第五話 商売するよ!奴隷が!
シャランポの街に来てから一月と少し。
ソーマにとって3度目となる奴隷市で、今回は少し真面目に奴隷(人材)を探していた。
と言うのも、毎日のように害獣系の魔物やギガントターマイトなどの昆虫系の魔物を狩っていた為、近隣の森から獲物が減ってしまったのだ。
冒険者と言うのはイメージ的に毎日魔物を狩って生活している様に思えるが、そう言うのはお金が無い駆け出しか、借金背負った者だけで、中堅所の冒険者などは2日に1回、3日に1度などの頻度で仕事をしている。
肉体が資本の仕事だ、毎日魔物の討伐なんて身体を痛める原因になる。
それ故、数日間食って遊べる金を稼いで減ってきたらまた仕事というサイクルの冒険者が多いのだ。
酒場やギルドで飲んだくれている冒険者が多いイメージなのはこれが原因。
で、お金に困っている訳ではないのに毎日率先してギガントターマイトなどを狩るソーマ達はどう見られるか。
命知らずの大馬鹿野郎である。
複数の中堅冒険者がパーティー組んで相手するようなギガントターマイトやフォレストベア、アルトボアをたった3人で毎日狩ってくるのだ。
アイツら頭やべぇ、関わらないようにしようぜとなるのは自然な流れだった。
因みにフォレストベアは中堅冒険者が一人で相手出来る限界と言われ、アルトボアは上級の冒険者の登竜門と言われている相手である。
それを罠と毒餌を使っているとは言え、3人で狩るのだ、そりゃ畏怖される。
おまけにリーダーのソーマは目が死んでてなんか怖いし、残り二人は異様に綺麗で良い匂いのする奴隷である。
訳ありだ、下手に関わるとヤバイと、危険察知能力が大事な冒険者、流石の回避能力である。
危機管理能力のない低レベル冒険者がミシュ達をナンパしようとして叩きのめされたエピソードなんかも伝わって、今では触るな危険状態とも言う。
逆にギルド側からた優秀な冒険者として好評だ、厄介で危険なのに受注者が少ないギガントターマイトや、被害が大きくなるアルトボアなどを率先して狩ってくれるのだから。
因みにギルドの依頼は、規模や被害が大きくなると領軍へと引き継がれるが、その際に多額の依頼料が発生する。
軍隊が動くのだから当然と言えば当然だが。
その為、出来ればギルド内で処理したいのだ。
ギガントターマイトの被害は言うに及ばず、アルトボアの被害もバカにならない。
連中は巨大な猪みたいな魔物で、一匹で畑を全滅させる程の害獣である。
おまけに突進力は木を圧し折る程の威力で、冒険者の被害も多い。
代わりに肉が美味いので、それなりに人気なのだがやはり強いので中堅冒険者PTか上級冒険者の獲物となる。
シャランポの街でアルトボアを単独で狩れるのは、ソーマ達を除けば数人しか居ない。
で、そんな獲物が減る、ギルド的には良いことだが冒険者的には仕事がない事になる。
ソーマ達が狩っている獲物以外を狩っている連中には関係ないが、同じ獲物を狩っていた連中が仕事がないとギルド内でブータレているのだ。
これを小耳に挟んだソーマが、パワーレベリングし過ぎたかと少し反省して、仕事の比率を商売へ傾ける事にした。
以前は5日狩りして一日完全休み、一日半休でその半休の時に塩や砂糖、整形された木材や異様に強化されている大工道具などを売り払ってお金にしていた。
実は一切魔物を狩らなくても数ヶ月遊んで暮らせる額をその半日で稼いでいたりする。
別にお金に困ってはいないが、あって困る物でもない。
それに大商人や貴族に渡りを付ける手段にもなる、ケッソ王国での経験だ。
貴族や商人と懇意にしていたから、あの糞ギルド長を処刑に追い込めたのだから。
