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神が悪戯したこの毒の国で異能戦争  作者: 真鍋棒
2章『アンヴィー』
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16話「レッツ・バーディ その1」


「なぁあんた……ちょっといいかな、お話でも」



「え、私? 私に何か御用?」



「いやその、綺麗な金髪だ……ここいらじゃ珍しいと思って、つい」



「そうかしら」



辺り見渡せば全面緑色の景色、遥か彼方まで見渡す限りの緑草原と木々景色。

そう、ここは町の中ではなくフィールド。ここいらは魔物があまり出ないという事もあるが、そこに一人の少女が佇むという異様な景色があった。

魔物があまり出ないとは言っても危険の可能性はゼロではない、この少女は命知らずか自暴自棄か? しかしその答えは直ぐに明らかになるだろう。



その少女に近づき話しかける青年が一人。名をノドカと言う。



この少女こそ神。そしてこれこそ、トウカがたてた作戦。

まずは少女とコンタクトを取る事から始まる……。



「(意外だ、神と呼ばれているからてっきり会話のひとつも成り立たないものかと思っていたが

こちらの問い掛けにも反応するししっかり答えている……普通の人間なのか?)」



「で、どうしたの? 私に何か用でもあるの?」



思ったより、思った以上に人間しているこの少女の意外性で、ちょいとばかし固まってしまうノドカ。

少女に急かすような言葉を投げかけられ、ハッと目覚めたように目線を彼女に合わせる、しかし思えばこの目の前に居る少女こそが、ウツリやスペリィに能力を与え暴走させ、ザリングAK、アクウィスという能力者をしもべにしている張本人なのだ。

そう考えると憎悪のひとつや恐怖の感情も少しは湧いてくるというもの、しかし果たしてノドカがその感情を抱いているかは不明だが。



「いやその、ここら辺は魔物が出るから……町へ戻った方がいいんじゃないのか? と思う」



「大丈夫よ私は、親切にありがとう」



「何故大丈夫なんだ? 一見武器も無いし、近くに憲兵も居ない。丸腰の少女が魔物を相手に出来るとは思えない」



「私は大丈夫だから大丈夫なのよ、私は私、アイ、マイ、ミー」



「……もしかして特殊な力でも持っているとでも言うのか?」



「へぇ特殊な能力をもつ人間について知っているのかしら? なかなか知識人なのね、経験豊富と言うのかしら……」



「最近よく、そういう人間の目撃情報があるとか聞くからなぁ……」



「ふぅん……それで私に声をかけたのは物珍しさから? 町へ戻る注意をする割にはあなたも丸腰のただの男じゃない」



「ああそうだ、俺も能力を持っているんだ……だが、生まれてこのかた俺と同類の人間と出会ったことがない……でもあなたという能力者に今こうして会えてるわけだ」



質問に質問を重ね、質問にうずまってしまうんじゃないかという会話の内容だが。コミュニケーションはまあまあ取れている。

なんだ、話してみると案外受け答えできるじゃないか、しかし身長はノドカより20cm以上は低いだろうが (ノドカは推定170cm)話し方や雰囲気の卓越した感がなかなかある。なにより目をしっかり見て話してくるので、自分の発言に何か落ち度がなかったか注意深く臆病になってしまうというもの。



「ノドカは上手くやっていてくれるみたいだな」



一方ノドカと神から少し離れた場所に隠れている人物が三人。

トウカ、ウツリ、スペリィである。彼らが神をひっとらえる作戦はいとも単純で直球。

ノドカが神をなんとか説得し、町へ向かわせる、その途中でトウカ達が待ち伏せ。

あらかじめトウカの糸能力で作っておいた捕獲用ネットで強引に、狩人のごとく捕獲するってわけである。捕獲イベントはいま佳境を迎える!



さて場所は戻り、ノドカと神が雑談している所へ。



「私も同類と出会えて嬉しいわ、でも私とあなたじゃ全然違うのだと思う」



「嬉しい、か……俺も嬉しいよ、ところで名前を教えてもらっていいか? 俺はノドカ」



「私はアンヴィー」



「そうか、アンヴィーよろしく俺ノドカ」



「ん、ノドカよろしく私アンヴィー」



ラップか。とツッコミたくなるやり取りだったがとにかくこの調子で町へ向かう道まで誘導させたろう、そうすればノドカ達の目的は達成されるのだから。



「俺が何か奢るから町へ戻らないか? いくら能力者でも体力が無ければ魔物と相対するのも危険だと、思う」



「そういえばお腹が空いたかも、多分」



多分お腹が空いたとはこれまた曖昧な表現だが、なんとかうまくいきそうだ。しかしこのアンヴィーという女「同類と出会えて嬉しい」なんて言っていたが……。

その同類の能力者をばんばん増やしているのはお前自身ではないか、腐る程能力者を目の当たりにしてるだろうに、嘘もいいとこ結構悪女なやつだ。



「しかしどうしてあなたは諦めるのかしら……なんでも許して諦めて寛容な、大人になりたいの?」



町へ向かおうとノドカが先導し歩き始めたその瞬間。口を開いたのはアンヴィーだった、突然何か言い出す。

許す? 諦め? なんの話をしているのだろう? ノドカは歩む足を止めてじっくり尋問したくなったが、いや、今は良い。

独り言かもしれないし、どうせあとで幾らでも聞きだせる……聞こえなかったフリをして適当に歩いていく。



「私は家族を諦められない、もう何十年になるのかしら。私はいつまでも子供で、いつまでも欲しい物を諦め切れないの」



「……ま、魔物が来るかも分からないから、お互い注意して歩こう……」



「ねぇノドカ」



「……」



家族……諦め……? なんだ、なんの話だ? 小説のあらすじでも語らっているのか?

