第七話 鍋パーティで皆しあわせ
時間はソーマ達が町へ到着した頃へ遡る。
塩と砂糖を取引している商家へと卸した二人は、その足で町の市場へと足を運んでいた。
理由は、塩と砂糖以外の品物を売る為だ。
主にガラス用品、食器などを市場の許可を貰って露店で並べる二人、その見事な美しさに並べる傍から見物人が現れる。
この世界での食器は、主に木製が主流だ。
貴族や商人レベルになると陶器の食器類が使われる。
王族になれば更に豪華な食器が使われるのだが、二人が並べているのはシンプルだが形も色合いも見事な食器の数々。
しかもどの食器もグラスも形が完全に同じという驚き。
なんだこれは素晴らしいどこの国の品だと、見物人がざわめく。
「どうぞ、手に取ってご覧ください。どれも一流の職人が精巧に作り上げた物です」
正確には一流の機械と職人が精巧に量産した物だが。
この世界に大規模生産とか大量生産という言葉はまだまだ広がりが薄い。
その為、ハルア達が並べる品物がどれだけ凄い物か、正確に認識出来るのは一流の商人や貴族だけだろう。
「まぁ、ガラスの食器をこの値段で?」
「数を作ることで値段を下げて売れる数を増やす、という商売方法の一つと旦那様は仰っておりました、値段にも品質にも嘘はありませんよ奥様」
買い物中の主婦が、ガラスのグラスを手にして驚いている。
ミシュが並べる値札の金額に思わず声が出てしまったのだろう。
ハルアの説明に、凄い商売方法もあるのねぇと感心し、この値段なら記念に買っちゃおうかしらとお買上げ。
一人が買うと連鎖的に購入者が出るのはどの世界でも同じなのか、私もグラスを、私は食器を、俺はこの置物を!と次々売れだす。
「購入したグラスで、あちらのお酒など飲んでみては如何でしょう、気持ちよくお酒が飲めると思いますよ」
やり手の両親の教育と、やり過ぎた故に恨みを買った理由を知っているハルアは、周りのお店、特に酒や果実水を売る店を紹介。
ノリの良い客がそれはいいとマイグラスで酒を注文し、気持ちよく飲み干すと、真似をする客が続々出てくる。
これには酒を売っていた露店もホクホク笑顔で、二人に果実水をプレゼントしてくれた。
「商売上手だねーハルアは」
「散々叩き込まれましたからね、両親に」
ミシュの感心の言葉に、苦笑するしかないハルア。
確かに両親はやり手で一度は商隊を組める程に規模を拡大したが、急速に業務を拡大した事とその際に周りを蹴落としたり押しのけたりしたため、要らぬ恨みを買ってしまった。
それを体験しているが故に、逆に周りを巻き込む形で売上げアップを考えるハルア。
ソーマにも相談し、許可を得ている。
元々そんなに数を用意していないので、今日の分の食器やグラスを殆ど売り捌いた二人。
塩や砂糖での利益に比べれば低いが、それでもこれだけで数日間遊べる額が稼げた。
「ご主人様、もう完全に商売はハルア任せだねー」
「感謝してもしきれません、ろくな商売の経験もない商人の娘の私に、こうして大事な取引や商売を任せてくれるのですから」
奴隷に商売を任せるのは珍しい事ではない、店の売り子や御用聞きなどの仕事に限れば、だが。
ソーマのように商家との取引から露店の商売まで全て任せているのは流石に居ない。
ハルアに全て任せているのは、元手が0故に損失が出ないので困らないし、経験が無いなら積ませればいいという考えだ。
もし何かあれば主人である自分が出れば良いから、どんどん好きに商売しろとソーマのお墨付きである。
手早く片付けを始めて、さぁ帰ろうかというところで市場の入り口から大勢の人が駆け込んできた。
鎧を着た、この町の衛兵達だ。
「何かしら?」
