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神が悪戯したこの毒の国で異能戦争  作者: 真鍋棒
2章『アンヴィー』
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14話「イエス・ノー・フォーシブリィ その1」




「させるかぁ! 刺し違えてでもトウカさんは守ってやるー!」



「来なさい余り物め、サクリファメタルとでも呼んであげようか、いいえもうこの世から退室するのだから関係ないわね」



鎌を振り回しアクウィスを狙うウツリ、もしウツリがやられてしまえばノドカ御一行全滅不可避、積み重ねてきた旅や人生はあえなく泡となって消え去るのみだ。



「おい何をしてんだお前らぁ!」



そのとき、この路地裏に数人の町人が現れた。戦闘するトウカ達を睨みつけ、なにやら穏やかじゃ無いようだ。



「路地裏で何か怪しい奴らが居ると聞いて来てみれば……全員よそ者か、なにをしてやがんだ?」



「うちらの町を荒らすなんて許さん、大人しく投降しろ! おい聞いてんのか?」



アクウィスの背後からやって来たそいつらは、アクウィスの肩をガシッと掴み、アクウィスをギロリと睨む。



「邪魔をしないで」



アクウィスは何のためらいもなくそいつの手をダガーナイフでザクリと切り裂く。男は絶叫し仰け反る。



「ッッゥアッッ!!」



「あなた達、私達をまとめて町から追い出そうと言うわけ?」



アクウィスは微笑しながら男達にそう質問した。刺された男を庇って別の男が前に出て高らかに返事をした。



「当たり前だ! 抵抗するってぇなら容赦しねえ! 町から追い出すぞ! それが嫌なら大人しく……」



「町から追い出す……それに答えたわね」



次の瞬間起きたことは、もはや予想も容易いだろう。そいつらはみんなありえないほどの勢いで空を飛んでいき、恐らくは町の外まで吹き飛んだのだろう。この場から綺麗に消えていった。



「無関係な人まで巻き込むなんてこの女ぁ!」



しかしその隙をウツリが狙い走り、鎌での一撃!



「なっ、しまった!」



咄嗟に反応するも間に合わない、右肩を深く切りつけられたアクウィス、生半可ではない血が噴き出す。



「ウゥッぐ!」



「よっし! このまま連撃……」



「あなた今ぁ! 巻き込む……って言ったわよね!」



「ファ!? いや能力が発動する前に倒す!」



術中にハマっては敗北は確実……! ウツリは自分の体がどうにかなる前にアクウィスをぶっ倒そうと試みる! 鎌をさらに伸ばし、アクウィスに追撃を……!



「あ、バカな! 鎌が勝手に動く!?」



しかし異変が起きたのはウツリの鎌、の長く伸びた刃! ウツリの手から大鎌そのものが離れてしまい……。

ウツリの意思とは関係なくグングン伸び、ウツリの方向へ帰ってくるのだ、巻き込む……その言葉を否が応でも実行しようとするパワーによって起こるのは……!

刃がウツリの体に巻きつくという結果! ウツリは鉄の刃に囲まれた、このまま力一杯縛られようものならウツリの体はズタボロと化してしまうだろう!



「うっ、うああああ! ……あれ?」



しかし、いたいけな少女にそんな醜い仕打ちをするほど現実は非情ではなかった!

ウツリの刃は、ウツリの周りでピタリと止まっているのだ、まるでウツリが鉄の刃の竜巻の中にでも居るような不思議な光景……だが刃は力を込めてウツリを縛り巻きつこうとしているのがわかる、だが「何か」が邪魔をしてそれを拒むのだ。



「何が起きているの? 私の言葉の力は確かに働いた、邪魔をするものなんて何も……ん?」



アクウィスは無表情ながら驚きを見せる、何かがウツリを守っているようにも見える。

よく目を凝らしてみると、何かが見える、ような気が。

日の光に照らされ、キラリと光ってるような、確かに見えるはずなのに、集中しないとすぐ見えなくなってしまうが、ウツリを守っているものの正体それは、糸だ。



「なるほどトウカめまだ生きていたってわけね、苦しみに喘ぎながらも糸の能力を使っていた、か。でも彼の糸、こんなに見えづらかったかしら? まあいいわ、刃に囲まれてはあの子も動けない、もうこしゃくなマネはできないように殺してあげるわ、能力者が死ねば能力によって生まれた効果や物は消える」



アクウィスは倒れているトウカにトドメを刺してやろうと、またしても、歩みを進めダガーナイフを構える。しかし、どうにも違和感がある、歩めない。「トウカ、あんたはレイカ様が合流してくれと言った大切な味方だ、ケガさせるわけにはいかない。だからあたしが行く、ノドカを頼むぜ」



トウカは特に返事も頷きもしなかったが、スペリィは一歩二歩、その女に歩みを進める。

またも爪の気配を消しておき、丸腰だと勘違いさせておく。

そのスペリィに、女は張った声で話しかける。



「寄ってきてくれてありがとう、トウカじゃないのが残念だけど。私の名前は「アクウィス・グランドホテル」よろしくね」



「お、おう」



「ところであなた、かかとを上げて、つま先だけで歩いてくるのね。その歩き方、良いと思ってるの?」



「は? なんだそれ質問か?」



「そう質問よ、質問を質問で返すな」



少し怒気が混じったような口調に変わる。



「その歩き方が良いと思ってるのかどうか聞いてるのよ分かる? その斜に構えたような特殊ぶった歩き方が良いと思ってるのかって言ってんのよ。イエスノー問題だぞ早よ答えろって」



何言ってんだこいつ、全く話の意図が分からん。

話をかけてるつもりなのか? 質問のつもりなのか? 意図も目的もわからない質問に快く回答があると思ってるのか?

