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9話「メタル・オブ・ノムシグル その3」

正確に心臓を狙ってくるウツリに近づくことは死を意味する、二人はウツリの射程距離外で作戦を考える。同時にノドカは、自身の能力のことを考えていた。



「レイカさん、俺の能力は磁力を操る……足から磁力を送り込み、触れた物に磁石の性質を持たせたり、反発を利用して高く飛んだりできる」



「ええ、その通りよ、でもコントロールがままならない。それに近距離にしか攻撃ができないからウツリちゃんとは相性が、悪すぎるわ」



「……そうですね、能力の使い方はよく分かってない、けれどウツリは鉄を操っている、そして俺は磁力を操れるというなら、磁力は鉄を操れる、鉄に出来て磁力に出来ないことは、無いはずだ!」



ノドカのゴリ押しの理屈、力押しの理屈、力説があたりに響く。だが能力を自在に使いこなせるようにならなければ、とても「操る」とは言えない。

だが、喋るだけじゃ能力を使いこなすことはできない! 実践しかない、ノドカは全身に力を込める!



「なんでもいい、俺の力で……少しでもこの場が収まるなら、これ以上ウツリに人殺しをさせたくはない!」



「よしなさい! 無闇に能力を使えば、それこそ暴走よ! ノドカ落ち着きなさい!」



ノドカの磁力の能力が働いてか、鉄製の地面の床は大きな音をたてて壊れ崩れ、先ほどのスペリィvsウツリの時、地面に落ちた金属片達が反応した。磁力に反応し、揺れ動き、カタカタと音を鳴らし……宙を舞う!



それら金属片はノドカめがけて吸い寄せられるように……一直線に飛んできた ! ノドカ自身が磁力のパワーを帯びてるわけだから鉄がノドカに飛んでくるのは、息を吸った後は必ず吐かなきゃならないってほど当たり前で当然だ!



「グゥ! ぐあっ!」



ノドカに飛んできた鉄片は容赦無く「グサグサ!」と刺さってくるのだ!



「ノドカやめなさい! 無闇な能力の使用は自爆を生むだけよ。私がやるわ、私の発火能力で鉄を焼き溶かすのは容易い、ウツリちゃんの攻撃射程圏内に入らなくちゃいけないけど」



「うぐ……危険だ、ウツリの攻撃スピードは速い

スペリィのスピードでも太刀打ちできないほどだ」



「そうね、でも私の発火も舐められたものじゃないわよ。可燃性の物質じゃなくても、火を灯し燃やすことができるんですもの、少しでも火が付けば私の勝ち……最悪でも相打ち」



「鉄の熱伝導率の高さなら少しでも火を起こせば、中に居るウツリも耐えきれない程の温度にはなる、ということ、か。だがこれは、もともと、ウツリにウソをついた俺の罪です、だから決着をつけるのも危険を背負うのも俺一人なのが、道理だ!」



更に力を込めるノドカだが、悲しいことに鉄片が更に自分の体により深く一層食い込むだけで何の力も生むことは無かった。

時として罪は、自分以外の人間が背負い込み、罰を受けることがある。



友人の助けになればとの小さなウソの因で、今この場で仲間が二人も、そして自分自身も危険に晒されるという果を招いた。



「……無理はしなさんなって奴よ、あなたまだ若いじゃない。俺のせいだとか誰かを命を賭してでも苦痛を負ってでも守る助ける、なんて本当によく考えて出した言葉なの? 親が亡くなって、ウツリちゃんもおかしくなって、仲間も自分も追い詰められて、あなたの思考がまともじゃない可能性の方が大きいじゃない?」



「そんな、俺は……昔からこんな人間だ。やるべきことは、よく分かってるつもりなんだ。俺はウツリにウソをついた、それが罪だ、次は向き合わなくちゃあならない、もうウソはつかない!」



「それは今じゃないでしょう!」



突然のレイカの張り上げた声、一室に響く。ノドカは磁力の能力を使うのを中止し、体から抜け落ちる刺さった鉄片が音を鳴らす。



「……ごめんなさいうるさかったわね、でも、ウツリちゃんにとって心の拠り所ってあなたひとりなのよ? ノドカ、分からない? あなたひとりいなくなるだけで、ウツリちゃんのこれからの一生……どれだけ苦痛に、虚無になると思うの?」