そんな訳で魔力さえあれば無限に生み出せる塩や砂糖などを売って商売しつつレベリング対象が増えるのを待つ作戦に切り替えた。
そしてソーマは、このタイミングで奴隷を増やすことにした。
求めるのは技能奴隷、戦闘以外に、商売や政務、または魔法などの技能を持つ奴隷である。
数は少ないが偶に居るのだ、商売失敗して借金背負った奴隷や、政戦に負けて奴隷落ちした人、研究に集中する余りに借金こさえて奴隷落ちしちゃった魔法使い等が。
で、宿の女将にそういう奴隷扱ってる奴隷商を教えてもらい、奴隷市へとやってきたソーマ達。
「すまない、技能奴隷を専門に扱っていると聞いて来たんだが」
「これはこれはようこそ、えぇえぇ、ウチはご覧の通り技能持ちを専門に扱っておりますよ」
他の奴隷商の様に、荷馬車の上に奴隷を座らせている露店スタイルではなく、テントを張ってその下に奴隷を並べているスタイル。
並んでいる奴隷も、他の労働奴隷と違って身嗜みが確りしていたり、見たまま魔法使いぽかったり。
年を取っている奴隷が多いのは、やはり技能職だからだろう。
「商売の技能と言うか、元商人などが居たら見せて欲しい」
ジャラリと金貨と銀貨の入った袋を鳴らせて欲しい奴隷を見繕って貰う。
わざと音を鳴らせたのは、ちゃんとお金を持ってて冷やかしじゃなくて購入者だという宣言でもある。
「少々お待ち下さい、今集めて参ります」
奴隷商が部下の男性に、奥のテントから数人連れて来させる。
連れてこられたのは5人、男性3人に女性一人、そして少女が一人。
男性3人は気持ち悪い位の笑顔を浮かべている、なるほど確かに商人の笑顔だ。
「こちらの4名は商売に失敗した借金奴隷ですが、それなりの商売経験がございます。こちらの娘は商人の娘で、両親が残した借金から奴隷になった者で、経験も親の手伝い程度ですが一応連れてまいりました」
頭を下げる5人、男性3人は笑顔の裏に「なんだ若造が相手か、上手く乗せてやれば自由になる踏み台になりそうだ」というオーラが感じられた。
女性は何を考えているか分からないが、ソーマの悪女殺すレーダーに反応したので論外。
残りの少女、ミシュ達と同い年…にしては胸とかが育っている、商人の娘と言う話だし元は裕福な家庭で育ったのだろう。
商売を担当させる事を考えたら経験者が欲しいので男性3人から選ぶのだが…どうにも嫌な予感がするソーマ。
「どんな商売をしていてどうして失敗したか聞いても?」
「えぇ、結構でございます。順番にお答えしなさい」
奴隷商の言葉に、端から順番に自慢げにどんな商売をしていたか語りだす元商人。
だが失敗した部分は誤魔化している辺り、信用が出来ない。
次の商人はやたらソーマを持ち上げる、貴族のボンボンか成り上がりの冒険者かと判断しての持ち上げだ。
つまりは、商売の才は無いだろうから私が代わりにその資産で商売してやるよ、と言ってる様なものである乱暴な言い方にするとだが。
3人目はチラチラとミシュとヒュリアを見ながらごまを擦ってくる、どうも二人の身綺麗な様子から娼婦を斡旋する仕事だと勘違いしたらしい。
そして女性、やはりレーダーは正しかったらしく、猫なで声でアピールしてくる、言外にそんな小娘より~みたいな言葉を察した時点でソーマはもう聞く気がなくなった。
あとミシュとヒュリアが言外の言葉を感じ取ってビキリと青筋を浮かべているのを気配から感じた。
「ハルアと申します…両親は主に塩や胡椒などの商いを行っていました。その手伝いで知識はありますが自立しての商売経験はありません…。あまり関係ないとは思いますが、一応魔法が少し使えま「採用」――え?」
