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異世界人生に大事なHS  作者: アヌービ
3/7

第三話 へい大将!ハーレム入ったよ!

ハーレムと書いたからには女の子!増やさずには居られない!


あ、誤字脱字ありましたら情報お願いします







ソーマがシャランポへと辿り着き、奴隷のミシュを購入してから2週間。


衣食住の為なら金に糸目を付けないソーマは、冒険者としては豪勢な宿を借りて生活していた。


もう少し生活が安定したら住居を借りる事も考えているが、そうなると家の事を任せる相手が必要になる。


宿を借りている間は宿の子が掃除してくれるので楽だが、家を借りて自分たちでやるには手が足りない。


ソーマは冒険者兼商人として仕事が山盛りだし、ミシュは現在冒険者としての修行の真っ最中。


故に、家の事を任せられる奴隷が必要になる。


何故雇いでは駄目なのか?


ハウスキーパーとして雇った奴がダンジョン攻略の戦利品を持ち逃げしたからだ。


前の街で家を借りた時の苦い思い出である。


「家事が出来て裏切らなくてミシュと仲良く出来る奴隷ねぇ…都合よく居るとは思えんが」


「はい?ご主人様何か言ったー?」


ドカリと鈍い音をたてて、脳天からかち割られる熊のような魔物。


体長2m近い魔物の頭を、手にした鉈でカチ割りながら問いかけるのは、一週間ですっかり逞しく、そしてふっくらと女性らしくなったミシュだった。


崩れ落ちる熊の魔物、フォレストベアから愛用の鉈を抜き取り、再び振り下ろす。


鈍い斬首音と共にフォレストベアの首が切り落とされ、ゴロリと脳天が割られた頭が転がる。


「いや、お前ももう一人前だなと思ってな」


「そーかな、えへへ」


ソーマに褒められて照れくさそうに頬を掻くミシュ、その愛らしいはにかみ笑顔のアチコチに返り血が付いているのがちょっと怖い。


「まぁ毎日ギガントターマイトだフォレストベアだアルトボアだと、滅茶苦茶危ない魔物相手にさせられてますからねー」


「なんだ、不満か」


「当たり前でしょ!?そりゃ強くなれるけどご主人様のやり方滅茶苦茶じゃない!」


皮肉交じりの言葉に素で返すソーマ、それに対してウガーと怒り出すミシュ。


この2週間で、すっかり態度は崩れ、ソーマとしてはやりやすい態度になってくれた。


とは言え、デスロードばりの日々を送る羽目になったミシュにとっては地獄に等しい。


初日のギガントターマイトに始まり、罠を仕掛けて捕らえたフォレストベアやアルトボアなどを単独で相手させられたり、中堅の冒険者でもキツい戦闘を経験してきた。


まぁギガントターマイトは駆除剤で皆殺し、フォレストベアやアルトボアは毒薬入り団子を食べて半死半生状態というお膳立て状態なのだが、流石にただの村娘だったミシュには、出会ったら死と教えられていたフォレストベアを倒せとか無茶振りにも程があったことだろう。


だがミシュは倒した。


ソーマが用意した装備の力も合わさって、中堅冒険者が複数人で挑むフォレストベア相手に。


前にも言ったが、ソーマが具現化する道具などは元の世界での認識が概念として宿っている。


ホームセンターの道具、特に大工道具等は「頑丈・長持ち・軽い・便利・よく切れる」などの概念が宿っている。


ミシュが愛用している長めの薪割り用の鉈は、見た目ナイフの様にも見えるマチェットタイプの物で、アウトドア用品として売られていた物だ。


13インチという武器としては小さいが、「頑丈で良く切れる」という概念が宿った為に、下手な武器より殺傷力が高い。


中堅冒険者が愛用する鋼鉄製の剣より硬くて切れて軽いと言えば、その恐ろしさが分かるだろう。


鉄の剣程度なら毛皮を切るのすら難しいフォレストベアを、叩き付けるだけで切断してしまうのだから。


ソーマがその能力で良かったことの一つに、構築した思い出の店舗がアウトドア用品や災害用物資に力を入れており、普通のホームセンターなら売ってない道具類も取り揃えていた事だろう。