「だが、俺は……」



「子供が罪だとか決着とか、難しいこと考えたらダメよ。いいじゃない、大切な人と何がしたいかとか、好きなものを好きなだけ味わって、それが大人じゃないってことだもの」



子供だと、馬鹿にされている、そんな事は微塵も感じなかった。少しばかり懐かしい、あたたかみのようなものを感じた……既にこの世に存在しない親のような、あたたかみのようなものを。

ノドカは、すこしお堅い頭ながら考えを変えた。さっきまでの「ウツリを助ける、俺はどうなってもいいし、苦じゃない」なんて事は、少し考えるのをやめ……少しばかり、自分の思考の中に自分とウツリ以外の登場人物も入れることにした。



「俺は……ウツリは助けるし、レイカ、あなたという女性も助ける、スペリィもきっと生きているし、俺も助かる。考えを改めることにした、もうめちゃくちゃな考えはしない、俺は子供だから「誰も死なせない」それが幸せだと思うし最善だと思う」



いきなり何を言い出すのか、めちゃくちゃなことを言い出す。レイカはてっきり、ノドカが冗談を言って見せたのかと思い、つい吹き出してしまった。



「ふふ、さっきまで道理がどうとか言ってたのに急にどうしたの? 言ってることさっきよりめちゃくちゃかもしれないわよ、ふふ、でも嬉しい」



「はは……」



「さ、お喋りはウツリちゃんを救ってからにしましょう。安心してノドカ、安全にウツリちゃんを倒す手立てはあるのよ、あなたが今集めてくれた鉄片を使わせてもらうわ」



するとレイカはノドカの周りに落ちている鉄片を複数拾いあげると、片手で一つずつ空高く放り投げていく。

その向かう先はウツリ、レイカ達からウツリまでの距離およそ5m、投擲で何かを当てるには無理ない距離だ、しかし。



「な、なにを? 鉄をウツリに当ててしまえば鉄を吸収され更に力を増すのでは……!」



「大丈夫よ、そこにあるの……ウツリちゃんの弱点は、鉄を吸収するという点にね。私の発火能力の射程距離は3mほど……「ウツリちゃんに当たるまでの間に火をつける」そうすれば」



レイカの能力の「射程距離の足りなさ」を補うこの戦法!

火のついた無数の鉄片、それはウツリのもとへ向かっていく、それ自体は大したスピードではない。

だが重要なのはスピードや重さではなく、火がついているということ!



「ウツリちゃんの装甲に取り込まれるとき、火自体は消えるでしょうね、けれども私が与えたいのは、残酷に焼き切る炎なんかじゃあない、鉄を伝わる大きな熱よ、ノドカと私、それにスペリィの、あなたに対する情熱も一緒に喰らいなさい! そうしてその殻を破って、謝るといいわ、許してくれる人は居るんだから」



慣性と重力が、火のついた鉄片をウツリのもとへ導く、ウツリは救われるのだ。

許してくれる人間はここに居る、咎める者なんて、居るわけがないのだ!



二人は見守る、その鉄片が落ちて行くのをただ見守る。



言い換えれば、二人の視線は完全にウツリの注意から逸れていたのだ。

これは油断と言えるのか、そうだとしたらあまりにも無慈悲すぎる、希望を見届けることのどこが油断と言えよう。



「な……なんです……って……まさか、まさかこんな……!」



だがノドカが最初に言った言葉「これは誰が悪いとかの話じゃない」という言葉。

それは本当にそうなのだろう、この場に悪など居ないのだ。

暴走したウツリが悪だと言えようか、そもそも、ウツリに出会ってしまったノドカが悪と言えるのか。

無論、そんなことはない、今この状況で悪は追求できない、裁くのではなく対処することしかできない。



「レイカさん……!」



結果として今、ウツリの鉄の爪はレイカを攻撃してきた。

5m以上離れているレイカに、攻撃してきたのだ! ウツリの射程距離は伸びている!