「捕物でもあるんでしょうか…」
何事かと首を傾げる二人や、買い物客達。
「あいつらよ!詐欺師は!」
「「え?」」
その集団の先頭を走っていた女が、なんとハルア達を指差して詐欺師呼ばわりしてきた。
突然の事に戸惑うしか無い二人、その間に衛兵が彼女たちの周りを取り囲んでしまう。
「第二詰め所の衛兵隊隊長、ホンダルだ。お前達が詐欺を働いたと通報があった、話を聞かせて貰おう」
責任者である衛兵が前に出てくる。
「はぁ?私達が…?」
「あの、何かの間違いではないでしょうか」
心当たりなんて一切無いミシュは怪訝そうな顔で、ハルアは誰かと間違えているのではと冷静に対処する。
「こちらの者が、お前達が純度の高い塩だと嘘をついて砂を売り付けたと被害を訴えている」
「なにそれ!」
「そんな事ありません、私達が売っている塩は旦那様の故郷から持ってきた正真正銘の塩です」
衛兵の言葉に、憤慨するミシュと、毅然とした態度で否定するハルア。
「嘘おっしゃい!私が買った塩はただの白い砂だったわよ!奴隷が商売なんてしてるから怪しいと思ったのよ!どうせ今も盗品か何か売り捌いていたんでしょ!」
被害者だと名乗る女が、大袈裟なまでに大声で被害を訴える。
ミシュは怒り心頭だが、ハルアは冷静だった。
商売をしてると出てくる輩と同じだと理解したからだ。
無実を証明して逆に訴えてやろうと考えたハルアだが、その時衛兵の外側に見知った顔を見つける。
「だ、旦那様…!」
「ご主人様ぁ…!」
「どういう状況だこれ…」
運が良いのか悪いのか、主人であるソーマが現れてしまった。
この時ハルアが想定した最悪のパターンは、ハルア達が勝手に詐欺を働いたと思われる事だ。
ソーマは裏切りを絶対に許さない、彼を裏切った物の末路をミシュ達から聞いているからハルアは恐れた。
勘違いとは言え、ソーマに、自分に奴隷という立場でありながら商売をさせてくれる理想以上の主人に。
裏切ったなどと思われる、そう想像しただけで背筋が凍る。
ミシュも勘違いされたらと想像したのだろう、血の気の引いた顔で、腰の鉈に手を掛けている。
ふざけた濡れ衣を着せてくる女の頭をかち割ろうと考えているのだろう。
このままでは不味いと頭の冷静な部分で必死で考えたハルアは、一度大きく深呼吸して姿勢を正した。
「お帰りなさいませ旦那様、お仕事お疲れ様です」
「お、おう…」
先ずは従者、奴隷として主人の出迎え、これは必須。
「ミシュ、挨拶しなさい」
「…え、あ、うん、おかえりご主人様…」
「そして申し訳ありません、どうやら厄介な者に絡まれてしまったようです」
「ふぅん…」
「お前がこの奴隷達の主人か!詐欺の疑いがある、大人しく詰め所まで着いてこい!」
頭を下げるハルアに、周りを見渡すソーマ。
そんなソーマに衛兵の隊長が焦れたのか連れて行こうとするが、当然ソーマは受け入れない。
受け入れる必要がないからだ。
「こっちはブラッドベアの討伐で疲れてるんだ、話ならこの場でも良いだろう」
「何…っ」
「た、隊長、東門の衛兵隊から、ブラッドベアを討伐した冒険者が入ってきたと報告が入っております…恐らく本当でしょう」
ソーマの言葉にたじろぐ隊長、部下の報告に冷や汗が流れる。
ブラッドベアを倒せる冒険者が相手では、衛兵が何人居ても相手にならないだろう。
何せ町の近くに出現した際は500人規模の兵士を招集する相手だ。
衛兵10人程度では相手にならない。
「それで、その詐欺ってのはどんな内容なんだ」
死んだ目でギョロリと隊長を覗き込むソーマ、ブラッドベアを討伐した冒険者という情報と、目の前に不気味な威圧感を放つソーマに冷や汗が止まらない隊長。