訳が分からないことを押し付けられるのはスペリィ的に嫌いだ、まあこっちは爪という武器を隠してる。

適当にあしらって隙を見出そう、どんどん距離を詰めて攻撃範囲に入ればスペリィの勝ちだ。



「別にィ~、素早く動けるように気を使った歩き方なだけだし。良いと思ってるもんね、別に言われてたってやめないし」



「ふぅーん素早く動けるようにねぇ、でもダサいわよそれ、変な歩き方、普通の人はしないわよ。それにあなた格好もバカみたいだし」



「ぐくっ……ノドカに言われたから挑発には乗らないもんね……! レイカ様の為にもお前みたいな敵は確実に、クールに倒すぜ!」



「倒す……? 倒すと言ったの? 私を倒すと? 私が倒れると思ったの?」



「なんだくどいな! そう言ってるじゃないか」



残りほんの3mほど、飛べば届くだろうその距離のアクウィス・グランドホテルとスペリィ・ノイジィ。

だが、異変が起きたのはスペリィ、なんの攻撃も受けてないし、地面にも異常は無かった。

なのに、なのに何故か、地面に倒れていた。



「あ、あれ!? おかしい、なんで私倒れたんだ? まずい、早く起き上がらないと……うぅ、うぬォォ?」



地面を這いつくばりくねくね動くだけで全然立ち上がらないスペリィ。

はたから見たらとても痛々しい光景だ、なるべく関わり合いになりたくないソレな人間そのものだ。


そんなスペリィにツカツカと歩いてやってくるアクウィス。

早歩き、超早歩き、ボソボソなんか呟いてる。



「死ね」



直球である、懐からダガーナイフを取り出しスペリィを殺そうとしている。

容赦がない、容赦をしない、それがこの女アクウィス・グランドホテル。

挿絵(By みてみん)




「うぎゃあぁぁ!?」



その瞬間、スペリィは凄い勢いで地面を滑ってトウカとノドカの元へと帰ってきた。

アクウィスはその歩みをピタリと止める。



「念のため、糸をお前の脚に一本だけ絡ませておいて良かった。俺が引っ張って助けてやったんだから感謝の一つは欲しいぞ」



「引きずるなよ半身ズタボロじゃ!」



「ごめん、さて次は俺が行こうかなぁ、流れ的に次はこの俺トウカが。俺一人で……いや」



アクウィスに立ち向かおうとするトウカのそばに、追いついたウツリがやってきた。

スカートは修復済み、記憶喪失でフラフラするノドカと、地面に這いつくばりになってるスペリィを見て驚愕する。



「な、なんだどうなってるんだみんな!? トウカさんこれは一体、あっちにいる変な女がやったのか!?」



「二人だな、俺と可愛いウツリさん二人でアクウィスなんとかホテル1人だな。ウツリさん、戦おうアイツが敵だ」



「わ、分かりました! 行きます! ノドカ待っててね絶対助けるからね!」



ノドカはフラフラ歩きながら、たまにスペリィを踏んでいた。

記憶喪失が酷くなってきている、早いとここの敵をどうにかしなくてはヤバイ。



「前持って言っておこう、ウツリさん、あまり喋るな、あいつの言葉は完全に無視しろ、聞くな」



「あ、うん! 分かりました、分からないけど! 無視します!」



アクウィスは敵が2人となっても未だ余裕の表情、表情ひとつ崩さない。

少し後ろに10歩ほど下がり、そして言う。



「トウカ……こっちに来なさい、痛くしないから

少しお話しましょう、楽しいお話、ほんの少しのチャットタイム、その2」



彼女はまた同じセリフを言った。

警戒態勢のまま、トウカは小さな声でウツリに話しかける。



「どうしたものか困ったな、とりあえず奴に近づかなきゃ始まらんな」



少しずつ、とても狭い歩幅で距離を詰めるトウカ。まだアクウィスまでの距離はしばらくある。



「アクウィスとやら、なぜ能力という常人より優れたパワーがありながら人の命を狙うような事するんだ? 許されると思ってんのか」



「うーん、私たちに力を与えた神様を狙うような真似をするからよ。それにトウカ、あなたは神を目撃した、あなたを生かしておけば神様に危害を加えるかもしれない。私はこの力を手放したくない、凡人になんか戻ろうとは思わない、あなた達の正義感は私達という能力者を苦しめている悪なのよ」