かなりコンバット的な見た目の刃物類も、アウトドア用品として売られていたのだから。


なお一番売れていたコンバット系アウトドア用品は、折畳式のエンピ(ショベル)であったりする。


戦争する訳じゃないので、日用品として使える物が一番売れるのは当然と言えば当然だった。


「確かにご主人様の言うれべるあっぷ?で身体も思い通りに動くし、戦うのにも慣れたけどさ…」


ぶつくさ言いながら手に持つマチェット型の鉈を軽々と振り回し、血糊を飛ばす。


硬いと評判のフォレストベアを切断したのに、刃こぼれすらしてない鉈、頑丈という概念の効力が窺い知れる。


「奴隷とは言え、女の子にやらせる仕事じゃないと思うんですけどー」


「その分贅沢してるんだ、夕飯は宿の食事のほうが良いか?」


「やだやだやだっ、ご主人様の料理のほうがいい!」


宿の人が聴いたら憤慨する事を叫ぶミシュだが、仕方がない事だろう。


文字通りレベルが違うのだから。


「それじゃ帰るか…帰りに商家に寄って塩を売ろう」


「はーい」


テキパキと、フォレストベアの死骸から討伐部位と呼ばれる部分を切り飛ばし、腰の袋に入れるミシュ。


毎日が驚愕の連続で、すっかり慣れてしまったらしい。


街へと歩き出すと、ミシュが走り寄ってきて腕を絡ませてくる。


「えへへ…」


「ほれ、頬に付いてるぞ」


照れ臭そうに、だが幸せそうなミシュの頬の返り血を拭ってやるソーマ。


その表情は優しかった、だが目だけが死んだままだった。







「またのご利用をー!」


商人から歓喜の大声で送り出されるソーマとミシュ。


シャランポの街の商人にとって、ソーマはお得意様中のお得意様だ。


何せ、原産地でも滅多に御目に掛かれない純度の塩を、大量に卸してくれるのだから。


ホームセンターでも売られている塩の袋を、事前に購入した樽に入れ直し、商家に運び込む。


混じり気もゴミもない、まっさらな塩に、最初に持ち込んだ商家の商人は文字通り飛び上がった。


こんな純度の塩、貴族や王族だって口にする機会が少ないレベルだ、商人は血眼で交渉してきた。


ソーマとしては宿代等が払えればいいので商人側が払えると言う限界ギリギリで売っているのだが、それでも安いレベルだ。


と言うか相場をよく知らないので、足元見られて値切られている。


その事を知るのはまだ先だが、魔力さえあれば無限に商品を取り出せるソーマにとっては些細な事だ。


「宿代を払ってもお釣りがくるな…あんまり金貨は持ち歩きたくないんだが」


「滅茶苦茶見られてるもんねぇご主人様…」


苦笑するミシュだが、彼女も割りと見られていたりする。


何せ、ほぼ毎日お風呂に入ってシャンプーとリンスで綺麗にして貰っているのだ、通り過ぎるだけで良い香りがして野郎は誰しも振り返る。


おまけに食生活が安定してふっくらと肉付きが良くなった彼女は間違いなく美少女だ。


勝ち気な顔立ちのツインテールの美少女という属性山盛りである。


事実、何度かギルドや商店などでナンパされるのだが、彼女は一切靡かない。


他人に靡くのは主人への、ソーマへの裏切りだと彼女が考えているからだ。


今のような口調も態度も許してくれるソーマが、唯一殺してでも許さないと明言している裏切り。


今の自分が在るのはソーマのお陰だと深く理解しているミシュは、どんなイケメンだろうが金持ちだろうがアウトオブ眼中。


気さくで活発な彼女の笑顔の、その下にあるのは、ソーマへの深い深い心酔だった。


「あ、ご主人様、奴隷市開いてるよ」


「そういや2週間毎だったな…」


奴隷市は基本的に定期開催だ、奴隷商も人材を仕入れてくる時間が必要になるし、最低限の教育と下準備(身嗜みなど)をする時間が必要になる。


その為、シャランポでは2週間に一度の開催となる。


大手の奴隷商は専用のお店を持っているので、そちらで普段は人材を補充したりするのだが、奴隷市になると他の奴隷商も集まるので広く人材を見繕う事が出来る。


人身売買だと気分を悪くする人も居るが、労働奴隷という職業だと考えると、一種の派遣業に思えてくるのが奴隷商だ。