ノドカにとって家族とは……いや言うまい、この世に家族は今ウツリだけだ。

だから俺に家族だどうとか言っていないで、今はただ歩いて、トウカの罠に引っかかってくれ。そう思っていた。



「おおおぉやったぞノドカァ~!」



「え?」



ノドカがハッとして声がした背後に振り向く。

やったぞノドカ、と歓喜の声を上げたのはスペリィ。



「うおっふ」



そしてぼーっとするノドカに飛びかかって抱きつくのもスペリィ。

ノドカとスペリィの身長は同じくらい。となれば体の肉付きが豊満なスペリィの方がノドカよりも重……案の定二人まとめてぶっ倒れて地面にぶっ倒れた。



慌ててウツリとトウカが二名に駆け寄り……ウツリがノドカに手を伸ばす。



「痛いな……スペリィ俺の上からどいてくれ……というか、そうだ、アンヴィーはどうなった!?」



ノドカが慌ててウツリの手を掴み取り即座に立ち上がる、アンヴィーは、アンヴィーは今の一瞬でどうなったのだ? それが知りたくてたまらなかった。

その不安気な表情をするノドカに、トウカは笑みを浮かべ答えた。



「捕らえたよ俺の糸で、作戦成功だぜノドカ!」



トウカの声に安堵し、ふと彼方へ目をやると……。

トウカの糸により作られた捕獲糸に絡まれ、身をよじり抵抗するアンヴィーの姿が!



「や、やった!」



喜びの声を上げて立ち尽くすノドカに、ウツリは近寄り、アンヴィーを見据えながら呟く。



「ノドカのおかげだよ、ほんと危険な役割だったもんね……無事で良かった……」



「ありがとうウツリ、こうして上手く行ったのも、トウカの能力と演技指導のおかげだ」



「演技指導? トウカ……さんが?」



「いや俺はとりあえず相手の女の髪の毛が綺麗だと褒めて、ご飯へ誘うんだと言っただけだけど?」



スペリィが地面を蹴り立ち上がりながら叫ぶ。



「ただのナンパじゃねーかーそれー!」



「少女ってのは褒められるのと、お食事への誘いってのに弱いんだよ、決まってんだろ! スペリィ起きたなら早くアンヴィーを担げ!」



「はあ!? なんで私が!」



「とりあえずここでは魔物が来て尋問できないので町へ連れて行く。えっと町の名前なんつったっけな……まぁいいや、とりあえずスペリィの「気配を消す」能力でこのアンヴィーとかいう女の子をそれとなく隠しながら宿を借りようじゃないか」



「はぁ……なるほど私の能力に頼ろうってわけかぁ、しょうがない……嫌だけど」



「宿に女の子を連れて行けばお楽しみタイムだ、それまでなんとか頑張れよなスペリィ」



「なんでちょっと卑猥な物言いなんだよオイ!」



お茶らけた口調で話しかけるトウカ、大声でツッコむスペリィ。

この二名の (大変微笑ましい)様子を見てノドカが通る声でトウカ達に話しかける。



「町の名前はフォールオ・ファーストという名だった筈だ、日が暮れてしまう、急ごう。レイカさんにも早く知らせてやりたい」



「ああそうだなノドカ! じゃあ早速レイカに連絡しておくぜ」



「ん? 連絡……いったいどうやって?」



いきなりトウカの言い出した言葉に少しばかり驚くノドカ。早速連絡しておくとはいったい……?

思えばトウカの能力は糸なわけだが、レイカの話では「遠くに連絡ができる能力」と言われてた筈だ、前回から今回にかけて遠くへ連絡する描写など一切無いが……。



「俺はレイカのもとを離れ旅をしながら、ゆく先々でこういう、高い木を見つけて糸を張らせているんだ」



トウカはそう言いながら近くにある高い高い巨木を指差す。

そうして自身の手から糸を勢い良く噴き出し巨木の頂部付近に糸を張らせた。



「これがトウカさんの、連絡手段……? しかし糸を使って……まさかそらに文字を作ってレイカさんに読ませるとか」



ウツリの名推理が光る、しかしそんなことは著しく不可能なのは言うまでもなく、まぁ言ってしまったが。

トウカは巨木に糸を伸ばしながら、腕に力を込め、巨木に伸びる糸を震わせていた、



「トウカ……何をしている?」



「これが俺の連絡方法、レイカの館まで繋がっている鋭く張った糸に、振動を送り信号とするんだぜ

今頃レイカは俺の通信を聞いて喜んでいるに違いない」



「なるほど張った糸の振動で遠くに通信を……ありえない話だが能力で作った糸の性質などは未知だし現に今出来ているのだから考えてもしょうがないな」



「理屈っぽいなノドカは、俺みたいにもっと楽観的に行こうぜ」



トウカは糸を強く張らせたまま、ノドカに語りかける。



「あぁそうしたい、親にも言われてきたことだ……だが明確な敵が居るという今の生活の中で俺も参ってきているようだ、もう少し小難しくさせてくれ」



なんだこいつは、自分のことなのに他人行儀な話し方をしよる……自分に対して興味が無い系の人間か?

とかなんとか思いながらトウカは次に自分の手。糸を放出している手に向かって、まるで語りかけるように喋り出した。



「やったぜレイカ、神を見事捕らえたぜ、これより帰還する」



トウカはどうやらレイカと話をしているようだが、ここには通信機はなし。

ようするに、トウカの糸が通信機の役割を果たしているのある。



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