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神が悪戯したこの毒の国で異能戦争  作者: 真鍋棒
3章「8人の刺客」
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26話「テラーマリン その1」

「ま、ままっ待てウツリ、宿から離れすぎはちょっとまずい、とりあえず止まろう、そもそもウツリの記憶の話だろう、何か手がかりを思い出せるように俺も協力する、約束だ」



「止まれませんっ! なんかもうそれどころじゃなくてっ、止まってられないです、ノドカ! 私勝手に走っちゃうんです、体が言うこときかなくてですね」



「なぜ敬語だ……いや、しかし、ん? そうだ」



ノドカはふと何か思い出したような反応をとった。ウツリもそれに気がついたようで、振り向きざま足を止めてノドカを見つめる。



「ウツリ、最初に会った時だ、なんであのときトマトを盗んだんだ? 周りには果物もたくさんあった……子供というのは野菜より果物、な気がする。なぜトマトなのか、記憶を失う前に好物だったのか?」



「え、なんでって……わかんないや、あのときはただお腹が空いていて、でも、昔好物だったのかな? あ、この前ノドカと食べたたこらいすってやつもトマト入ってた! やっぱり私、トマトが好きだったのかな?」



「かもな、ちょっとしたことから思い出すかもしれない、今は気楽に行こう (この前の女の能力者が言っていた『サクリファメタルの能力者』というのも気になるな、異名か。ウツリは記憶を失う以前に既に能力者としてこの世界に居たのか……いや、考えてもしようがないか)」



顎に指を添え悩みふけるノドカを、ウツリが心配そーに見つめる。自分に記憶が戻ればすぐに済む話なのに……しかし焦ったからといって思い出せれば苦労はしない。そんなウツリ目掛けて、バシャバシャと水の音をしたらせ突っ込んでくるものが!



「危ない!」



「わっ!」



咄嗟にノドカがウツリの肩を掴んで身を引き寄せて庇う。ウツリは突如抱き寄せられ顔がノドカの胸に押し付けられてる状況にそりゃもう戸惑う。



「ム……魚だ、なんだ。ウツリ、30cmもない魚だったよ」



「さか、さかな? (な、なにがおこったんだ、私はとりあえず幸せだ!)」



ノドカがウツリを放して、しゃがんでその魚とやらを掴み上げる。ビチビチと暴れるそれは魚。海が近くにあったので勢い余ってここまで飛んできたようだ。



「なるほどな、元気な魚だ。歩いてるうちに港の舟場近くまでやってきてしまったみたいだな。、魚の調理はできないしリリースしてあげよう」



バシャ! 海に放られた魚は暗がりの海に落ちてそのまますいすいと泳いで海に消えていった。



「はは、魚が刺さるとこだったんだね私、ありがとうノドカ」



「うん。困った時はお互い様というやつだ」



「もう帰ろうか、辺りも暗くなってきたし……見晴らし悪くなっちゃ危険だよ」



「そうだな、行こうウツリ」



「うんっ」



ノドカはウツリの手を取り、元来た道を歩んで戻る。潮風に当てられて髪も肌も傷んじゃう……というもの。宿のお風呂で洗い流したいところなのだ。



そんなとき、またも背後からバシャバシャと水のはたく音が聞こえてきた。やれやれまた魚か、しかし道を戻ってまで魚を助けてやる必要もなかろう……はやく帰らねばレイカ達も心配してしまう。



「ん……水の、音……? まて、後ろは石でできた道だぞ」



ザバァン! すぐ背後で巨大な水を打つ音がしたことに違和感を察し即座に振り返るノドカ。



「なッ……これは、ウツリ!!」



咄嗟にウツリの名を叫ぶ。背後にあったもの、それは打ち上げられた魚ではなく、飛び跳ねてきた海しぶきでもない! 巨大なサメ! 巨大なサメが石の地面を泳いでノドカ達目掛けて大口を迫らせていたのだ!!



「うおぉぉなんだこいつは!? やばい! ロングカーマー!!」



振り向いた瞬間にサメの存在を確認したウツリは一瞬のうちに大鎌を生成して、刃を伸ばす技『ロングカーマー』を繰り出した!



「いや、このサメの巨体、スピード! ウツリの攻撃速度と破壊力では間に合わんッ! ウツリ! 少し借りるぞっ」



ノドカはウツリの持つ大鎌を『磁力を操る能力』で空中に放り投げ、巨大サメの口の中に垂直方向のまま押し込んだ!