「見ていきます?」


「そうだな…ん?今日のは毛色が違う連中が多いな…」


ソーマの視線の先には、服装や佇まいが他の奴隷とは異なる奴隷を連れた奴隷商が店を開いていた。


並んでいる奴隷達は、どれも屈強で逞しく、また自分たちの今の立場を不服そうにしているのが伺える。


奴隷商自身も、他の奴隷商と佇まいが異なっている様に見える。


「戦闘奴隷みたいね…」


「戦闘奴隷…あぁ、元冒険者か」


そう言えばギルドで聴いたことがあるなとミシュの言葉に思い出すソーマ。


ギルドも慈善団体ではない、依頼達成時の報酬の数割をギルド運用費として徴収している。


こちらも派遣業と似たような物だ。


ただ違うのは、冒険者が依頼失敗や違反があった際に、罰金制度を設けている点。


そして、冒険者がこの返済が不可能な場合、装備や資産の没収、そしてそれでも足りない場合は冒険者自身を奴隷に落とし、強制的に徴収に入る。


つまり、彼ら戦闘奴隷の売値は残った借金であり、あまりに額が多い場合は売られた後も支払い義務が発生する。


普通に冒険者をしていて返済が出来ない、つまり日々の食費や生活費で浪費したり、装備の維持に持って行かれている事が殆どなので、そういった管理を購入者へ任せ、働かせた分の賃金を購入者に支払わせる。


これだと購入者が損をしている様に見えるが、実際は即戦力を奴隷として自由に扱えると言う利点がある。


ただの奴隷を冒険者として育てるのにも時間がかかる、ミシュは例外中の例外だ。


ギガントターマイトでパワーレベリングして装備でゴリ押しなんて普通の冒険者には真似出来ない。


「依頼失敗や違反が過ぎると奴隷に落とされるとは聞いたが、なるほどな…」


「――っ!?ソーマさん!?」


と、一人納得していると、戦闘奴隷の中の一人が、小屋から飛び出さんばかりにソーマの名前を叫び始めた。


「お知り合い?」


「……あー、クズ受付嬢か。なんだ生きてたのか」


心底気持ち悪いものを見たと言わんばかりに吐き捨てるソーマ。


ミシュが見る限り、目がくるりと大きくて愛らしい美少女だ。


以前の自分となら間違いなく彼女の方が美少女だと断言出来る。


今?毎晩美少女だの可愛いだの褒めてくれるご主人様が断言してるのだ、自分の方が上だと胸を張れる。


「例の悪女の一人って事かー」


「誰が悪女ですか!?ソーマさん誤解なんです、今からでも遅くないですから私の無罪を証明して下さいっ!」


「こらっ、勝手に動くな!」


元冒険者の奴隷とあって、見張りの私兵が奴隷商の周りに配備されており、彼らが小屋から出ようとする少女、ソーマ曰くクズ受付嬢を取り押さえる。


「離して下さいっ、私は無罪だとなんで信じてくれないんですか!?」


「無実も何も、お前報酬の一部着服とか受注不備だとか言って報酬丸ごと自分の物にしてただろ」


「うわぁ…」


涙目で無罪を訴えるクズ受付嬢だが、淡々とその罪状を口にするソーマ。


ミシュはきちゃない物を可愛いとか思っちゃったと吐き気を覚えている。


「ですから!証拠はどこにあるんですか!?」


「俺が証拠だボケが。お前、俺が討伐したブラッドウルフの報酬、受注不備とか吐かして自分の物にしただろ」


「「「「うわぁ…」」」」


騒ぎを聞いていた周りの戦闘奴隷や私兵、奴隷商も汚い物を見る目になった。


「それはソーマさんが悪いんじゃないですか!受注不備は冒険者側の責任として報酬は没収になると決まって!」


「それ、冒険者側が受注せずに対象を討伐した時の話だろ。しかも没収じゃなくて討伐報酬だけになるってだけで没収にはならないしそもそもお前の物にもならんわボケが。と言うか自白したな、報酬を自分の物にしたと」


クズ受付嬢も合わせて全員が「あ」と一言。


「そもそも受注不備だって、俺がギルドに顔出したら「緊急の討伐です、急いで向かって下さい早く!」と急かして対象の情報も報酬の話もせずに追い出したお前の責任だろうが。それを被害者ぶって報酬丸ごとポッケナイナイとかクズ過ぎて吐き気しか出ないわ死ね、氏ねじゃなくて死ね」