「こ、この者がその奴隷達から買った塩が、砂だったと証言している!証拠の砂も提出されている、く、詳しい話を聞くためにだなっ」
「ハルア」
「はい」
隊長の言葉を遮って、低い平坦な声でハルアの名前を呼ぶソーマ。
自分の名前を呼ばれた訳でもないのに、ゾッとする周囲の面々。
ミシュとヒュリアは顔を青くしている。
だがハルアは気丈にも姿勢を正したまま、確りとを答えた。
「本当の事だけ話せ」
「はい、恐れながら、詐欺の件は全てそちらの女性のでっち上げでしょう」
「なっ!しらばっくれるんじゃないわよ!売られた塩がほら、これ砂じゃないの!」
被害者を名乗る女が、持っていた小さな樽から白い砂を手にして被害を訴える。
それを、クスリと冷徹な笑みを浮かべるハルア。
「お客様、申し訳ありませんがその塩はどちらでお求めになったのでしょうか?」
「バカにしてんの!?アンタ達がここで売ってた塩じゃない!」
「それはおかしいですね…私達は確かにここで商売はしておりましたが…塩は売っておりませんよ?」
「は…?」
ハルアのきっぱりとした言葉に、唖然とする女と衛兵達。
「周りの露店の方々にお聞き下されば分かることですが、私達はこの場ではガラスや陶器の食器などしか販売しておりません」
「う、嘘言うんじゃないわよ!アンタ達が塩を売って稼いでるって!」
「えぇ、塩も砂糖も取り扱っております。ですが…それは商家の方とだけで、一般の方には販売しておりませんよ?」
ハルアの言葉に、沈黙が通り過ぎる周辺。
「商家の方とはこうして、契約書も交わして商売をさせて頂いております。もし貴女がその商家の方であると言うなら、当然契約書がありますよね?」
塩と砂糖は希少品故、販売の際は必ず、貴族が相手でも契約書を書いて頂いておりますと頭を下げながら宣言すると、顔色が悪くなる女。
事実、ハルアが一番最初に塩を売り捌いたのも、商家同士が集まる商家市場の方だ。
交易都市でもあるシャランポには色々な商人が集まる、その商人同士が商売をする市場が、今居る場所とは別に存在している。
商人なら誰でも入れるし、商人以外も入ることは出来るが、あくまで商人同士の交渉の場なので、買い物には向かない。
買いに来るとすれば、大きなお店、宿や料理やなどの量が必要な人だけだ。
所謂、問屋とか仲卸市場とかの、専門家が出入りする場所だ。
「大方、私達が奴隷で、真っ白い塩を売っていると聞いて、詐欺師に仕立て上げて売上を頂こうとしたのでしょうが…如何でしょう旦那様、私達の無実を信じて頂けますか?」
詐欺師に奪われた金は、詐欺師が捕まった場合全額返金される。
勿論、衛兵または冒険者に依頼した依頼料は徴収されるが。
高純度の白い塩の売上となれば莫大だ、それをでっち上げの罪で奪おうとしたのだろう。
「あぁ、良い子だハルア。少しでも疑った俺が悪いな、後で何でも買ってやろう……それで、誰を捕らえれば良いか理解出来たかな隊長サン…?」
ハルアを頭を撫でながら、ギョロリと死んだ目で隊長を睨みつけるソーマ。
「は、話を聞く必要があるのはこちらのようだな!連れて行けっ!」
「ちょ、話が違っ、離せっ、離しなさいよっ!」
隊長が慌てて被害を訴えていた女を連れて行かせる。
そして自分も撤収しようとした所で、ガシリと肩を掴まれた。
万力に掴まれたようなその握力に、完全に動きを止められてしまう隊長。
「小遣い稼ぎも程々にしないと…首と身体がお別れするぞ」
ゾッとする声と、ギリギリと肩を破壊しかねない握力。
それから開放された隊長は、ソーマの方を見ずに逃げる様にその場を後にした。
「マスター、どういう事でしょう…」
