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神が悪戯したこの毒の国で異能戦争  作者: 真鍋棒
3章「8人の刺客」
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24話「スポンテーニアス・コンバッション」

ミカルナを完全に追い詰めた。空を飛ぶか穴を掘るか以外にこの場から逃げる方法は万が一にも……。



「レイカ……あなたは賢い能力者だと聞いている、カイン様からな、私の能力特性を活かして囲んで追い詰めるくらいはしてくると踏んでいましたよ、切り札を、残しておいて良かったと、確信しましたア!!」



地面に突き立てた杖の持ち手を思いっきり真上に引っ張り、持ち手を引き抜く! 瞬間、煙が噴き出し火花が巻き起こる!



「これは煙幕……!? そんな目くらましで私たちが怯むとでも……」



杖全体にいくつもの亀裂が入り、膨張! 轟音なる爆発音がこだますると共に鉄の片がミカルナの前方辺り全体に超速で飛び散る!



「ヘヘァ! 私の魔改造の杖の最終兵器! いくつもの爆薬を刀の内部に練りこみ点火させることで前方に鉄片をぶち撒ける! 爆発は良いですねェ、人の世界を一瞬で消し去る死の美学!!」



「うぅぅぐあぁぁぁ!?」



3人のレイカ全員に突き刺さるいくつもの鉄片。避ける間もなく全員に刺さる、そして傷や怪我は3人で共有する特性を忘れてはならない!



「1人にいくつ刺さりましたぁ? 10枚刺さりゃ傷は30ですよ、無数の切り傷と爆発により熱された火傷だ……死に至るには申し分ないとは思いません?」



「く、う、ぐゥゥ……痛、イ……!」



「おっと……生きてましたか、誰も死ななかったわけですねぇ、しぶといッ!」



「げぐァ!」



倒れ伏せてはいるが、息のあるレイカの首を思いっきり蹴り飛ばすミカルナ。蹴ってすぐ飛びのけてレイカから距離を取ったが、靴が黒焦げになっていた。



「あっぶない……一瞬のうちに炎を巻き起こす恐ろしい能力ですよこいつは、離れるのがも少し遅けりゃ私のおみ足が焼けてましたね、切り札で誰も死ななかったのは予定外でした。しかし」



ふと横を見れば、レイカが1人だけ気絶している。ミカルナはここぞとばかりに歩みを寄せる……だが、もう1人のレイカが地面を這いずって気絶しているレイカの前に体を呈してミカルナを睨み付けた。



「させないわ……! 私はここで殺されるわけにはいかない、仲間が待っているから!」



「フン、私は別にその『気を失って寝ている』レイカが狙いじゃあありませんよ、射程距離内に入った瞬間に丸焦げにされるリスクを背負う戦いをするつもりは無いってことです、杖も爆発して無くなって丸腰ですし」



「え……? それって、つまり」



ミカルナは大きく息を『ふぅ』と吐き、肩の荷が下りたように、ふらふらと町の中へと歩みを始めた。

背後の門番2人も結構どよめいている。



「お、おい……あの女、ひとしきり独り言喋って爆発起こして、スッキリしたみたいな顔で帰っていくぞ……ど、どうする」



「う、むぅ、門から出ないのであれば俺たちの仕事と違う……あんな見るからにヤバい女なら、街の中の憲兵が別件で捕らえるだろう、放っておこう」



一方レイカ2人はミカルナの背中を見送りつつ、ハッとしたように大声をあげる。



「ちょっ……戦うつもりは無いって、あなた……じゃあ私にかけた能力を解きなさいよ!」



「待って、ちょっと待って、まさか……まさか!」



聞く耳もたずでみるみる町の中へと消えていくミカルナを呼び止めるレイカと、顔を真っ青にしてパニックに陥りつつあるレイカ。パニックついでに渾身の力で無理に体を持ち上げて立ち上がろうとする。



「な、なにしてるの無理しないで、傷は塞がっていないんだから……!」



「ダメよ、追わないと……追わないと私たちは殺される!」



「え? 待って、血が噴き出してるわ、あなたが死んじゃうわよ!」



「あなた、3人目の私よね……あなた、自分が起きた時どこに居たかは覚えてる?」



「どこって、ベッドの上よ」



「そうよね、ベッドの真ん中に居たのよね……私は多分『1人目のレイカ』なの、私が起きた時、私はベッドの隅に追いやられてて、2人目の私 (そこで気絶してるわたし)はベッドの真ん中に現れていてスヤスヤ寝ていた」