「そ、そんな…!」


「えぇい騒がせおって、奥に連れて行け!お騒がせしました」


まだ無罪を叫ぶクズ受付嬢を私兵…どうもギルドの雇った冒険者らしいが、奥へ連れて行く。


あぁやってずっと無罪を叫んでいるらしい、性根腐りきったクズっぷりである。


頭を下げる奴隷商に、お宅も大変だねと同情してしまう。


「もしかして、全員ケッソ王国のギルド関連?」


「いえ、ケッソのはあの女と数人だけです、何でもケッソ王国のギルドの一つが不正や犯罪で貴族主導の取り潰しになり、不正に加担したギルド職員はアチコチに送られて奴隷として売られているとか」


「なる、それであのクズがここまで来たのか…売るなら別の場所で売ってね?」


「売れるとは思えないので、最終的には鉱山行きだと思いますがね…」


奴隷商の説明に納得しつつ、内心やったぜザマァと大喜びのソーマ。


ソーマが商売で懇意にしていた貴族様が、激おこプンプン丸でギルドを取り潰してくれたらしい。


主犯であるギルド長は処刑、他の連中は罪が重い連中は鉱山行き、軽い連中はあのクズ受付嬢の様に奴隷として売られたとか。


因みに戦闘奴隷は、罰金が返し終わるまで奴隷身分から脱却出来ない。


普通の労働奴隷は購入者が独り立ちとして許せば何時でも奴隷から脱却出来る。


あのクズ受付嬢もちゃんと働いて返済すれば自由になれるのだが、あの分では鉱山行きでそのまま二度と出てくる事はないだろう。


他に数名、ソーマを恨めしげに見ているのはあの犯罪ギルド一歩手前で主犯達からお零れを貰っていた連中だろう。


「……ん?」


「………」


ふと恨み辛みの視線とは違う視線を感じてそちらを見ると、一人の薄汚れた少年っぽい少女がソーマを見つめていた。


そして、ソーマと視線が合うと、深く頭を下げた。


「お前…」


「お久しぶりです…先輩」


ソーマを先輩と呼ぶ少女は、くすんだ銀髪を首の後ろで纏めた、礼儀正しそうなキリッとした美少女だった。


「ヒュリア…お前何してんだ」


「お恥ずかしい話です…先輩の忠告を無駄にしてしまいました」


ヒュリアと呼ばれた少女は、恥辱と悔しさを声に滲ませて俯いていた。


「実力に見合わない依頼を受けて損失を出し、借金を返せずにこの有様です…」


「お前…あのギルドの連中の話は信じるなと言っただろうが…」


少女の言葉に頭を抱えて天を仰ぐソーマ。


「ご主人様、こっちは知り合い?」


「あぁ、ケッソ時代の後輩だ…」


ミシュの言葉に、ため息混じりに答えるソーマ。


あの犯罪者一歩手前ギルドで、どうにか守ってやっていた後輩冒険者である。


ソーマ曰く糞真面目の心配性であり、あのギルドではソーマが居なければ一日でカモにされていただろう少女。


ソーマ同様に悪事にも不正にも手を染めてない筈であり、性格的にそんな事をするならもう誰も信じられないとソーマが思う程に真面目ちゃん。


だがその彼女が戦闘奴隷としてそこに居た。


借金を背負った借金奴隷として。


「つまり何か、受付の連絡不備か依頼書の不備で対処不可能な依頼を受けてしまって借金背負ってそのままここ行きか」


「流石です先輩、ヒュリアが陥った状態を全て言い当てるなんて…」


流石真面目ちゃん、ギルド側の不備を自分の不備だと鵜呑みにして借金を背負ったらしい。


ギルド側は取り潰されたが、ヒュリアの借金は依頼主側の分が残っている為、戦闘奴隷として落とされたらしい。


「どうするのご主人様、さっきのは論外だけどこの子は知り合いなんでしょ?」


「あー…あんまり知り合いを奴隷にするのは気分的に良くないが、見捨てるのもなぁ…」


裏切らなかった貴重な後輩だしと頭を掻くソーマ。


自分の教えを守れなかったというある意味裏切りだが、不可抗力でもある。


「彼女を買い取るよ」


「分かりました、ではこちらで手続きを」


「せ、先輩…」


「良かったわね、アンタ」


運も今後も…と笑うミシュに、ヒュリアは戸惑うしかなかった。








「はいと言うわけでパワーレベリングのお時間です、ギガントターマイト死すべし」


「わーい、知ってたー」


「え、えっと…」


次の日の森の奥、ギガントターマイトが目撃された場所までやってきたソーマ、ミシュ、ヒュリア。