やはりウツリはどんどん鉄を蓄えて成長している、ほんの少し前まで射程距離はせいぜい3m…既に2mも射程距離をのばしているのだ。

しかも器用にも腕を折り畳み「バネ状」にすることで、攻撃する瞬間まで射程距離がわからないというアジなマネをしている。



……レイカは幸い、射程距離ギリギリだということもあり、貫かれることはなかった、が。

並大抵ではない傷の深さ。出血が酷く、仰向けのまま動くことが叶わない。



「ノドカ……もっと距離を取りなさい……! はや、く」



震える声でノドカに語りかける。ノドカはもちろんその声は聞こえていたが、それ以上に戦慄していた。



「ウツリは今、計算して攻撃してきたのか? それとも、不運な偶然が重なっただけなのか……?」



恐ろしいことに、レイカがしかけた火の鉄片、それはレイカを攻撃したウツリの鉄の腕に吸収されていた。

しかし、その鉄の腕は射程距離ギリギリまで目一杯伸ばしたせいか、トカゲの尻尾のように根元から千切れてウツリの体から取れてしまったのだ。



「熱を吸収した腕が取れたということは当然、ウツリ本体に熱が行き渡ることはなくなった…ということか」



一見冷静に状況の悪化を解説するノドカだが。



「問題は、距離を取らなければならないのに、俺の足が、全く動かないということだ……! 先ほど磁力の力を乱暴に使ったとき、俺の周りの鉄の床は剥がれ取れた、はず。足は剥き出しになった土に触れているのに動かない……き、恐怖、か」



自分が恐怖しているとわかると、途端に汗が噴き出し、自信がなくなる。



「ノドカなにやってるの、はやく、早く距離を……」



「わ、わかっていますでも、動かない……! なぜウツリに恐怖を覚え、臆しているんだ、俺は……俺がそんなことを思うのか? ウツリに恐怖なんて、違う。俺はウツリを助けるためにここにいる、怖かったら倫理的に考えて、恐怖で震えるよりも、情けない声でも上げながら走ってこの館から抜け出して、安心感と背徳感に挟まれながら笑いにも悲しみともいえない表情で涙を流し続けて生きるのが普通だ!」



これは、ノドカなりに「俺は怖さなんて感じていないんだ」という自己暗示のつもりらしい。

全身にちからをいれ、拳を握り締め、顔を強張らせる、恐怖を力業で乗り越えちまおうという策略だ、策略に力もクソもないと思うが、必死なのだ。



その直後、レイカはノドカの足に異変が起きていることに気がつく。



「ちょ、ちょっとノドカ、足、あなたの足が、妙よ。ま、真っ黒よ……何が起きているの?」



レイカの言うとおりノドカの足、つまりノドカの靴に異変が起きていたのだ。

黒色に染まり、靴全体を覆いズボンにまで浸色していくのだ!



「こ、これは攻撃でも、異常でもない、の、能力だ、俺の能力だ。俺の能力は足から発現する…だから、きっとこれは俺の能力……! わかってきたぞ、俺が今なにをしているのか、ウツリはどこから鉄を集めていたのか!」



その瞬間、ウツリの腕がまたしても攻撃してくる!

次の狙いはノドカ、先ほどレイカは視線がそっぽを向いていたので直撃したが、遠くから伸びてくる腕、人間的な動体視力で反応できんことはない!

すかさず、磁力の反発を利用して真上にかわした!



「ノドカ! 上に逃げたら……例え空中でも心臓の鼓動が鳴っていることに変わりはないのよ……!」



たしかに、先ほどのレイカへの攻撃から察するに、ウツリの聴力は異常に発達し、5m以上先の鼓動の音も正確に聞き当てる!

案の定、空中に飛び上がったノドカ目掛けて二撃目の腕が飛んでくる!

スペリィのときと同じだ、空中のための完全無防備防御不可能への一撃!

ノドカがかわした方の腕はレイカのときと同様ちぎれ取れたが、ウツリはまだ腕が二本!



「いや……残った腕は二本だから良かったかもしれない。ウツリ、学ばせてもらったよ「鉄はこうやって」集めるんだな」



するとノドカが反発で飛び上がったその地面から! おぞましいほどの! 黒い! 砂状の! それが! 集まり! 球体を創り上げた!



