?」
「あいつらゲイなんだわ」
「はぁ」
あかねはピンと来ていないようだ。そらそうだろうな、俺だっていきなり他人の性癖言われてもそうなの!? 気をつけなきゃ! とはならない。いやゲイは警戒するわごめん。
「でもとりあえず話出来るくらいにはしてやるよ。どうなるかはあかね次第だからな」
「うんうん、とっても頼りにしてます! あんなイケメン三兄弟とか捗る捗る」
あれ? さっきのはぁってもしかして今更的なそういう感じ? 疑問に思ってたんじゃなくてそれを知ったうえであいつらと付き合おうとしてんの? 闇が深いなんてレベルじゃないんだがこいつ。
こいつはイケメンと付き合いたいじゃなくてイケメン同士の突きあいが見たいの? みんなに悪影響でるから勇者の呪い解くのやめてこいつ置いて旅でようかなと本気で思うわ。
「そんじゃ今からいくか」
「今から!? してたらどうしよう……」
「……街かえってからにしようか」
怖かったので後にします。準備が整えば彼らも出てくるだろう。疲労感はたまっていたが馬鹿なことしてたおかげでほとんど回復した。
睡眠自体はもうばっちりだったからせめてもう二階層くらいは攻略しておきたいところだ。この二十八階層は敵が強かったがそこまで広くなかったのも大きい。
そうすると傾向的には次の階層も少しずつ狭くなっていくはずだ。もしかしたら三十階層がボス部屋になっているかもと期待してしまう。
といっても行くか行かないかは彼ら次第だが。
「キミヒト、ちょっといいか?」
そんな感じでまったりしているとイケメンの一人が出てきた。よかった、してなかったんだ。
「おういいぜ。こっちからも話があるからな」
「そうなのか? こっちからはお願いだが、一緒に来てほしいんだ」
ロンドの三人はさっきの事があったため、攻略に対して全力を出すことにしたようだ。そのためには出来るだけ危険を排除し、俺達と協力したほうがずっと確率が高いと考えたんだろう。
あんな風に囲まれなければ彼らならこのままクリアできるだろう。しかしまた同じ罠がないとも限らない。それなら俺たちがサポートし合いながら行けばより確実なのは間違いない。
「ロマンはいいのか?」
「ははは、ロマンより命が大事だからな。それにキミヒト達と一緒に攻略したくなったってのが本音だ」
あら嬉しいこと言ってくれるじゃないの。イケメン爽やかスマイルまじで破壊力あって困るわ。俺じゃなかったら堕ちてるね。
「そうか。実は俺の提案っていうのもそれだ。せっかくここまで来たから俺達も最後まで行ってみたいしな」
「ありがてぇ。助かるよ」
「ただまぁ、さっきの事とかは秘密にしてくれると助かる」
「もちろんだ。友人やその仲間を売ったりなんかするもんかよ」
どこまでもイケメン。こいつらと協力関係を結んだのは本当に正解だったって感じするな。ちょっと馬鹿な感じの楽しい男友達は貴重すぎるだろ。
「じゃあ準備できたら出発するか? それとももう少し休むか?」
こっちのパーティの損耗率はとても低い。一番重症だった俺もMP回復薬飲んだしイリスの体調ももう大丈夫そうだ。
「ああ、こっちも大丈夫だ。いつでも良いぜ」
こうして俺たちは大所帯のまま進むことになった。クロエは俺の血を吸ったからかいつもよりテンション高く見えるのが嬉しいところだ。幼女の笑顔は癒される。
人数が増えたのでフォーメーションが変わる。といっても三人は連携の都合上かたまっていてほしいので、俺とフラフィー、クロエとイリスとあかねで彼らを挟む形になっている。
基本的には俺が索敵と罠探知しながら進んで、不意に敵が出てきたらフラフィーが防御、そこを三人に叩いてもらう感じだ。場合によってはロリたちの援護射撃。あかねは後ろからの攻撃に備えてロリ達のガード。
このメンバーならこれが良いだろう。後ろが多かったら三人なら後ろも対処できるだろうし、ロリ達の魔法ならそうそう囲まれるようなこともないだろう。
「あー、結構でかいのがいるな。なんだろうあれ」
透視しながら進んで行くと結構先に、というか階段前に大型の魔物がいた。鑑定の範囲外だから名前が見えないが、形的には馬とかペガサスとかそんな感じだろうか。
「キミヒトさん、どうしますか?」
「行くしかないな。階段前から動かないみたいだし」
というわけで二十九階層を進んで行く。登場する雑魚モンスターは赤いゴブリンや色違いのシャウトウルフ、どちらも凶暴だが俺たちの数の暴力で殺しきる。
ダンジョンの中が狭かったら結構つらかったかもしれないが、助かることに結構広い。それにシャウトウルフの上にゴブリンが乗るようなこともなかったので苦戦らしい苦戦をすることもなかった。
よくあるゴブリンライダーを見てみたい気もしたけど、あえてこんな深い階層で見る必要はない。外で弱いけど知能ある連中がやってくれることを祈ろう。
「キミヒト、あれか?」
「ああ、あれだ」
『ペガサスもどき:幻獣。馬だけど飛ぶ』
うんペガサスだもんね。羽もあるしね。もうちょっと有益な情報頂戴?
「どうやら飛ぶらしい。上からの攻撃は正直さばいたことないぞ俺」
俺が戦ったことがあるのは地上にいる魔物か人間だけだ。空から襲われた経験もなければ戦い方もわからない。突進だけだったらかわせるかも知れないが、空にいる魔物相手なら俺は無力だろう。魔法もないし。
「じゃあ俺たちの出番だな。フラフィーちゃんと俺達で抑えるから、隙があったらイリスちゃんがやつを落としてくれ」
つまり俺とあかねは戦力外。特殊能力が戦闘特化してない勇者って地味だよなぁ。
「じゃあ私はデバフかけてみようかしらね」
「わかった。頼りにしてるぜ」
そうして俺たちはペガサスもどきと戦闘を開始した。