ソーマの言葉にミシュが乾いた笑みを浮かべて手をパチパチと叩き、訳が分からないけど真面目なので同じように拍手するヒュリア。


「3人になるので作業が多少楽になるな」


「やったねご主人様、今夜はカレーライスだー」


「さ、作業?カレー…え、何?」


戸惑うしかないヒュリアだが、ミシュが「だいじょーぶだいじょーぶ、直ぐに慣れるからーご主人様を信じてー」と背中を押す。


そして始まる、パワーレベリングと言う名のシロアリ駆除。


やってることは初日のミシュと同じだ、ただ今回は巣があの時より大きいのと、ヒュリアが居る点が異なる。


巣が大きいので駆除する対象も多いのだが、戸惑いながらも真面目に言われた事をこなすヒュリアが戦力になるので、次々にギガントターマイトを駆除。


そしてお決まりのガソリン爆破。


今回は巣が大きいことが災いし、女王が地下で焼け死んでしまった。


ギガントターマイトの討伐は、女王を討伐しないと受理されないので、穴を掘る事になる。


「鎮火するの待つ間、食事にするか」


「やった!カレー食べようカレー!」


携帯コンロを取り出し、鍋に水を入れて手早くレトルトカレーとパックご飯をセット。


その様子を見ていたヒュリアは、目を丸くしていた。


「えっと、マスターのアイテムボックスは何でも入っているんですね…」


「アイテムボックスだからな」


「アイテムボックスだものね」


引きつった顔のヒュリアの言葉に、しれっと答えるソーマと、深く考える事を止めたミシュ。


今が幸せなんだから良いじゃない、がミシュの思考だ。


下手にあれこれツッコんで、主人であるソーマを怒らせて捨てられたら死ぬしか無い。


と言うかソーマ無しの生活なんてもう考えられないレベルなので、捨てられたら即死ぬ自信がミシュにはあった。


「お、おぉ…おいひぃ…!」


「おいひぃよね、おいひぃんだよねこれ…!」


「お前ら同じリアクションしないといけない教義でもあるのか…」


ダバーと涙を流してカレーを貪るヒュリアと、そうだろうそうだろうと頷きながらカレーを食べるミシュ。


慣れた自分は兎も角、あの駆除作業の後でよく食べれるなと思うが、それだけ抗えない魅力がカレーにはあった。


二人がよく食べるので追加の、今度はビーフカレーを茹でながら、カレーを心待ちにしているヒュリアを見る。


キリッとした顔立ちは、ミシュよりも中性的であり、イケメンオーラすら感じられる。


実際、最初会った時は少年だと思っていたが、声が年齢にしては高いし、仕草も少女のそれが強かった。


何より真面目で一直線な性格で、あの街のギルドでは食い物にされて奴隷か死かの2択一直線だったろう少女。


食い物にされることはソーマがそれとなく防いでいたが、まさかギルドを潰す前に借金を背負って奴隷落ちしてしまうとは思わなかった。


あのギルドを潰させる為に、懇意にしていた貴族に泣きついて「こんなギルドがある国に居られるか!俺は他国へ逃げるぞ!」と宣言、街を治める貴族達に途方もない損失を与え、重い腰を動かさせた。


動かせた理由は、ソーマが生み出せる純度の高い塩と砂糖である。


現代社会では別に高級でもなんでもないただの塩と砂糖だが、この世界では途方もない程に高級な品物として扱われる。


ゴミも混じりもない高純度に精製された品物なのだ、王族だってそうそう味わえない。


それを相場の値段より安く提供してくれていたソーマが国から逃げると宣言したのだ。


貴族にしてみれば堪ったモノではない。


特に、主導した貴族、ソーマの塩と砂糖で王宮への賄賂代わりにしていた人は今後それが出来なくなる。


娘を嫁に出すから考え直してくれとまで縋ったが、ソーマはあっさり逃げ出した。


その原因へ怒りを燃やすのは当然の流れであり、捜査や取り調べは苛烈かつ強引な物になったそうな。


だが人員を動員するのに時間が掛かったのだろう、ソーマが夜逃げしてからギルドが潰されるまでの間に、ヒュリアは借金を背負ってしまった。


これが潰れたギルドの借金なら帳消しにもなるのだが、依頼者に出た損失なので帳消しにはならない。


通常のギルドならそれをギルド側が肩代わりして、毎週一定額を冒険者に支払わせるのだが、あのギルドはそれをせずに損失分をそのままヒュリアに請求、装備や資材を没収して奴隷に落とした。