「採用。この子貰うよ」
「よ、宜しいのですか?商売の経験はありませんが…」
ハルアという少女の言葉を遮って、即決するソーマ。
奴隷商が戸惑うが、彼に貨幣の入った袋を渡して問題ないと断言。
「別に商売の経験とかどうでもいいんだよね、人間的に信用できるかどうかが問題だし。失敗した理由聞いてんのに誤魔化したり持ち上げたり勘違いしたり、そもそも利用する気満々な時点でその4人は論外だから」
ギロリと死んだ目で4人を見ると、冷や汗を流して顔を青くしている。
つまりソーマの言ったことが図星だったという証拠。
「逆にこの子はちゃんと正直に話したし、魔法が使えるってのもポイント高い。彼女の借金も全て支払うよ」
「わ、分かりましたっ、おい書類を持って来い!」
即金で全額支払うと金貨の入った袋を見せると、奴隷商が慌てて対応する。
選ばれたハルアはぽかーんとソーマを見つめており、残りの4人は悔しげだ。
借金背負った奴隷なのだから、それ相応の態度で居れば可能性はあったろうに、やはり商人だっただけに欲が強いのだろう。
購入の書類にサインし、ハルアの奴隷紋にソーマが主人であるという証を刻む。
奴隷紋は基本的に首に鎖のような紋様が浮かび、色で状態を示す。
青が労働、黄色が借金、赤が犯罪である。
そして白は主人が居るという状態だ。
逆に黒は主人から逃げた逃亡中という扱いで、主人から離れすぎると黒く染まる。
ハルアの奴隷紋が白くなったのを確認し、彼女を連れて奴隷商を後にする。
「ご主人様、この後はアレ?」
「アレなら森へ行かないとですね」
乗り気なミシュと、嬉しそうなヒュリア。
新入りのハルアはアレの意味が分からず、自分は何をさせられるのだろうとオロオロしている。
「商売の基本は身形と態度から。綺麗になってもらうぞ、ハルア」
「え…えぇ…っ」
ソーマの言葉に、ただただ戸惑うしかないハルアだった。
「あふぇぇ……」
言葉にならない蕩けた声を上げるハルア、彼女の立派な胸部がお湯に浮いている。
ドラム缶風呂に入れられた彼女の様子を、そうだろうそうだろうそうなるだろうと頷いているミシュとヒュリア、今回はお風呂はお預け。
ソーマはソーマで、スレンダーなミシュとヒュリアでは味わえない洗い心地に謎の達成感を感じていた。
ハルアの胸は、間違いなく巨乳枠にエントリー出来る、と。
「ご主人様?」
「ヒュリア達の胸ではご不満ですか?」
怒りのオーラを滾らせる二人に、何故考えている事が分かった、と戦慄するソーマ。
誤魔化し代わりにナッツが入ったチョコ菓子を出してご機嫌取りをする。
女というのは例え子供でも鋭いのだ。
「あの、旦那様…私はどんな仕事をすれば良いのでしょうか…」
二人の怒りのオーラに正気に戻ったのか、胸を隠しつつ問いかけるハルア。
なお腕でぐにゅりと形を変える肉体、逆に隠した方がイヤらしいという謎。
「基本的には商売だな、俺がアイテムボックスから出す塩や砂糖を売り払って欲しい」
現在は面倒くさくて適当に売り払っているのだが、若干足元を見られている。
それにそんな価格で売るならウチで!と別の商家が突撃してきたりして面倒くさいのだ。
なので商売の知識があるハルアに担当して貰おうと考えているソーマ。
「だが、魔法が使えるんだったな。主にどんな魔法だ?」
「は、はい、えっと、主に風の魔法と水の魔法です。あまり数は多くありませんが、この辺の低級の魔物なら相手出来るかと…」
ハルアには家で待機して貰ってその間冒険者家業をやろうかと思っていたソーマだが、魔法が使えて戦えるとなると話が違ってくる。
「戦えるなら、冒険者の方もやってもらうか…心配するな、無理な事はさせん」
