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神が悪戯したこの毒の国で異能戦争  作者: 真鍋棒
3章「8人の刺客」
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34話「ギルティドロッパーとルック・ダウン・バグィ その1」

「アンヴィーがどうしてそんな能力者を探すことを決意したかと言えば、そもそもアンヴィーが『未来人』だからよ、そして時空間を操る能力者に接触した経験もある」



「未来人? なんだよそりゃ、タイムスリップしてきたってことか」



「ちょっと待って、時空間を操る能力者と接触……? なんでアンヴィーはその人に協力を頼まないの?」



「アンヴィーはそいつに過去に戻されてから、そいつは消えたのよ、もう居ないの」



「それにしたって、色んな人間を能力者に変えるよりその人間を探したほうがまだ確率は高いと思うのだけど?」



「言い方が悪かったかしらね、この世に居ないの。この時代でそいつは、アンヴィーの目の前で命を落としている……そこら辺の詳しい話は私もよく分からないわ、でもとにかく時空間を操る能力者は存在する。その確証をもとにアンヴィーは今も戦っている」



「……で、未だその能力は見つかってないってことね」



「ワケが分かんねえな、なんだってアンヴィーは過去に連れてこられたんだ、そいつもなんで死んでんだよ。何も話が繋がらねえ」



「ひとつ私からも聞きたいんだけど、あなた達やっぱり、アンヴィーは殺すの?」



その質問は、心配の意を含んだニュアンスではなかった。どっちの答えでもいいや。というような軽薄ぶりが感じられる聞き方だった。



「残念だが殺すぜ、なんだ、友達が殺されるから心配ってか? 何年来の付き合いかは知らないが俺たちの目に付いたのが運の尽きだって事だ」



「……ふぅん、10年近くの付き合いにはなるけど、それならそれで、私は他の方法を駆使してでも彼に会うから」



「あ〜〜?」



結構淡白なセリフが帰ってきて、煽ってみたトウカは困惑した。



「10年……? ねえ、アンヴィーってあの子、あれ何歳なの?」



「さあ、何歳かしらね……13年はこっちの時代で能力者を探してるって聞いたからこっちの時代に来たのは13年前じゃないかしら」



「見た目は凄いロリなようだけど、あれで20歳だったりするのかしら、活動期間と見た目年齢が合わなすぎる……」



「ああ。アンヴィーは人間じゃないわ。あの見た目がもう大人、あれ以上老けもしないし成長もしない、くそ羨ましいの限りよね」



人間ではない。あっさりリザはそう言った、当たり前のように。言語を話し能力を操る少女、人間にしか見えない彼女が人間でなければ、一体なんだというのか。



「もうついていけねぇわ俺」



トウカが思考を放棄した。まあしかし、これから殺す奴の事をあれやこれや聞いてしまって情が湧く可能性も無くは無い、それがリザの狙いだとすれば、もう話を聞かないに越したことはない気もする。



「みんな!!」



その時、レイカが突然叫びだした。窓を凝視し、後ずさりしつつ、いつでも発火能力を発動せんと構えている。他の皆もレイカの見る窓に視線を移す。



「二ヒヒ、のうのうとホテルに居るとはお笑いだぜ」



その窓に『張り付いている男』を見て一同は驚愕した。いつから張り付いていたのか、ここは3階だというのに。そいつは鋭い目つきで部屋に居る人間の数を数え、全体数を確認。ニヤリと笑みを浮かべ、窓を脚で叩き破って内部に浸入した。ノドカは即座にウツリを庇うように前に出て構える。



「こいつ! 敵の能力者か……4人目の!」



「その通りだぜ、ブゥーーーー!!」



瞬間、そいつは水筒を取り出して飲み、口に含んだ水を霧のように部屋全体に吹きかけた。



「ばっちぃ!!」



トウカがそう叫んだが全くその通りである。わけのわからない行動でも、相手の能力が分からない以上は危険でしかない、ノドカはその霧からウツリを庇い、跳躍でそいつに詰め寄る。



「おっとォ! 悪ぃが仕込みは終了〜〜! お前らの死のディナーが間も無くスタートだァ!」



素早い。こいつはバック転をして浸入した窓から再び外へと飛び降りる。ノドカは寸前の所で拳が届かず、トウカもノドカの側まで急いで駆け寄る。



「ち! しかしあいつバカか、ここは3階だぞ!」



「トウカ済まない、取り逃がした。拳は当たってない」



「気にすんな、引っかかりに隠れてるかも知れねえ、絶対に窓から身を乗り出して下を確認したりすんなよ、まずは様子見……」



そのとき、ノドカ達は驚愕した。窓の外、そこには『男2人が抱き合いながら宙を舞っている光景』が広がっていた。さっきの霧の男とは別にもう一人のガッシリした体格のマッチョ男。