ギルド長の方針に理解を示さない冒険者を蹴落とす常套手段だった。


まぁその損失分の借金は、購入時に支払っているので、ヒュリアに既に借金はない。


昔のよしみで自由にしてやっても良いのだが、この真面目ちゃんは目を離すとまた騙されそうで不安になる。


流石に奴隷に落ちるまでの経験をしたのでヒュリアも少しは性格が改善されているのだが、ソーマが知る訳がなく。


しばらく奴隷として、冒険者の手伝いをさせようと決めた。


『あーもう、無駄にデカい巣作ってもー!』


『文句を言わず、掘りましょうミシュ』


口と鼻を覆うタイプの防毒マスクを付けたミシュとヒュリアが、スコップ片手に地面を掘り進める。


大の大人でもつらい作業だが、パワーレベリング@ギガントターマイトを行った二人の肉体は常人のそれを既に超えている。


穴の中は元々腐った木材などでガスが発生しており、ガソリン爆破の影響で有毒なガスも発生している。


あと何より臭いのだ、燃えたギガントターマイトが。


その為ソーマが防毒マスクを二人に与え、巣穴を掘り起こさせる。


規模が大きな巣だったので、穴自体は子供なら通れる大きさが掘られている。


巣の中のギガントターマイトは最初に外に誘き出して駆除剤で殺虫しているので、残っているのは女王の世話係や子供だが、それらも全てガソリンファイヤーで焼け死んでいる。


焼け死ななくても火災の煙で窒息死は免れない。


『この先っぽいな…潜ってくる、周囲警戒しといてくれ』


『はーい』


『お気をつけて』


しばらく掘り進めると、一際大きな穴と、奥に大きな空間が見える場所が掘り出された。


屈めば通れそうな穴なのでソーマが手斧片手に奥へ入り、二人は周りの巣穴の警戒、もし生きてるのが居たら危険だからだ。


ヘルメットを被り、それに装着したライトで照らしながら奥へ進むと、開けた空間へ出た。


壁際に並ぶ卵と、世話をしていただろう焼け死んだギガントターマイト。


そして奥には、焼け焦げた女王の姿。


その女王から顎を切り離すと、並ぶ卵にガソリンを再び掛けていく。


『簡単に崩れそうにないし、念入りに焼いておくか…』


前の巣のように地面ごと崩せば卵も処理出来るのだが、ここは崩れそうにないので焼却する事にしたようだ。


ガソリンを撒きながら下がり、穴の外へ続くようにガソリンの道を作る。


『おかえりーご主人様』


『おかえりなさいマスター』


安堵の声で出迎える二人に顎と手斧を渡し、ガソリンの道を外まで広げる。


『まだ燃やすの?』


『卵部屋が完全に焼けてないんでな、崩れそうにないし焼いとく』


ミシュの言葉に答えながら二人を下がらせ、着火。


ガソリンの道を炎が勢い良く走っていき、穴の中へ。


しばらくすると、巣穴の奥から巨大な炎が逆走して吹き出した。


『こんだけ念入りに燃やしておけば全滅しただろ。撤収するぞ』


巣穴から離れながらガスマスクを外して汗を拭う。


その姿は冒険者ではなく駆除業者だが、あながち間違っていない。


経験値という概念を持つソーマなら抜群のレベリングエネミーなのだが、生活の為に戦う冒険者からすると、割に合わない討伐相手なのだ、ギガントターマイトは。


何せ数が多いしそれなりに強い、特に女王がデカい。


なので人数を集めると報酬が頭割りになるので結果報酬が少なくなる。


例えば6人でギガントターマイトの巣を相手にするのと、他の魔物を討伐するのでは、後者の方が確実に稼げるのだ。


故に人気がない、虫系魔物は見た目のグロテスクさも相まって人気がない。


だがソーマは各種殺虫剤や農薬を完備である、逆に格好の獲物なのだ。


巣を作ればギルド所属冒険者総動員か軍が出撃するキラーワプスという蜂型の魔物すら、ソーマには餌でしかない。


「ご主人様ー、汗で気持ち悪いからお風呂入りたーい」


「ちょ、ミシュ!?なんて我侭を言うのですか…!」


ミシュの軽口にギョッとするヒュリア、それはそうだ、お風呂なんて貴族や一流冒険者がたまの贅沢で行う物だ。


