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神が悪戯したこの毒の国で異能戦争  作者: 真鍋棒
2章『アンヴィー』
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10話「クランクハイト症候群 その1」

あの戦いから三日後。



場所は変わり、町「クークトース」

レイカが住む館の最寄の町であり、ここの病院にノドカとウツリ、それにレイカとスペリィは入院していた。

質素なつくりの古びた病院だが、医者の腕自体は確かなもので、ノドカ一行の傷はほぼ完治に至っていた。

病院の一室、ノドカ、ウツリ、レイカ、スペリィが集まったこの部屋、一人の少女の大声が「今日も」響き渡っていた。



「ノドカぁ! ごめんなさい、本当に、本当に私のせいで、私は悪魔だ! なんでもするから私、つぐなわなきゃ生きてはいけない!」



「ん……気にするな、三日連続で謝られても、俺からは何度も言ってるだろう、ウツリは何も悪くないって。レイカさんも、スペリィもそう言っている、もう暴走はさせないしな」



目を腫らして泣きながらおろおろとするウツリに、レイカとスペリィも笑みを向けてやる。

決して気を使ってるわけでも空気を読んでるわけでもない、皆が許容している、幸い悲劇にもならなかったことだし(体力的にはきつかったけど)



「さて、今日も可愛いウツリちゃんが見れたことだし、そろそろ本題に入ろうかしら」



レイカのみ、傷が深くしばらくは車椅子の生活になるようだが(当然車椅子もぼろい)

三日目にして全員の体調は良好、それを見計らってレイカは全員に話をもちかけた。



「で、レイカ様、話って一体?」



「ノドカ、ウツリちゃんにお願いしたいことがあるの、とても生半可なことじゃあないのだけれど」



「俺たち二人に、頼み?」



「前に話した……「暴走してしまう能力者を増やしている」者が居るって話、あったわよね、私は「神」と呼んでいるけど。その「神」を倒して欲しいの」



スペリィが茶を吹きこぼしてむせた。



「ゲッホゴホ……神を倒すって凄い文脈すぎませんかレイカ様!? ご、語弊がありますよ、もっとこう「能力神」とか、俗称みたいなの付けないと……ハードルめちゃくちゃ高く感じますって」



ノドカはスペリィの言葉に軽く頷き、レイカに話を振る。



「しかし、なぜ今急にそんな話を? 三日前のあのときから俺たちに頼もうと決めていたんですか?」



「うーん、まあそんなとこね、でも頼むか頼むまいかは半々だったわね。でも昨日、ノドカ達の力は必要になったわ……要請がきたのでね」



要請、というと遠くからの連絡がレイカのもとへ届いたらしい、が。

レイカが何か手紙を受け取ったり、やってきた馬車や文鳥も居なかった、一体いつの間に連絡のやりとりをしていたんだ? といった疑問をノドカが抱き、察したようにレイカは話し出す。



「ひとり、私の味方をしてくれる能力者が居てね、名前は「トウカ」彼の能力は遠くに居る人間にも連絡ができる……だから彼からの連絡を私は知り得たの。私と彼はその「神」をずっと探していた、居るのかどうかすら分からなかったけどね。けれども昨日、彼からついに「神が人間に能力を与える瞬間を見た」という事を聞いたの、存在していたわ、能力を与える神」



「遠くの人間に連絡ができる能力、ですか、レイカ様とはずっと一緒に居るけど、そんな人知らないな。ものすごく古い付き合いだと睨んだね私は」



「ずっとって……三ヶ月くらいでしょう、私とあなたの関係って。まあいいわ、お願いされてくれるかしら、ノドカ、ウツリちゃん」



腕を組んで少し考えるノドカ、対してウツリはレイカに顔を向け、強く言い放つ。



「私に断る権利はありません! 今回の借りは返しますから! 神を倒して借りは返す! ノドカ、私は私だけでも行く! 私、だけでも……」



私だけでも、という言葉、二言目はとても弱々しいものだった。しかも俯き気味、そんなウツリの姿を見て一人で行かせるノドカではない。



「慌てるなウツリ、俺も行く」



「ノ、ノドカぁ……」



「第一、俺がいなくちゃウツリを暴走から助けられないだろう? しかし、神を「倒す」ってのはどうも曖昧な表現じゃないですか、つまり「殺す」ってことですか? それとも捕らえるとか」



「そうね……話が通じるなら、和解したいものだわ、ウツリちゃんの異常な暴走のしかたも、どうにか治す手立てになって欲しいし。神の目的は未知すぎる、何が面白くて能力者を増やしているのかしら、その暴走で何人も犠牲になってる。相当素晴らしい理由でもないと、とても無事で済ますわけにはいかないと思うわ」



