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たぬきとどくだみ  作者: 葵陽
一章 有馬 → 喜瀬川
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閑話 マグロ係

はまはあの煮干しがどうしても食べたいと、にゃあにゃあ鳴いた。

すると、主人は汀の言葉が分かるかのように汀の目の前へ煮干しを3つほど置く。

主人は嬉しそうに、汀が食べるさまを眺めていた。


飼い猫というのは悠悠自適だ、食べるものに事欠かず敵にも襲われる心配もない。しかしながら元来動物とは己の力のみで生きるにあって、それを人間に依存して良いものかと汀は思っていた。だが汀が人間に関わるほど、人間たちは汀を贔屓し可愛がってくれる。人間は嬉しそうに、汀を撫でる。汀は、案外にもその生活が気に入っていた。

最近は撫でてくれる人間の数が、増えたようだ。女児が汀の尻尾を引っ張ることがある。全身に不快感がぞわぞわと駆け巡るが相手は年若の人間だ。

汀はぐっとこらえて小さくにゃあと注意した。




「日向子、汀の尻尾を放しなさい。痛いって汀が鳴いているでしょう。」

日向子は汀の尻尾がお気に入りのようだ、尻尾を引っ張ると汀が小さく鳴くからだろう。汀も日向子が小さいからか我慢しているのだろう、よく引掻きも噛みもしないものだ。しかしいずれは堪忍袋の緒が切れる、怪我をする前に辞めさせなければ。

そのうち日向子の方が飽きて触らなくなった、やはり子供は飽きるのが早い。今は、一佐を着飾るのがマイブームのようだ。姉というものは弟を女装させたくなるさがでもあるのだろうか。

一佐は相も変わらず大人しく、日向子にされるがままになっている。抵抗するだけ無駄だと思っているのか。ただ一佐も見目が良いせいか、可愛い女の子に変身する。生来の青い目もあって、人形のようだ。男に生まれたのがもったいなくなるほどに、惜しい。


くぼうさまには飼い猫がある、汀という名前だ。前足だけ白い靴下を履いたような、黒い猫だ。煮干しとマグロが大好きらしく、私は週に一、二度ほど商店街へ買いに行っている。おかげで魚屋とは顔なじみになった。


魚屋から帰ってくると汀が私のところまで駆けてくるのが見えた。私は汀に食事係と認識されている節がある。そう思われていると知っていても、汀を撫でるのは楽しい。

にゃおにゃお鳴いて、マグロをねだる汀は可愛い。私はどちらかと言えば犬派、だ。無論猫も可愛いとは思っていたけれど。


まぐまぐとマグロを食む汀をみていると、日向子が女装した一佐と手をつなぎ私のところに走ってきた。


可愛い弟だが、女装に目覚めないか心配である。


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