毎日お風呂に入れるのなんて、よほどの貴族か王族位だろう、後は温泉地の人間。


そんなお風呂に入りたいなんて言うミシュに、いくら先輩からマスターへ呼称チェンジしたソーマが優しくても怒ると考えて、ミシュを叱るヒュリア。


だが言われたミシュはニンマリと笑っているだけで、逆にヒュリアが戸惑う。


「そうだな、街に帰る前に一風呂浴びるか。昨日は部屋の移動とかでお湯で済ませただけだし」


昨日はヒュリアが仲間に追加したので宿の部屋を3人部屋へ移動、夜は沸かしたお湯で身体を拭いただけで済ませた。


流石に宿でドラム缶風呂は場所がない、やろうと思えば出来そうだが面倒にも巻き込まれそうなので保留中。


ソーマのその返答に、ヒュリアが更に戸惑う。


色々規格外なのはケッソ時代から知っている彼女だが、その本当の意味を知るのはこの後であった。








「くふぅ~~~っ、汗かいた後のお風呂さいっこうぅ~!」


ドラム缶風呂の中で、身体を清めたミシュが極楽と言いださんばかりに蕩けている。


「ま、まままマスターっ、あのっ、あのっ」


「動くな、洗い難い」


そしてその傍らで、すっぽんぽんに剥かれて身体を洗われているヒュリア。


中性的なイケメン少女だが、身体はしっかり女の子であり、念入りにソーマに洗われている。


「ヒュリアー、諦めて全部ご主人様に任せちゃいなよー、天にも登る気持ちになれるよ~」


「そ、そんな事を言われてもっ、ひゃんっ!?」


ヌルリとソーマが手にしたスポンジが尻の方から侵入してきて可愛い声をあげるヒュリア。


そんな可愛い元後輩で現在奴隷の姿に、ホッコリしながらHAHAHAと洗うソーマ。


だがその目は死んでいた。


「ぁぅ…ぁぅ…」


全身隈なく洗われて、真っ赤になってショート状態のヒュリア。


彼女を2つ並んだドラム缶の、かけ湯用だった程よく減った方へ入れてやると、面白い程に蕩けていく。


「な、なんですかこれは……気持ちよすぎて…あぁ、駄目、頭が蕩ける…」


「ようこそ、ご主人様の世界へ」


「勝手に俺の世界にするな、材料さえあれば誰でも出来るだろ」


その材料を手に入れるのが大変なんですがそれは、と視線で問いかけるミシュだが、ソーマは身体を洗っていて見ちゃいない。


事前に風呂桶に取り分けていたお湯で身体を流すと、何も言わずにミシュのドラム缶風呂へ。


「いらっしゃ~い」


「うむ」


ソーマが入りやすい様に身体を動かし、ソーマが入るとその膝の上に座るようにしがみ付くミシュ。


ここ2週間の、お風呂に入る時は決まって行っている入浴スタイル。


「なっ、何をしてるんですかマスター!?」


「何って、風呂入ってるだけだぞ今は」


「今は!?」


「する時はするもんねぇ、ご主人様~」


「する!?ま、まさか…」


絶句するヒュリアに、ミシュはソーマの胸板に頬ずりしながら猫のように笑う。


それを見てボムッと真っ赤になるヒュリア。


「心配しなくても、ヒュリアもすぐ可愛がって貰えるわよ。まだ肉付きが悪いからもっとご飯食べなさいよー」


「そ、そんな、マスターと、マスターと…いえ、でも、私はもうマスターの物だし、マスターなら…」


目をぐるぐるさせながらブツブツ呟くヒュリアと、その混乱を煽るミシュ。


「あんまり追い詰めるな」


「はぁい」


ぐりぐりとミシュの頭を撫でると、彼女は満足げに頬ずりしてソーマの身体に全身を委ねた。


ソーマも元は20過ぎだし、現在も大人扱いの青年だ、子供じゃないのでやることはやっている。


そしてミシュもそれを当然として受け入れていた。


奴隷云々、ではない。


今の自分の生活の為に、当然の対価を差し出しているだけだ。


ソーマが居なければ生きていけないと思う程に心酔しているのだ、ある意味当然の行動だった。


そして、その活発で明るい性格の裏にあるソーマへの思いが吐露されるのは、そう遠くなかった…。






ヤンデレ好きなんスよ、デュフフ

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