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神が悪戯したこの毒の国で異能戦争  作者: 真鍋棒
3章「8人の刺客」
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35話「ギルティドロッパーとルック・ダウン・バグィその2」

「奴らに逃げられるということか、この黒くなっていく能力の射程外まで俺たちが逃げるのはどうだ、無理なのか?」



ノドカの問いに、リザは冷淡に返す。



「無理ね。奴の能力は上下の距離だけ、どこまで逃げても高低差が存在する限りあなたたちを蝕むわ、何度も言うけれど急がないとまずいわよ、思考できるうちに行動しておかないと」



「思考? ギンガミの能力は一体なんだ、相手を黒い石にでも変える能力か」



「違うわ。唾を吐きかけた相手と高低差が出来れば出来るほどに相手を虫へ変える能力。あなた達……虫になるわよ」



「虫、だと」



一室にギンガミの能力は明らかになる。高低差が出来れば出来るほどにギンガミの能力は彼らを侵食し虫に変える。



「バラされたようだな、我々の能力」



「チィ、リザ・アイザード……カイン様が欲しているアンヴィーの友達だということで適当な行動は見逃してやってきたが、奴らに味方するようなら抹殺対象だ!」



「慌てるなギンガミ。我々は何をされたところで負けはしない、今まで奴らに挑んだミカルナ、コレク、リザには無いものを我々は持っているからだ」



「ヒョリザン、分かってるぜ。この世界で一番俺たちが持ってるものだな!」



「ああ! 『友情』だ! この一貫不変初志貫徹の友情は我々に力をくれる、どんな障害も乗り越え敵をも討てる」



「ヒャハハその通り! 奴らはしょせん虫ケラよ、烏合の衆に絆は生まれねえ、カイン様が作る支配帝国の礎となる運命だ、前菜にすらならねぇ!!」



「何があろうと、ギンガミの能力とギンガミ自身はこの俺が守る!」



『友情』今までの敵が誰一人として匂わせなかった個性、ヒョリザンとギンガミの間には妖しくも強すぎる友情が存在していた。背中を任せ、傷さえさらけ出せるような心の頼もしさがお互いに力を分け合い真価を発揮するのだ!!



「だれかぁ! たすけてくれぇ!」



「からだが。うごかないんだ、起こしてくれ!」



そして、ホテルの外からいくつもの叫び声が聞こえ始めた。この町に住む住民の声だろう、地面に這い蹲りになり動けない様子だ。



「おい……マジか」



トウカは窓の外を指差す、向かいにある建物の屋根が崩壊し、潰れた。四階建てのその建物は見事に三階建てへとリフォームをされたのだ。



外の木々も枝が全て軋みをあげ、全てが下を向いていた。やがて堪え兼ねた枝は折れた途端に地面へと急降下して地面にめり込む。その地面全体さえもピシリとヒビが入って行くのを皆は見た。



「奴の重力の力か……なんてパワーと射程範囲だ! やべえぞ、このホテルの天井も! ここは3階だ、もしここがぶっ壊されたら俺たちは6mは落ちて一気に虫になる!」



「わ、私の鎌なら奴らに届かないかな!?」



「奴は重力を常に放っている……奴に刃を届かせるのには物凄い力が必要になる、100kgか、200kgか」



ノドカは思考した。敵も準備万全で挑んできたというのもあるし個々の能力を活かしきっている。手も足も出ないとはこの事だ。しかし考えなければ、勝たなければ。



「磁力なら、重力の影響を受ける事は無い……奴らに何か磁力で辿れるきっかけを作れれば攻撃できる……く、最初にあのギンガミに少しでも触れていればッ!」



瞬間、天井から断末魔の轟音が響く。それと共に天井もろともノドカ達のいる部屋に崩壊落下してくるのだ。



「やばい! ノドカ、伏せてッー!」



ウツリは鎌の刃を伸ばして振り回し、ノドカと自分はとりあえず守る。トウカは、丸腰のレイカを守ろうと駆ける。だが。



「間に、合わねえ……! レイカが潰されるッ! レイカァー!」



「うッ……!!」



ひとたび天井の一部分でも壊れればドミノのように全ての天井が破壊され重力に乗って落ちてくる、迫る重圧に耐え切れなかったのだ。ノドカ達は全員天井の下敷きになる。



「やったぞ。」



「俺たちの勝ちだな、ヒョリザン! 虫の息で生き延びてたとしても俺の能力で奴らは虫と化して二度と戻らんぜ!」



「どれ、息がある奴が居れば瓦礫をどかして立ち上がってくるはずだ、見下すとしようではないか、ギンガミ」



ヒョリザンとギンガミが見下すなか、真っ先に瓦礫を弾き飛ばして現れたのはウツリとノドカだった。刃を振り回すことで落ちてくる屋根を防ぐことができた。しかし、丸腰であったトウカは屋根に潰され息を荒くして倒れていた。



「ぐ、く……ハァ、ハァ」



頭部を打ち付けたのか、顔には血がつたっており腰も屋根の瓦礫に潰されていた。



「トウカ! 大丈夫か、今助ける!」



「俺は良い! レイカだ、レイカを探して助けてやってくれ……あの辺りに居るはずなんだ」



「わ、わかった……ん? なんだ、あれは」



ノドカとウツリは、レイカが押しつぶされたであろう方向を見て息を飲んだ。隆起している。瓦礫がそこだけ山盛りに積みあがっているのだ、屋根の形がそうだったとは考え難い、そんなポッととんがった建物は教会くらいのものだ。それを見ると共に、ウツリは自分の腕をさすりはじめた。



「さ、寒っ! なんか妙に寒いような……」



隆起した瓦礫が音を立てて崩れて落ちたと思うと、そこにあったのは『かまくら』のような形状になった『氷』だった。



「氷……リザか、リザの能力」



ノドカがそう言ったとき、氷は音を立ててバラバラになって崩れた。



「う……ん……?」



そのかまくらの内部にはレイカ。強く目を瞑って倒れていたところ、今やっと目を開けて起き上がり、周囲を見渡す。



「私……無事、みたいね……この氷、もしかして」



レイカは全くの無事だったのだ。ふと横を見ると、リザが倒れているのを見て驚愕した。うつ伏せに倒れ、鋭利な天井の破片が首と肩の間に突き刺さっていた。



「リザ……貴方が私を守ってくれたの……? どうして? 自分のことを守るよりどうして私を優先したの!?」



「な……」



リザは出血することで朦朧とする意識の中、首を必死に上にあげ、レイカの顔を見て言った。



「褒めてくれたから……名前を、アッシュの、名前を……」


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