「それが……なんだって言うの……」



「私たちは、どこで寝ても新しい私は同じ場所から生まれるってことよ!! この門の前で寝たとしても新しい私が生まれるのはあの宿のベッドの上ッ! 今そこに倒れてる私が気絶して寝た瞬間に宿のベッドの上に4人目の私が生まれたんだわ! ミカルナはその丸腰の私を殺しに向かったのよ! その私の記憶は3日前!つまりミカルナとは快い挨拶をしただけの、敵として認識してないときの私! それが、殺しにくるミカルナに相対して抵抗できるわけがないッ!」



「なッ……だから、気絶している私を確認して安心したのか、勝利を確信したからッ……この能力……この能力は不味い、止めないと、追わないとッ……!」



「ぐ、痛ァ」



倒れ伏せていたレイカも、無理して立ち上がろうとして体から血を噴き出す、傷の裂けはどんどん劣悪になっていくが、今この痛みに耐え、追わなければレイカはまとめて死ぬことになる。そして、その身体中の痛みに反応して、気絶していたレイカも目を覚ました。



「な、なに、何が起こってるの?」



「話は後よ! 今ミカルナが宿に逃げたわ、追わないとまずいの!」



「……宿に行けばいいのね」



「ええ。はやく!」



「私たちの傷じゃ走るのは無理よ、丁度そこに客車があるでしょ」



目を覚ましたレイカは、門の脇にあるいくつかの客車を指差した、馬が人と荷物を運ぶ客車、二つの車輪と木の荷台で作られた客車。馬が引いて移動する為に使うこれ (なぜこんなところにあるかというと、町の外からやってきた人はまずこちらで荷を下ろして、この町の役人が荷物を運んであげる。馬と荷車をひいて町を歩くと混雑するからである、馬は役所の中で預ける形になる、この馬の場所代と役人の荷物持ちの仕事にお金を払わなければならない、町の収入源のひとつである)



「悪いけど馬が居ないわ、私の顔も馬面とは程遠いし」



「くだらないこと言ってる場合じゃないわよ私……あの荷車に3人で乗るのよ」



「乗るって、荷車を引く人間が居ないじゃない、この世界には今私たちしか居ないのよ?」



「私たちの能力で動かすのよ、スポンテーニアスコンバッション……今なら出力は3倍、自然発火の出力が3倍、それはもう『エクスプロージョン(爆発)』になる」



「まさか、その爆発で荷車を走らせようって言うんじゃ」



そのまさかであった。提案したレイカはしたり顔で荷台に向かって這いずり、乗り込む。他の2人も同様。



「この前まで乗ってた車椅子と車輪の位置は一緒ね……運転は私に任せて、こう、体ごと荷車を動かす感じで方向修正くらいはできるかもっ」



「なーに楽しんでるのよ、一斉に能力を使うわよ、三位一体で……爆発を!」



3人で荷台の背後の地面に向かって能力を使う。この位置で爆発が起きればその衝撃で客車は高速で射出されるという寸法。



「スポンテーニアスコンバッション!!」



能力は最大出力で放たれ、大爆発と共に客車は発進……否、発進というより、宙を舞っている。吹き飛んでいる。



「あ゛あ゛ああぁぁ待って待って待って強すぎたんじゃないの爆発起こすの2人で良かったんじゃないの飛びすぎ飛びすぎ飛びすぎ!」



「……」



「ちょっと運転担当の私ぃ! 何顔面蒼白になってんの! 運転は、運転はどうした! 着地するわよ、はやく! あぁぁぁ」



ガシャーン。物凄い音と共に地面に叩きつけられた客車は奇跡的に大破することなく、心持ち不安なガラガラ音は流れているが、前方に直進している!



「ぐは、痛ァ、あ。進んでる、や、やったッ! さぁ運転するわよ! みんなしっかり掴まって!」



「おお運転の私が戻ってきた、着地の衝撃で! よっしゃ頼んだわよ!」



「あああああ!!」



「え、何」



「衝撃で手が客車の椅子を貫通して抜けない! 運転できない助けて!」



「エエエェ嘘でしょ木製だから板ごと割れたのね、やばい、前方は壁。ぶつかるゥ!」



そのとき再び爆発。客車の左側に炎が巻き起こり、客車の軌道はやや右方向に変更され、ぶつかることなく住宅街を駆け抜ける!



「運転は……能力で客車を燃やして行う!」



「ナイス私!」



「うるさいわよ私さっきから、スペリィが乗り移ってるみたいよ」



「失礼な! 私は至って普通……ああああ!」



客車は木製だから、軌道修正で爆発をおこせば例に漏れず燃える。燃え盛る左側面を目撃して右側に逃げるレイカ。



「大丈夫よ、もうすぐ宿に着く……問題は」



「待って問題はまず私よ! 手が抜けないから! あなた達だけ右に避けれるけど私は燃えるから! 助けて!」



「問題はまず、どうやって減速して降りるか……」



「待ってエエエェ置いていく気!? 私が死ねばみんな死んじゃうわよ!?」



「簡単なことよ、加速が客車の尻を爆発させることなら、減速は……客車の前!」



レイカは能力の炎で客車の前方に爆発を起こし、客車の加速と真反対方向に力を加える荒技にうって出た!



