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たぬきとどくだみ  作者: 葵陽
三章 神(仮)
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かっこかり

かみ、かっこかり


「神が悩んではいけない理由でもあるのか。」


 まあ、ある人たちにとっては全知全能、完全無欠、唯一無二の存在ですらあるわけだから神様が悩む姿は見苦しいと感じられるだろう。悩む神様など、「神」として認められない。

 「信仰対象」というものにひとは、ひとかたならぬ羨望と希望、期待の目を向けている。だからこそ、ひとたび期待に背いたならば途轍もなく「失望」される。



 だが神様が完全無欠の存在ではない文化圏で育った私から言わせれば、神様だって悩むし、恋するし、悲しむし、怒るし、ひきこもりになったりする。

 神と人間の違いなんて、あまりないようにも感じられる。あくまでも、私個人の考えでしかないけれど。


 (かんなぎ)の一族出身としてこうした考えを持つのは御法度なのだろうが、人間が困っているからと言って神に意見を求めて良いのだろうか。

 困窮の折、神に恩寵や救いを求める気持ちが分からないわけではない。科学技術が発展した未来でさえも、外が氷河期並の極寒では神にすがりたくなるもの。


しかし。

「何故人間は、神とも確証の持てないモノに祈りを捧げ、救いを求めるのか。他の連中が真にそうだったとしても、"俺に"祈りを捧げるのは解せん。俺は神足る確証がない。」


 ここまで自信のない人、否、神(仮)としておこう。自信のない神(仮)も珍しいものだ。

 にわか知識で申し訳ないが王様は、神から任命されて王としての権威と責任を背負っているのではなかっただろうか。王様は神からその職責と存在を承認されているが、なるほど神自身は誰からも承認されているわけではない。かといってここまで自信がないのも、おかしいのだが。


 神とはもっと自信に満ちあふれた、荘厳な存在ではなかったのか?


 "この男"がもし神でないとしたら、今までこの男に祈りを捧げてきた人たちは一体何へ祈り救いを求めてきたのか。



 他人の夢に入り込める時点で、神(仮)はただの人間ではない。彼が(かんなぎ)である可能性も考えたが、巫は"神の声を聞くことができる"という能力以外に、超常的能力はないと言われている。力の強い巫であれば陰陽師のように式神や精霊を使役することもできるがそういった巫は極々一部であり、その全てが引退し余生を送っている御老体だけのはず、と日向子が言っていた。


 例え巫だとしても、夢の中に入るなど聞いたことがない。巫は巫の気配が解るのだと、(うしお)様は言っていたが残念ながら私にそんな能力はないようだ。

 巫の可能性が皆無であるとは言えない。



 神(仮)が何者かももそうだが、私の夢に入り込んだ理由も分からない。

 これについて、質問して良いのだろうか。


 初乃は恐る恐る、神(仮)の顔を見る。相変わらず整った顔だが、その瞳は真っ黒で底が知れない。俗にいう深淵とは、こういうものだろう。


 此方が深淵を覗くとき、深淵も此方を覗いている

 どこを見ているのか分からないのに、視線を感じている。

 ただ、それに恐怖を感じないのは何故なのか。




「問うても良いが、此所に俺を呼んだのは手前(てめえ)だよ。」


お気づきかとも思いますが、私は会話文を書くのが下手です。否、会話文を書くのも下手です。


お読みいただき、ありがとうございました。

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