「ぉあ! ノドカやったよ! 私の鎌が『つっかえ棒』の役割を果たしてくれてる!」



「ああそれが狙いさ、とにかくこれは敵が近くに居る、離れるぞ! 今2人しか居ない俺たちでは交戦は難しい!」



ノドカはすぐさまウツリを抱きかかえ、地面を反発の力を加えて蹴り、大きく横に跳躍することでその巨大サメから距離を取る。



「よし、このまま走って逃げるぞ、能力者はどこにも見えないが、レイカ達にこれを知らせなければ!」



「うんっ!」



巨大サメがつっかえ棒に苦戦し地面にのたれているのを確認し、ノドカ達はとにかく走った。あのサメから10m以上は距離をとったのを安堵する。ここまで距離をとればあのサメの次なる攻撃が来ようともいくらでも先読みができる。願わくば、このまま戦いそのものを棄権できればいいが。



「しかし、地面を泳ぐサメか……! とんでもない能力を使ってくるものだ!」



「後ろから狙ってくるなんて、卑怯なやつだよ。許せない! が、今は怖いので逃げようっ!」



全く次の行動を起こさないまま遠くに遠くになっていくサメを走りながらも確認し、前に振り向き直した瞬間。



「ぐおぁっ!」



突如ノドカが背後に吹き飛んだ。手を繋いでいたウツリも巻き込まれてノドカと共に吹き飛んで地面に転がる。



「痛ぁ……なに、ノドカ……ぶつかった?」



起き上がるウツリ。しかしここは街へと繋がる一本道。周りにある林以外にはぶつかるものなど何も無い。疑問に感じながらノドカと繋いでいた手をふと見る。



「え……?」



血がべったり付着していた。自分のではない。ノドカのもの。



「あっ……え、ノドカ、どうしたの起きて……! あっ! うぁぁ! 首から血がでてるッ!! そんな、ノドカ起きてっ!!」



メガネの金属フレームがぐにゃりと曲がり、首には謎の切り傷。血をどくどく垂らし意識不明のノドカ。ウツリは錯乱して叫ぶ。



「『先端恐怖症』だ……生まれつき鋭いものに弱くてな、今も全くもって鋭利なものには『恐怖』を覚えてしまう」



その背後から歩いてくる男。帽子を深く被り、そして呟きながら歩いてくる。この男はコレク。カインが寄越した8人の刺客、2人目。



「おまえか……敵の能力者!」



「知れた事を答える必要もない。しかし驚いた、走ってぶつかれば脳幹まで貫く金属の針を弾くとは……気絶しているのを見るに偶然か、磁力を操る能力でも持っているのか」



「よくも……よくもノドカを!!」



新たに生成した鉄の大鎌を即座に振り回し、コレクに突進する。見れば丸腰、リーチも攻撃力も全てがウツリの有利!



「ふん、逃げていた方が利口だったぞ」



「なッ……あぁ!」



コレクの目の前から現れたのは、またも! 巨大サメ! ウツリの刃をその黒い体にザックリ刺さっても全くひるまない、どころかウツリは抜けない刃に振り回され体勢を崩し吹き飛ばされた。



「がはっ……! けほ、つ、強すぎる」



勢いそのままに林の木々にぶつけられたおかげで、地面に伏したまま動けない。そんなウツリに海上ホラーさながら、黒く巨大なヒレだけを見せてウツリの方へ迫るサメ。



「やば! 何回も斬りつければ流石のサメも死ぬはずだ……このまま黙って食われるわけにいくか!」



立ち上がりざま大鎌を生成する。ロングカーマーで狙うはサメ。目をすまして迫るサメの動きを見切ろうと集中した瞬間、ウツリの鼻から血が噴き出した。



「がふっ、ぅ、ぐ」



そのまま視界がクラついてのけぞったあと尻餅をついた。ドクドク流れる鼻血。原因は……。



「しまっ……た、能力を、使いすぎた、3本目の大鎌を生成した時点で、限界だった……食わ、れる」



「フッハ! 能力の限界が訪れたというわけか、フッフ、ならばそのぶざまな隙を……食わせてもらおう!」



巨大サメはウツリの目の前にザバァンと姿を現し、巨大な口を開け、ウツリを丸ごと飲みこもうとする!



「ウツリにあんまり危ないことはするな」



肩をグッと掴まれるコレク、背後は完全に意識の外だった。振り向いた瞬間、ノドカの拳がコレクの顔面を貫き林の中にぶっ飛ばされる。



「ォごっパァッ!!」



その瞬間、ウツリの目の前から巨大サメは姿を消した。そこにいたはずなのに忽然と消えたのだ。コレクがぶっ飛ばされると同時に。



「ノドカぁぁ! 良かった生きてたぁ! ほんとどうなるかと思ったぁ! うわぁぁぁ」



「もう大丈夫だ、あいつは死んだ」



鼻血と涙をぼろっぼろに垂らしながら、ノドカの胸に飛び込んでくるウツリの頭をなで、コレクの消えていった林を見つめる。



「あのサメは、最初に俺たちを襲ったサメとはまた違う新個体のようだな、この獰猛で知力の足りないサメではウツリの鎌のつっかえ棒を外すのは無理なはずだが、ウツリを襲ったサメはそのつっかえ棒が無かった……こいつがその度生み出していると考えたが正解だったようだ、本体を叩けば消えた」



「ノドカ、とにかくここは逃げよう、ノドカも出血が酷いし、私も多分戦えない」



「ああ、そうするつもりだ、レイカさん達と合流だ。レイカさんの『スポンテーニアスコンバッション』で焼き尽くすか、トウカの『カーヴィスレッド』の糸で捕らえる事でこいつのサメがいくら出てこようが対応できる」



ウツリの肩を借りて、血の中の鉄分を操って自身の出血を止めつつ、なんとか町の方へと歩いてゆく。

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