「空を……飛ぶ能力! いや、しかしそれは片方だ、もう一方の能力は不明だ!」



トウカは視認できてるうちにと、止まらぬ速さで糸を放出し男2人まとめて捕らえようと攻撃する。



「届くかあ! 我々の『友情』に、そんな攻撃が! 既に堅固たる糸は我々2人の間にあるというもの! ヌゥン!」



マッチョ男の方が叫び、手を振るう。するとトウカとノドカは押さえつけられるように地面に倒れてひれ伏し、ホテルの一室のその床さえもキシキシと軋みをあげていた。



「グハッ! なんだこいつのパワー!」



「トウカ、まずいぞ奴ら、どんどん上昇していく」



マッチョ男は腰に巻きつく霧の男を連れたまま上空へと上がっていく。地面にはいつくばるノドカとトウカを見下し、もはや勝利を確信していた。



「じきに死にゆくさだめの者共よ、俺の名はヒョリザン」



「俺はギンガミ! お前らを倒す者の名前だ、刻んで死にな!」



ヒョリザンとギンガミ。二人の男は名乗りを上げ、そしてグングン上昇していく。



「あいつら、逃げて……るのか? なぜ真上に逃げていく?」



「勝利を確信してるようすなのが、イヤな予感しかしねぇな」



トウカは糸を壁に突き刺し、それを頼りに力を込めて引っ張りながら立ち上がり、ノドカの手を引いて起き上がらせる。体に異常なほどの重みがあり、先ほどのギンガミの吹いた霧、それを被ったのが原因ではないかと察した。



「なあレイカ、霧を被ったのにお前は体に何の異常も無いのか?」



「何も無いわ、けど私の能力ではあいつらとは距離が遠すぎる……」



「トウカ、俺たちの体の重みはどうやら霧ではない方の能力によって起こってるようだ、しかし……こいつらは何故明確に俺たちの居場所が分かったんだ、攻撃の準備も万全だったようだし」



「それは、敵の能力者の中に『千里眼の力』を持つ人間が居るからよ」



[newpage]


その言葉を発したのはリザ。そろそろ後手の縄をほどいてはくれないかと言った具合に気だるそうだが、ノドカの疑問に解を唱えたのだ。



「千里眼……? それは確かその身動かさずとも辺り千里に渡るほどの世界を見渡し理解できるという力だと、聞いたことがあるが」



「まあその通りね、あと、あなた達の体の重みはあのマッチョ……ええと、ああ。ヒョリザンの方の『重力』の能力のせいよ、自分の体を宙に浮かせ、相手や物に超重波を放つ事が出来る」



「詳しいわね、私が戦ったミカルナが言うには『能力者同士はお互いの能力についてあまり晒し合わない』と聞いたけれど」



「言ったでしょ、アンヴィーとは同じ目的を持った友達だもの、今までにどんな能力を生み出してきたかはくまなく聞いているわ。あと、ギンガミの方の能力は……ああ、もう症状が出てるわね」



リザは、ウツリを除く3人の手を見て、ひとつため息をついて視線を逸らした。ノドカ達の手、それは黒く変色し指が合体し3本のみになっていた。



「な、なんだ……この手は……どうなってる!?」



「いや、手だけじゃねえ……どんどん侵食してやがる、手首もみるみる黒くなっていくぞ、少しずつ……!」



「私たちの体はどうなるの? これが奴の能力……! 霧を受けてないウツリちゃんとリザは平気みたい、あの霧が能力のスタートスイッチだったというわけね!」



真っ黒に、そして硬質に。変わりゆく皆の手を見てウツリは慌てふためいた。



「みんな! 私、どうしたら……!」



「ウツリ慌てるな! 相手は2人だ、分が悪すぎる!」



大鎌を携え、攻撃を試みようとノドカ達のところへ駆け寄ろうとするウツリを、ウツリは静止する。すると急に、立ち止まったウツリにトウカは糸を巻きつけた。



「わっ! なに!?」



「ちょっと借りるぜ、ノドカも来い!」



ウツリの体に巻きつけたのはゴム質の伸縮性のある糸。ゴムが伸びれば、当然縮もうとする力も働く、その勢いを利用してトウカとノドカは窓から離れ、リザやレイカの居る所へと飛び戻った。



「やっぱりだ、体が軽くなったぜ! サンキューウツリちゃん! 奴は窓の近くに重力を放ってたようだな……ひとまず動けるようにはなった、が、なんだこの手は」



「いたた……」

 


「大丈夫か? ありがとう、ウツリのおかげで助かった。さて、奴らをどうにかしなければならない。ひとまずこの黒くなっていく手をどうにかしないとな」



「急いだ方がいいわよ、ヒョリザンは無限に上昇し続ける事が出来る」



投げかけられたリザの言葉に、ノドカは振り返る。こいつはなぜ助言めいたことを言い放ってくるのか疑問だが、下手につっこんで『冷められ』でもすれば助言もやめてしまうかもしれない、ひとまずはこのありがたいノリに任せようと思った。

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