と死んだ目でお湯に浮かぶ白いたわわをガン見しつつ告げるソーマ。
ハルアは真っ赤になりながらも、おずおずと手をどかしてたわわな2つを開放。
技能奴隷として買われたが、主人が求めているのだから…と顔を真赤にして健気に身体を見せる。
「ご主人様?」
「マスター?」
「ぐほぉッ!」
眼福眼福と死んだ目の癖に喜んでいると、左右に陣取ったミシュとヒュリアの地獄突きが脇腹にヒット。
流石毎晩床を共にしているだけあって、ソーマの弱点をよく知っている。
「な、何をしてるんですかっ、旦那様に向かって!?」
「いいのよ、ご主人様優しいから許してくれるもの」
「そうです、マスターは裏切らない限り何でも許してくれる慈悲深い方なんです」
目の前で起きた奴隷の暴挙に慌てて立ち上がり、ぷるんぷるんさせるハルア。
だが怒られた二人は逆にケラケラと笑って悶えるソーマの腕を抱きしめて立たせる。
「ねーご主人様?」
「そうですよねマスター?」
「う、裏切らなきゃなんでも許すが、脇は止めろ脇は弱い…」
「えぇ…」
可愛く擦り寄るミシュとヒュリアに、ビクンビクンしながら懇願するソーマ。
有り得ない主人と奴隷の関係に困惑するしかないハルア。
普通ならあり得ない話だ、主人に暴力を振るって許されるなんて。
「でもねハルア、ご主人様を裏切るのは許さないから。ご主人様が例え許しても許さない、私が許さない」
「ヒュリアも許しません。例えマスターが許せと命令しても許しません」
「は、はい…っ」
だが同時に理解した、二人はソーマを嘗めている訳ではない、心から心酔し、依存している。
そして愛しているから、先程のような行動に出て主人に構って貰おうとする。
二人の瞳に燃えているのは、愛情という名の狂気だ。
それを肌で感じて、ハルアは温かいお湯に入っているのに寒気を感じた。
「脅すな、これから一緒に暮らす相手だぞ…」
「忠告しただけだもの、脅してないわ」
「そうです、脅すなら武器を抜きます」
脇攻撃のダメージから回復したソーマが二人の頭を撫でながら諭すが、二人はゴロゴロと猫のように擦り寄る。
はて、二人共こんな性格だったかと内心首を傾げるソーマだが、別に害がある訳ではないかと放置。
「それに、私には分かるわ、ハルアも私達と同じになる…」
「そうですね、ヒュリアにも分かります…この子も同じになります」
「何の話だ何の…」
ソーマに甘えながらハルアの方を見て嗤うミシュとヒュリア。
そんな笑みを向けられたハルアは、これから自分はどうなってしまうのかと恐怖と不安で身体を震わせた。
ぷるんぷるん。
「な、なんですかこの純度の塩は…砂糖も、信じられない位の高純度で精製されてるじゃないですか…!」
ハルアをお風呂に入れた後、宿に戻ってきた4人。
元々4人部屋に移っていたので今回は引っ越しの必要はない、そもそもベッドも一つしか使っていないし。
その部屋の中で、並べられた塩や砂糖に驚愕して身動ぐハルア、メカクレ気味に銀髪ショートヘアーがふわりと揺れる。
「一体どこの国でこんな純度の精製が可能なのですか…アチアの岩塩を精製してもこんなに綺麗な白にはならないのに…」
震える指先で塩を確かめるハルア、一口よろしいですかと許可を貰い、人差し指の先に付いた塩を舐める。
「…っ、雑味も何もない、塩だけの味…旦那様、どこの国の塩なのですかっ?」
「俺の生まれた国」
「それはどちらに…?」
「遠すぎて二度と帰れないレベルで遠いんだよなぁ…俺がこっちに来たのは半分事故みたいな物だし」
「っ、す、すみません不躾に…」
謝罪するハルアに気にしてないと死んだ目で許すソーマ。