「うああぁ! 止まッ……たぁ!」



「やった私の手も衝撃で抜けたわ!」



「さぁ行くわよ私! 宿はすぐそこ、急ぐ!」



気絶していたわりに偉そうなブレーキ担当レイカに率先され、腕の抜けなかったレイカとパニクってうるさかったレイカも傷つく体にムチをうつ気合いで宿へと歩んで行く。



「しかし、忘れてはならないけど酸素……かなり薄くなってるわね」



「鼻呼吸では足りないわね」



「これ以上私が増えようものなら、更に酸素が薄くなって酸欠で死ぬ可能性もあるわ……山に登ってる気分よ、まったく」



「絶対に誰も気絶したり寝るんじゃないわよ、痛みを共有してるから疲労困憊で体は鉛で出来てる如く重いのは分かる。けれど、この能力を無くすまでは」



3人は顔を見合わせ、こくり頷く。そして宿のドアを勢いよく開き中へとなだれ込み走った。レイカの部屋はこの宿の2階。その部屋のベッドの上に恐らく4人目のレイカは寝ているはず。



「お早い到着ですねレイカさん御一行!」



「ミカルナっ! もう階段の上に居る!」



「一歩遅かったようですねぇ、このドアの向こうにいる4人目のあなたを殺すのに数秒も要らない……残念でしたねェ」



既に時遅し、ミカルナは階段の上。スカートの中から短剣を取り出し、扉に手をかけ階段の下に居るレイカ達を見下し笑みを見せていた。



「よしなさい、その扉を開けないで!」



レイカ達が追ってくる様子を鼻で笑い、ミカルナは御構い無しに扉を開ける。



「ハハッ! 中にいる無防備なあなたを殺して……私の能力は幕を閉じる、また視力を失う元どおりの生活に戻るのは勿体無いですが、トウカだかノドカとかいうガキを殺すときにまた堪能するとしますよ……」



短剣を構え、扉の向こうに居る無防備なレイカを見据えようと身を部屋の中に歩ませるミカルナを出迎えたのは。



「スポンテーニアスコンバッション……!」



「は……!?」



『灼熱』だった。ミカルナは一歩部屋に入った瞬間に身体中が火だるまになり、そして驚愕する。部屋の向こうに居るレイカは『ミカルナを睨み、瞬時にミカルナを敵だと判別して能力で攻撃』したのだ。このレイカは4人目。確かに今誕生したばかりの……記憶が3日前のままのレイカ!



「ななっ、ウワァァァなんでだっこいつっなんでだッー! ウゥゥクアァァァ!!」



焼けて燃える体と衣服、その熱と衝撃で足がもつれ後ずさり、背後の階段から身をゴロゴロと転げさせ転落落下した。



「ヒュー……ヒュー……なん、で、だ……ハッ!」



4人目のレイカから離れることで炎の勢いが増すことがなくなり、体の炎が消えてくれた、が。顔を見上げると3人のレイカがミカルナを見下していた。



「ヒィッ!」



「4人目の私を呼び出したことで……文字通り『四面楚歌』になってしまったってわけね、ふん」



「え、なによ私、どういうこと?」



「なんで4人目の私がミカルナを敵だって分かったのよ」



「私、この宿からミカルナを追いかける時ベッドの上に遺書……じゃなかった、手紙を置いといたのよ、4人目の私が生まれたときのために、ね」



「あぁ……あ! そういえばそんな事をしてたわね、私!」



そうこうやりとりしてるうちに、4人目のレイカが階段を降りてやってきた。手にはレイカが書いた手紙。



「本当にこんな不思議で不気味なことがあるのね……私が3人も、なんか満身創痍だし? 大丈夫?」



「ありがとう私、助かったわ、やっぱり私の書いた文って人を動かす力があるのね、自分さえも」



「ええ、これは確かに私の文字だし、敵の能力の詳細とミカルナがその能力者であること、これを読んでるということはミカルナが殺しにやってくること、信用できないと思うが部屋の中にミカルナが入ってきたら瞬間に能力を使って迎撃せよ。顔を見ればきっと、敵意たっぷりの笑顔のはずだ、迎撃したくなる顔だと思う、迎撃せよ。by私」



以上が手紙の内容であった。嘘デタラメ悪戯にしては事細かに書かれすぎである点と、筆跡が全く自分と同じという点から信用に至ったということである。

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