ザリングの時と同じだ、自分本位を全面に押し出してくるスタイル。これに対しウツリは激昂した。



「違う! ノドカやレイカさんは悪い事なんてしてない! 苦しんでる私を救ってくれたのは、他でもないノドカとレイカさん、あとスペリィも! 能力の暴走をした私は、神が悪だってことぐらいわかる! あんた達は怖くないのか、自分の能力の暴走が!」



「暴走……? 何よそれは、あなた人間でしょう?」



「え? 神から能力を貰ったものは、暴走する、あんたらもそうなんでしょ?」



「暴走……あーそうか、あなたアレか、神様が言ってたサクリファメタルの能力者……なるほどかわいそうにねぇ」



「な、なんだよそのサクリファメタルって!」



「ウフフこっちにきたら教えてあげてもいいわぁ」



「くそったれー!」



やすやすと煽りに乗り、単身突っ込んで行ってしまうウツリ。

だが激情になったからと言って力が増すわけでもないし、能力の精密動作も下がる一方だ、相手は命を狙ってくるやつだ、ナイフを持っているし。



「というわけでウツリさんにもあらかじめ糸を巻いておいていた! 戻ってこい! 近づいてはダメだ!」



「うぉわあぁ!?」



ウツリはトウカの糸に引っ張り寄せられトウカの元へ戻ってやってきた。

トウカは能力の糸をほどき、ウツリはトウカの能力に驚きを見せた。



「糸、トウカさんは糸の能力者だったんですね

すいません私熱くなっちゃって、自分の事を知りたくてたまらない、あんな敵キャラが言う事も真に受けてしまうなんて……」



「ふむ、俺は君たちの事情や過去は知らないが、冷静になれただけ良しとしよう。俺は神を見た、恐ろしいことにウツリ、君と同じくらいの小さな金髪の女の子だったのだ、それが神だったんだ。綺麗な金髪の、無垢なイメージがありながら妖艶な雰囲気もあった。多分その魅力に取り憑かれた成れの果て「神様を守る」という使命感に囚われているのだろう、こいつら敵の能力者共はな」



「神様が、女の子……!? いや、それよりなんで今私にそんな話を!?」



「俺が戦闘不能になったら神への足取りが掴めなくなるだろう? レイカが君たちと、俺を合流させようと目論んだのは、神を仕留めるという最大目的の為だ。ホウレンソウってやつで隠し事はナシにしようという訳だ」



トウカは単身向かおうとする、神への手がかりは洗いざらい話、自分がダメになってもウツリが次に繋げられるようにしておいた。

トウカ自身も自分が負けるとは到底思ってないようだが、決して慢心はしていない意思表示である。



「私も戦うよ!」



すかさずウツリもトウカの横に並び臨戦体勢に。

一方アクウィスは首をぽきぽき鳴らしながら両者を睨む。



「あなたたち話が長めだわ、来るのかこないのかはっきりしなさいよ」



「あぁ悪い悪い、俺が相手してやるから待ってろぃ。ウツリは下がっておいてくれ、あいつの能力の本質をはっきりさせたる」



「うう、分かった、無茶しないで!」



「アクウィスとやら、気になる事がみっつある

ひとつ、お前は何故頑なにそこから動かない? ふたつ、丸腰で無能になったノドカに何故トドメを刺さなかった? みっつ、スペリィ、ウツリさんが近くに寄ってきた途端、妙に口数が多くなってたな」



「……質問が多すぎる」



「そうか? 俺が聞いてるのはただひとつ、お前の能力の正体。だが少し目処は立ってるぜ、お前の能力には射程距離があり、恐らくその範囲内で発言した言葉に力を持たせる能力!」



トウカはおおよその予想はついていた、言葉、アクウィスは煽りっぽい口調で、質問調に責め立てるのは自分の能力に陥れる為。

アクウィスがノドカとスペリィを追撃しにやってこないのは射程距離があるからだろう、固定されたエリア内でしか発動できないのだろう。

そう考えれば辻褄が合う、記憶喪失に陥ったノドカは恐らく彼女のエリア内で「分からない」とか「知らない」とか言ってしまったのだろう。



「へぇ、鋭いじゃない、その通り私の能力は言葉よ。言葉の中には意思がある、言葉の中には力があり良かれ悪かれ人に影響を及ぼす。それが私の能力よ、トウカ、あなたの完璧有利というやつだわ」



「やったぜ、伊達にレイカの協力者やってねぇ。攻略は簡単、無言で近づいてあいつをぶん殴る! そして勝ちだぜ」



「す、すごいトウカさん! これであいつの能力に怯える必要はなくなった!」



跳ねて喜ぶウツリにキュンと心ときめかせ表情を緩めるトウカ、口を開けば「可愛い」「抱き寄せたい」などの紳士的な言葉が溢れるに違いない。

欲望は解放したいが、今先決は敵を倒すこと、即座にアクウィスへと見つめ直す。



「さあ行くぜ!」

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