「改めて説明すると、俺のアイテムボックスは特別製でな、入れた物を取り出すんじゃなくて、ある場所に置いてある物を呼び寄せるんだ」
説明が面倒だからアイテムボックスで通してるけど、と肩を竦めるソーマ。
「つまり、召喚魔法の一種という事ですか?」
「だな、制限として俺の魔力を超える物は取り出せない、生物は取り出せないとかの制限がある」
流石魔法を使えるだけあって理解が早いハルア。
「つまり…凄いの?」
「凄いんでしょうマスターですし」
村娘だったミシュは分かっていない、そして割りと脳筋なヒュリアは流石マスターと理解を諦めている。
「生物は通れないから国には戻れないが物はほぼ無限に取り出せる、あれだ、巨大な倉庫から召喚してると考えればいい」
「なるほど…つまりこれらの品物は旦那様の国の貯蔵庫から直接呼び出されているんですね」
説明が面倒くさいのでハルアの理解した方式で正解としておく。
能力を説明しても良いのだが、まだ裏切りが怖いし、彼女たちから誰かに漏れる可能性もある。
なので、アイテムボックスの亜種という扱いにしておいた方がまだ対処がし易い。
ヒュリアは噴霧器やブロアーなどの道具を思い出し、あれだけ精巧な魔法道具を作れる国なら高純度の塩や砂糖も作れますねと一人納得。
よく分からないけどご主人様凄いと納得しているのはミシュ。
なんだかアホの子化している気がするが今は置いておく。
「それで、私はこれらでどの程度の利益を出せば宜しいのでしょうか」
「最近足元見られてるし、こっちにも売れこっちの方が高く買うだの煩くてな。ハルアが良い商売相手だと思った奴に売ればいい、今の所この商会にこの値段で売ってるから参考にしてくれ」
そう言って、現在取引している商会との間での販売契約書を見せる。
拝見しますと礼儀正しく受け取って数枚の契約書を真剣に読み始めるハルア、商家の娘だっただけに礼儀礼節にも通じているらしい。
良い買い物したかもなーと思っていたら、突然ハルアが契約書をグシャリと握り潰した。
「旦那様ぁ…!」
「ど、どうした…」
「何故こんな安値で売り払っているのですか!?この純度の塩なら相場の4倍でも売れると言うのに!安過ぎます、これではいくら元手がかかっていなくても損している値段です!!」
バシバシと契約書を叩いて怒り出すハルア、商人の娘として許せない値段での取引だったらしい。
「完全に足元を見られているどころか嘗められています、旦那様に商いの経験が無いと踏んで値切りに値切った値段ですよこれは!」
「あ、やっぱり…?」
なんとなくそんな気はしていたソーマだが、別に懇意にする訳じゃない商家だったので適当な値段で売っていた。
が、それがハルアの逆鱗に触れた。
「やっぱり…?つまり分かってて売っていたのですか!なんて勿体無い…この純度の塩ならこの取引の5倍…いえ、8倍出せましたよ!」
バンッとテーブルを叩いて熱弁するハルアに、仰け反るソーマと抱き合って震えるミシュとヒュリア。
大人しそうな子が怒ると妙な怖さがあるよねと脳裏で考えながら、どうどうと興奮するハルアを落ち着かせる。
「そこまで言うなら、なんだ、この量を任せるから売り捌いてみろ」
落ち着かせる為に、追加で1kgの塩の袋を5個ほど出して、更に同じ量の砂糖も取り出す。
「お任せ下さい、商人の娘として、確り利益を出してみせます!」
フンスフンスと興奮するハルアだが、元手0なので売ればそれだけで利益になるが、言わないでおくソーマ。
事前に買っておいた樽に塩と砂糖を詰め直し、それをソーマが出した台車に乗せて、ハルアはヒュリアを伴って商売に出かけた。