「レイカ様、あの、私もノドカ達とついて行っていいですか!?」



「は? スペリィ、何を言っているの?」



「あ、いや私もレイカ様の役に立ちたいんですよ、そ、それになんか、冒険みたいで楽しそうかな~っ……みたいな」



「俺は構わないけど……」



「私も、構わないよ」



レイカが頭を悩ませるより先にノドカとウツリの返答がやってきた。どうやら旅、いや冒険に出るのは三人になるみたいだ。



「私もこんな足手まといな姿じゃあなかったら一緒に行けたのだけれど。スペリィに私の分も任せるわ、行ってらっしゃい」



「や、やった! はい! がんばってきます!」



喜び飛び跳ね、ウツリとハイタッチするスペリィをよそに、ノドカはレイカに歩み寄り、懐から本を取り出す。



「レイカさん、父さんの本はあなたに預けてもいいですか、父さんが導いてくれたからこの出会いがあった。この本を書いたあなたのおかげで俺はウツリと真の意味で向き合えた……!」



レイカはにこり笑い、快くそれを受け入れ、受け取り、そうして一層笑顔を濃くしてノドカに告げた。



「これから冒険の旅へと向かうのに「泣いているんじゃあ」締まりが悪いわよ?」



「え? ノドカ泣いてんの!? うわほんとだ! 泣き虫だな~」



すかさずスペリィが茶化してくる、当のノドカ本人は自身が涙を流してることなど気づいていなかったが。



「う、俺はいつの間に涙を……気にしないでくれ。さあ日がくれない内に早く出発しよう、ウツリ、スペリィ」



「うん! 行こう、たしか「トウカ」って人に会わなきゃならんのだったね! レイカさんとみんなに借りは返さなくちゃあ!」



「あ、あれ私スルーかよ、あぁっじゃあ行ってきますレイカ様! 神ぶっ倒してすぐ戻ってきますからね! その間に浮気しちゃあイヤですよ!?」



慌ただしく病院を抜け、出発していく三人の背中を見届け、なおもレイカは優しい笑顔を見せ、ゆっくり肩を落とし、眠りに落ちた。



ふふ、ノドカ、ようやく親の死と、それを隠すっていう肩の荷が降りて、無意識のうちに涙を流しちゃったのね。

これであなたは無理して大人ぶった冷徹感を気取る必要もなくなった、年相応に頑張りなさい、応援してるわ、あなたみたいに静かに泣く男の人、好きよ。

……ノドカ、ウツリちゃん、スペリィ、頑張ってきて、私の分まで。

そして、多くの人を救う為に、神に抗うのよ、戦いはあると思うけれど、きっと大丈夫よ。

私たち四人は繋がっているもの……出来ないことは、無いわ。



場所は変わり、病院の入り口付近……長身の男、髪の毛先が天然カールで一種の蘭植物みたいになってるいわゆる天パの男性が一人。



「聞いた、ぞ……神を倒すとか、どうとか……困るぜ、そりゃあ……そうしたら、神から力を貰った俺は無力になる、ぜ。手放すかよ、能力を手放すかよ、一度特別を味わった人間は「元に戻るなんか望まねぇ」普通はな。俺は普通で、正しいと、思ってるぜ」



病院から町外れの荒野へ歩いていく三人の後を、彼はねっとりと尾けていった。



そしてノドカ達が町「クークトース」から旅立っておおよそ三十分。



「おっ大丈夫か大丈夫か」



そう発言したのはスペリィ、突然ノドカ達から離れて何かやっているもんだから、思わずノドカとウツリは声のした方に振り向く。



「スペリィなにやってるの~?」



「見ろよ、動物がすごい弱ってて動けないみたいなんだ」



「大きい猫だな、ヤマネコって奴か」



スペリィはこの大草原に、とても弱ってる山猫を見つけたのだ。



「熱があるみたいだ……病気みたいだなぁ、でもあたしたち、それをどうにかできる持ち物はもってないぞ……」



「スペリィ、かわいそうだが放っておいた方がいい、大自然で生きてきた動物だ、自分でなんとかできるすべは持ってるだろう。そして何より、周りを見てみてくれ」



ノドカはスペリィそしてウツリに、周囲に気をつけることを告げる。彼ら三人の周り……そこには。



「ウ、ギ……」


「ウグルル……」



4、5体ほどの魔物が居たのだ、だが普通、人間に襲いかかる彼ら魔物には、今少し異変がおきていた。



「ノドカ、あの魔物たち、弱ってるみたいだ……ちょうど今スペリィが介抱してる山猫ちゃんみたいに。何が起きてるんだろ……」



「わからない……流行り病かもしれないな、俺たち人間に影響が無いって保証は無いしさっさと通り抜けてしまおう。スペリィ! 病気が移ったら困る、はやく行こう」



「う、わかったよ、ごめんな山猫さん、少ないけど水あげるよ。途中で採れた木の実も置いておくから、魔物に奪われないようにな? ばいばい!」



「オォン、ニャオン……」



すたこらと歩みを進める三人、だが恐ろしいことに、歩みを進めれば進めるほど、辺りには弱ってる動物や魔物が増えて行くのだ。

極めて異常だ、天気は快晴、風も心地よいそよ風なのに関わらず、魔物や動物は皆「風邪」に近い症状を患っていた。



「の、ノドカぁ、私ちょっと怖いよ……」



「安心しろウツリ、とりあえず魔物や動物には近寄らない、この先の町に着けば原因が分かるかもしれない」



「ノドカの言うとおりだな、下手にパニックになっても原因がわからんのではどうしようも……(動物だいすきだからちょっと撫で回したいけど)」



結構のんきしている三人に、地響きを鳴らしながら突っ込んでくるものがひとり!