「これは「砂鉄」だ!」



ノドカは能力で、土の中から砂鉄をかき集めていたのだ! その真っ黒い、または褐色の砂鉄群は磁力に反応し、ノドカの支配下におかれ操ることが可能となった!

これがノドカの磁力能力の真髄! 半ば無意識のうちに使えていたこの技だが、強力なパワーをもたらすことに変わりはあるまい。



「ウツリ……攻撃に使わなかった最後に残ったその腕は……自分の命を助ける為に使ってくれ。そしてもうお前にウソは言わない、これは真実だ。それに俺はウツリを守り、助ける為に生きていくと約束しよう、これも真実だ。俺のウソはひとつついたが、真実はふたつだ、よって真実の勝ち」



ノドカは落下しながら砂鉄によって作られた巨大な鉄球「砂鉄球」を反発による蹴りで、渾身の力で吹き飛ばした!

どんな巨大な鉄球であっても重力などの物理法則には逆らえないのと同じで「磁力の反発」という物理法則の前には「反発に従い吹き飛ばされる」結果を残す他あるまい。

狙うはウツリ! ノドカに攻撃してきた腕を粉々に砕き割るほどの高威力、それがウツリに直撃した!



ノドカの言葉が届いたのか、はたまた本能か、最後に残った腕で、かろうじて防御していた。

それでも全身の装甲はズタボロに砕け、ウツリ本体が外へ投げ出され、すでに気絶していたが、死んではいないようだ。



「や、やった……か」



ノドカは着地すると同時に、全身から血を吹き出し、その場にぶっ倒れ、気を失った。

先ほど無数の鉄片が体に刺さった際の傷からの出血だろう、なぜいまさら出血するのか……レイカはそんなノドカに這いずって近寄り、介抱する。



「まさか、ノドカは無意識のうちに自身の傷を止血していたの……? 「血液の中の鉄分を操って半ば強制的に正常に循環させていた」ということかも。彼の磁力の能力、応用の幅が半端じゃなさそうよ、彼なら、彼ならもしかすると……!」



なんて感心するレイカだが、この場で動ける者が自分しか居ないことに気付く。しかもレイカも出血が止まってない。

おいおい、このままでは少なくとも二名は失血死というお粗末な最期に……。


かとおもいきや、そんな彼女のもとにふらふらと駆け寄り、手を差し伸べる人物がひとり。



「へへ、レイカ様、立てます?」



「す、スペリィ! あなた無事だったの? ケガは? 出血していたわよね?」



「いやあ、攻撃される寸前に両腕の振動爪で防御できたんで大丈夫でしたよ。爪は全部オシャカになっちまいましたけど……腹の傷も、攻撃の軌道がうまく逸れてくれたんで内臓には達していません。顎をブン殴られたんで脳震盪おこして気絶しちまってましたけどね、あはは」



「よ、良かったわ、本当に……誰も死ななくて、本当に良かったと思えるわ」



「おっと、今すぐ町から医者呼んできますから! 動かないで下さいよっ」



なんとスペリィは生きていた、いま、目を覚ましたというのだ。

腹の傷も身包みを引きちぎって止血、幸いにもこの戦い、死者は誰もいなかったのだ。



こうして今回の戦いは幕を閉じた、誰も死ぬ事はなく……。

キ ャ ラ ク タ ー 紹 介


ノドカ・ベイツォー

能力『マグネットドライブ』

どうやら脚から相手や、地面、物に磁力を送り込めるようだ


ウツリ

・手から鉄を生み出し、形成する能力

鉄を手のひらから生み出す、そして武器や物を形作れる力


スペリィ・ノイジィ

気配を消す能力『ロー・エグジスタンス』

自分が「そこに居る」という認識を相手から遠ざける

であるからして相手はきちんとスペリィを視界におさめていてもスペリィの攻撃の軌道や動きが見えづらいし、スペリィが背後に回っていても気がつきにくい


レイカ・バギーニャ

発火現象を起こす能力『スポンテーニアスコンバッション』

視界に入ってさえいればソレに火をつけられるようだ。

技術「人を惹きつける執筆」

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