「大方、あの隊長もグルだったんだろうな。でなきゃ詐欺訴えた程度で衛兵が動くものか」
「ではっ」
「あぁ、後で適当な奴にチクっとくか…大変だったなハルア、ミシュ」
「ご主人様ぁ!」
「旦那様…!」
緊張の糸が切れたらしい二人を抱き寄せると、周りで様子を伺っていた野次馬から歓声が上がる。
口々におかしいと思ったとか、あの衛兵隊長は前から怪しかったと話題が広がっていく。
ソーマが何かしなくても、衛兵内で勝手に処罰されるだろう話の広がりっぷりだ。
「アンタ凄い奴だな、一杯ご馳走するよ!アンタの奴隷のお陰で今日は売上が良いんだ!」
近くの露店の酒屋が、酒を一杯差し出してくる。
ハルアのお陰で売上が良かったお店だ。
「ご馳走になるよ……そうだ、夕食はここで鍋をするか」
「ナベ…ですか?」
「なにそれ、カレーより美味しいの?」
「熊ナベと言ってましたね…ブラッドベアの肉を使うのですか?」
食に関しては信頼性抜群のソーマの言葉に、ワクワクし始める3人。
「お騒がせした、お詫びにここに居る全員に、ブラッドベアの肉を使った料理をご馳走しよう!」
死んだ目ながら両手を上げてご馳走を振る舞うと宣言すると、周りの野次馬が沸き立つ。
ブラッドベアの肉は、高級食材として一般人の間でも有名だからだ。
「さて、準備するか。手伝ってくれ」
「「「はいっ」」」
珍しく上機嫌なソーマに、三人も嬉しくなって弾んだ声で答えた。
日が暮れ始めた市場の片隅で、野外用コンロを複数並べ、その上にホームセンターで売られている一番大きな鍋がコンロの数だけ並んでいる。
その鍋の中には、市場で買い求めた野菜、人参のようだが色が薄い野菜とかキャベツっぽいのに白菜みたいな食感の野菜、ネギと玉ねぎが合体したような野菜などが、ざく切りにされて入れられていた。
そこへ、解体所から持ってきたブラッドベアの肉を切り分けて入れていく。
ギルドとしては高く売れるブラッドベアの肉を売って貰えなくて悲しそうだ、解体料だけ支払って帰るソーマの背中を切なげに見送っていた。
体長3mを超える巨体だ、肉は大量にある。
肝や心臓などの臭みが出る部位は避けて、切り分けられた部位を丁寧に処理しながら鍋へ入れていく。
「ここで登場、魔法の味キューブ」
そう言ってソーマが取り出したのは、それ一つ入れるだけで好きな鍋に出来る味の塊。
それを一つの鍋に複数入れて行く、一つで一人前だから大鍋一つに8個位は必要になる。
「わぁい、カレーの匂いもするぅ」
真っ先にカレー味の鍋に食いついたミシュ、その他にも基本となる寄せ鍋の醤油味、鶏出汁の塩、白湯スープにキムチ味、とんこつ味噌なんて変わり種もある。
ブラッドベアの肉の味が強いので、少し多めにキューブを投入。
やがて辺りに良い匂いが充満してきて、ブラッドベアの肉をご馳走して貰えると聞いた野次馬達の腹が鳴り始める。
良い感じに煮えた所で、紙のお椀を出してミシュ達におたまを渡し、炊き出しのように配らせる。
お椀に入れる比率は肉3に野菜7だと伝えて。
「こりゃうまい、なんだこのスープ!」
「肉の味に負けてないな、スープだけでパンが食えそうだ!」
と、スープの味に驚くもの。
「ほおおおぉ、これがブラッドベアの肉か」
「森の荒神の肉が食えるなんて、夢みてぇだな」
煮込まれて柔らかくなったブラッドベアの肉と、スープに溶け出した脂。
その肉をありがたやありがたやと拝む勢いで食べる老人たち。
一緒に煮込んだネギと玉ねぎが合体したような野菜のお陰で、臭みも良い具合に消えているようだ。
と言うか、殆どの人が臭みを気にしていない、アルトボアの肉も割りと臭いがキツいのだがご馳走だと言われているので、慣れているのかもしれない。