「ウゴッボオオォォォ!!」



魔物だ、霊長類型魔物、ゴリラに近い容姿のソイツが、つっこんでくる!

ヨダレと鼻水を垂らし、全身を赤く腫らしている!



「うおあぁぁ! あたしらの方にくるぞノドカウツリどうするぶっ飛ばすか!?」



「うん! スペリィ、協力しよ! くらえ! ロングカーマー!」



ロングカーマーとは、ウツリの武器、鉄製の鎌の刃を伸ばして相手を切り裂くわざだ!



「おうよ、ウツリと協力すんのは初だな! ベヌヴァイブクロウ!」



続いてスペリィの振動する爪の攻撃、ベヌヴァイブクロウ(ベノム(毒)バイブ(振動)クロー(爪)からきている名前だ、かっこいいね!)



「あたしの振動爪をウツリの鎌にぶち当てる、するとぉ~、振動が鉄を伝わって超振動の斬撃攻撃と化すわけだ!」



スペリィの振動爪は鉄をも切り裂く威力だ、それがウツリの鉄を伝われば相乗効果! 魔物の体を切断するなど、たやすい!



「ウギエエーッ!」



そうしてその魔物を仕留めた。

走ってきた勢いのままにその体は地面にドサっと落ち、迷惑なことにノドカ達のすぐそばに配達されてきた。

しかしノドカ、妙なことがこの魔物に起きていることに気がつく。



「ヘンだな、この魔物……皮膚がただれている、そして指先が血で滲んでいるな……

掻きむしった後ということか、どこぞで蚊にでも刺されたかな、かわいそうだが、攻撃してきたのはお前だからな」



「今日はほんと、変な日だよねぇ、魔物や動物にとっては厄日だよきっと」



「ほんとになぁ、あのゴリラも一種の病気にかかっていたりしてな」



その瞬間、ノドカ一行の背後に物音が。



「じんま疹、だぜ……9さいのときにかかった、地獄の痒さだった、ぜ。そりゃあ魔物も暴れたくなる気持ちも、わかるぜ。まあスズメバチに刺された時の方が辛かったがな……」



スペリィの言葉に呼応し、何者かが応える。

それはノドカでもウツリでもないのだ、彼らの背後から尾けてきたのであろうその男は、後ろから現れた。

やや長身で、するどい目つき、毛先がくるくるっとした髪の男。



「誰だ? たった一人、丸腰でフィールドを歩くなんて……危険だぞ。俺たちと一緒に町まで行くか?」



初対面に対して結構友好的なノドカとはうらはらに、スペリィはノドカを押しやりその男の前に立つ。

眉間にしわをよせた、友好的とは遠く離れてしまってる表情と共に。



「待ちなノドカ、こいつ、病気に詳しそうだったぞ。それに魔物が居て危険なフィールドを余裕そうに猫背で歩いてくるとは……能力者なんじゃあないか? あん? 名を言ってみろ!」



スペリィの言葉にニヤリと少し笑い、その男は近づいて来る歩みを止め、名を名乗る。



「俺は、ザリング・アバンチ・ナイテッド」


挿絵(By みてみん)




「随分素直に名乗ったな、しかしそのわけわからん態度、ますます怪しい! 私は動物と多く戯れてきたからわかるぜ、悪いやつといい奴は直感で、においでわかる、お前は怪しさ抜群の悪者野郎だ!」



「スペリィ落ち着いてよ! 何か事情があるかもしれないでしょ? 病気に詳しいのは、今起こってる魔物や動物の弱ってる原因を知ってるからかもしれない、まずは話を聞こう!」



ウツリの制止を聞き、肩で息をしているスペリィは少し冷静になった。



「俺の話を聞いてくれるのかい、そうかい、じゃあ聞いてくれや。お前らよぉ、神をぶっ殺しにいくのはやめろや、トウカって奴にも会わせはしねぇ」



「なんだと? お前、なぜ俺たちの目的を……」



「聞いてたのさお前らの病院での話をよ~、俺もまた神から能力を授かった者の1人なのさ。だがよぉ、あの女を倒すとかつまんねぇ事はやめろ、理由なんて聞くんじゃあねぇぞ、俺が気にくわねぇからだ、人を否定する理由はそれに尽きる」



なんということだろう、ノドカ達の目的に反抗意識を持つものが1人。

ザリング・アバンチ・ナイテッド(略してザリングAK)は能力者であり、ノドカ達の邪魔をしてくるというのだ(なんとも身勝手な理由で)


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