ヒュリアを連れて行かせたのは護衛だ、ハルア一人ででは嘗められるし心配でもある。
「しかし改めて考えると俺が出す道具とかって破格の性能なんだよな…」
「ご主人様、自覚無かったの…」
この服とか凄いじゃんと呆れるミシュ。
彼女が指で引っ張っているのはホームセンターでも売られている速乾性のシャツだ。
ソーマが今着ているストレッチジップシャツや愛用している安全靴、ホームセンターで普通に売られている商品だが、元の世界に比べると格段に性能が高い。
ジップシャツは鈍らなナイフでは切れないし、安全靴は魔物を蹴り殺せる威力を発揮する。
これらも丈夫だの頑丈だのの概念が付与されて構築されたからなのだが。
ミシュ達が愛用している下着類も着心地が良いという概念が付与されているからか、とても好評である。
「そういや、ハルアの衣類も揃えないとだな…」
「でもご主人様…悔しいけど、ハルアが着れるすぽーつぶらってあるの?」
下着やシャツなどを取り出そうとしたソーマだが、ミシュの言葉にピタリと止まる。
ミシュもヒュリアも手の平サイズなのでスポーツブラで済ませているが、ハルアのあのたわわサイズはスポーツブラでサイズがあるだろうかと不安になる。
ソーマの能力で具現化されたホームセンターのスポーツ用品売場で売られているスポーツブラは3サイズ。
ミシュとヒュリアはSサイズで平気らしいが、果たしてあのたわわ巨乳がLサイズで収まってくれるかどうか。
一応肌着売場に女性用肌着もあるので最悪ブラジャーを全サイズ取り出して付けて確かめて貰うしか無い。
ホームセンターの下着類は肌触りとか性能は高いのだが、カラーと見た目が地味なのしかなくて少し寂しいソーマ。
男は別に黒とか灰色とかでいいが、女性用が白黒ベージュ位しか無いのはなんとも寂しい。
別にドギツイ派手な下着が好みと言う訳ではないが。
速乾性の肌着とか下着が多いのはホームセンターならではだろう。
因みにこの速乾性とか保温性とかの性能、元の世界では極普通の性能なのだが。
この世界で構築・具現化されるとえらい性能に変化してしまう。
速乾性→乾きが早い→濡れても平気→水に強い→水属性耐性あり、という驚きの変化を起こしている。
では保温性は?温かい→寒さに強い→冷気系魔法や環境への耐性となる。
通気性が高い衣類なんて砂漠でも涼しくなるという謎性能。
ウィンドブレイカーなんて風魔法や強風完全防御という訳が分からない性能になっていたりする。
耐熱~なんて商品は熱にやたら強いし、耐水も同じ。
元の世界での認識がこちらの世界で概念となる時に謎の現象が起きているようだ。
防刃・防弾チョッキとかあったら凄い性能なんだろうなぁと思いながら、一通りのブラと下着のサイズを取り出して並べるソーマ。
ベッドの上にスポーツ用とは言え下着類を並べると、変な気分になってくる。
「あ、これ可愛い。ご主人様、これ付けていい?」
「サイズが合うならな…」
そこそこお洒落なブラジャーを手にして、胸に当てながら欲しいと強請るミシュ。
見たところ、手にしたサイズはDカップ用。
ソーマはこの後の展開を想像し、そっと視線を逸した。
この後の惨劇なんて想像出来ないミシュは、いそいそと上着とシャツ、スポーツブラを脱いで身に着けてみる。
一応以前、ブラの付け方をソーマと試行錯誤して付けた事があるだけに装着は素早い。
「…………笑えばいいじゃない」
「俺は大好きだ」
隙間が空いてピンクのポッチが丸見えのミシュは涙目。
ソーマは空かさず抱きしめて布団へ押し倒した。
身体のコンプレックスを慰めるのは身体に限る、なんてバカな事を考えながら。