普通、熊肉は熱を通すと固くなるのだが、ブラッドベアの肉は歯応えの良い牛肉のような食感の部位が多い。
一部、腕や足の肉は硬いので、煮込まずに焼くことにしたが、正解のようだ。
焼いている肉には、焼肉のタレをたっぷり使っているので若い男性に非常に人気が高い。
「まだまだあるから押さないでー!」
「おわかりを希望の方は器を捨てないで下さい」
「はい、落とさないでね」
大声を張り上げるミシュ、せっせと器に掬い入れるヒュリア、並んだ子供に優しく手渡してあげるハルア。
ソーマはバーベキューセットで焼くのに専念している。
「喉が乾いたらウチで冷えた酒はどうだい!」
「スープに付けて食べると美味しいパンもあるよー!」
すると、周りで商売していたお店が便乗して商売を始める。
特に、カレー味のスープとパンが絶妙に美味しいと評判でパンが飛ぶように売れている。
焼き締めているパンなのでスープに浸して柔らかくするのが当たり前なのだが、それにカレー味が一番合うらしい。
2番人気は濃厚な白湯スープの模様。
一通りの人に行き渡った後は、突発的なお祭り騒ぎ。
ブラッドベアを討伐し、その肉を振る舞ってくれた英雄に乾杯といつの間にかソーマが英雄になってしまっていた。
「くぁ~、このナベってカレーも美味しいぃ~」
「ミシュ、ナベとカレーは別物ですよ…聞いてませんね」
カレー好きのミシュ、配り終えて即効でカレー味の鍋に手を伸ばす。
ヒュリアは塩味、ハルアは白湯味に手を伸ばしている。
「旦那様、どうぞ」
「おう。今日は大変だったな」
具材をたっぷり入れた器を手渡してくれるハルアに、よく冷静に対処したなと褒めると、父の代からあの手のタカリや詐欺師は見てきましたからと苦笑する。
あの手の輩はどんな商売でも出て来るらしい。
「塩と砂糖を商人にしか売っていなかったのが幸いしました、露店で売っていたらややこしい事になっていたでしょう」
「あの手のクズは何処にでも居るからなぁ…俺も苦労した」
ケッソ王国時代に自分を騙した商人を名乗った詐欺師を思い出す。
騙された後で速攻で仕返ししたが、まだ生きてるのだろうかと。
「熊の肉だから硬いかと思ったが意外とイケるな…」
「はい、とても美味しいです。流石は旦那様、この様な物まで扱っているとは…」
一個入れるだけで確り味が出るキューブ、正に魔法の代物だ。
自らの主人を褒め称えるハルア、その姿勢は既に崇拝に近い。
今回の件でも、ソーマは自分を信じてくれた。
ちゃんと合理的な理由があるからという面もあるが、それでもソーマは奴隷の自分を信じてくれた。
それがとても嬉しくて、ハルアは自然とソーマに寄り添った。
周りはお祭り騒ぎ、見たこともない鍋の味に興奮していてソーマとハルアを見ている者は居ない。
「旦那様…」
そっと頬に口づけしてみる、ミシュやヒュリアが時々やっている事の真似だ。
普通ならなんて失礼な事を!と思うような事だ。
だがソーマはそれを受け入れ、更には頭を撫でてくれる。
ミシュのような態度も行動も全て受け入れてくれる、理想過ぎる主人。
失いたくないと思った。
傍に居たいと思った。
打算も感情も全て混ぜ合わせて、一緒に居たいと思った。
「旦那様、今夜は……ね?」
色っぽく、自分が出来る精一杯の媚びた声と視線で、おねだり。
「熊肉は精力が付くらしいからな……泣いても知らんぞ」
「望む所です…♪」
立派なたわわに主人の腕を挟んで、ペロリと唇を舐めるハルア。
ソーマは内心あざといなぁと苦笑しながら、熊肉を口に入れた。
程よい弾力と旨味の強い脂が溶けて、極上の味だった。




