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異世界人生に大事なHS  作者: アヌービ
1/7

第一話から再出発

なんか物書こう、という事で書きなぐった物です。

暇つぶしにどうぞどうぞ。


リッカード王国、周囲の国々の中でも平凡だが堅実な国家運営を行う周囲で五指に入る強国。


主な産業は農業と林業、海運を巡って時折隣国と喧嘩をする程度の国力。


そんな国の、南方にある交易都市に、一人の青年の姿があった。


年の頃は20に届くか届かないか、一般的な冒険者と呼ばれる荒くれ者達と同じような装い。


背にした革袋には、何かがパンパンに詰まっていて重そうだが、それを片手で背負っている、それが可能な筋力があるという証。


身長も180近く、顔立ちは精悍だがイケメンとまでは行かない。


だが、彼の目は死んでいた。


熱愛の末に結婚した相手が結婚詐欺で金持って逃げられた男の目とか、親友だと思っていた相手に勝手に借金の保証人にされた上に逃げられた人の目とか、浮気した妻から「貴方が構ってくれないから悪い」と開き直られた時の夫の目とか。


そんな感じで腐った目だった。


「ケッソ王国から国境超えて一週間…国が違えばギルドの代表も違う、これだけ距離があればあの阿婆擦れ共も遭遇する事はない…ビバっ!新天地!!」


瘴気漂う言葉からの両手を挙げての歓喜の声。


衛兵が見ていればちょっと詰め所まで来い確定な行動だが、まだ街が見える位置なので周囲に人は居ないのでセーフ。


「今頃あっちのギルドは大騒ぎだろうが、もう俺には関係ない…そうさ、もう知ったことかあの糞ったれ共が…!」


拳を握り締め、怒りのまま強く足を地面に叩きつけると、乾いた地面が音を立てて陥没し、小さなクレーターが出来上がる。


「もう俺は心身共に自由だ、この街で気ままに暮らしてやる、邪魔する奴は……はははは!」


地獄に落としてやった連中の事を思い出して笑い、刹那で忘れて街を目指す。


青年の名前は、成代 蒼真。この世界ではソーマ・ナリシロ。


元の世界では27歳社畜、この世界では18歳冒険者兼商人。


つまりは異世界転移であり、神様の気紛れである。






第一話から再出発






リッカード王国の交易都市の一つ、南のシャランポ。


農業と林業、それに付随する畜産と一応国土に面してる海と湖の漁業を主軸にしている一般的な国家。


ソーマが先週まで拠点にしていたケッソ王国とは隣接しているが国境を挟んでチンピラの睨み合い的な関係が続いている。


つまり何か相手の隙きを見つけたらイチャモン付けて喧嘩売って、戦争になる前に「覚えとけよ」をお互いする立場だ。


プロレスとも言う。


だがソーマにとっては、そのケッソ王国と喧嘩してくれるというだけで良い国と思う。


それだけケッソ王国では嫌な記憶が多い。


この世界へ転移して一年、たった一年でソーマは色々な事を学んだ。


主に世の不条理と不平等、そして不正である。


「ギルドじゃ上前ハネるのは当たり前、討伐品の買い叩きやら理由つけての没収だのやりたい放題。緊急の依頼です行って下さいと言われて行かされたら超危険な魔物で、退治したら受諾処理する前に行ったから報酬は無しです栄誉はあげますとか言われてさ。おまけにそれを都市ギルドの代表が率先して行ってる上に、高ランク冒険者は難癖レベルの理由で街に縛り付けて他に行かせない様にしたり、場合によっちゃ家族やらを人質にしたりで裏ギルドかと思うレベル。所属してる冒険者も自然と犯罪者紛いになって、美人局やタカりは当たり前、パーティー組んだ次の日には荷物盗んでとんずらこいたり、別の宿に泊まったのに寝込みを性的に襲われたとか言い出したりで信用なにそれおいしいの状態、何も知らない新人は食い物にされて奴隷に落ちるか死ぬか、そいつらみたいに犯罪者紛いに走るかの3択。で、そんなギルドがある街から逃げてきましたが何か、も・ん・だ・い・で(→)も(↑)?」


「い、いえ、何も問題ありません…も、勿論ウチはそんな事はしてませんよ!?えぇ、確り買い取りも適正ですしそんな酷い依頼の仕方なんてしませんとも!」


シャランポの街のギルド、冒険者という職業とは名ばかりの荒くれ者達を束ねる国とは切り離された組織運用がされている場所。


そこを訪れ、再登録の際に何故前の街を出たのかを尋ねられたソーマが、死んだ瞳でガン見しながら受付嬢へ語った言葉が上の長文である。


これには受付嬢も涙目でドン引き、周りで聞き耳立てていた冒険者達もマジかよ…とドン引きである。


因みのその犯罪者紛いのギルド、現在ケッソ王国の一部貴族の主導により強制捜査が入り、ギルド代表は牢へぶち込まれ、違法に手を染めていた職員は軒並み罰せられ、所属していた冒険者も一部は犯罪者として強制労働所行きである。


まさかその火種と言うか、火種にガソリンぶっかけたのが目の前の青年とは思わないだろう受付嬢は、再登録手続きをすると、依頼掲示板はあちらですとご案内。


これ以上ソーマに絡まれるのは勘弁して欲しいのだろう。


ソーマもソーマで受付嬢と必要以上に馴れ合う気はないので、受け取ったギルド証を片手に掲示板の方へ。


前のギルドでは、可愛い受付嬢に親切にしたら例の緊急依頼受諾前だから討伐したけど報酬無しよである。


しかも本来支払われる筈だった報酬をその受付嬢がポッケナイナイしてたのだから、ソーマが人間不信になるのも仕方がない。


以後、どんなに可愛かろうが美人だろうが絶対に信用出来るまで距離を取ると心に決めた青年が居た、死んだ目をしたソーマだった。


依頼の掲示板に書かれている内容は、ケッソ王国と然程変わらない。


むしろ林業が多い為、森関連の依頼が多かった。


「お、ギガントターマイト討伐依頼あるじゃないか。ラッキー」


掲示板の中の、人気がないのか貼られてから取られた形跡の無い依頼書。


それを手にして呟いた言葉に、周りで新入りの実力を観察していた冒険者達がギョッとした。


ギガントターマイト、名前こそカッコイイが、地球人からするとデカいシロアリである。


体長50センチほどのシロアリである。


強力な顎で樹木を砕いて巨大な巣を作り、森を枯らしてしまう森の悪魔。


それがギガントターマイトである。


勿論、武装した冒険者なら倒せる相手だが、何せ相手はシロアリである、数が半端ないしデカい。


ある程度腕の立つ冒険者複数が受ける多人数向けの依頼を、ソーマが一人で受け、しかもラッキーとまでのたまった。


先程の受付嬢とのやり取りから、凄い実力者か?いや頭イカれてるんだ、など議論が行われる中、ソーマは依頼を受諾して早々にギルドを立ち去っていた。


「しかし生活を立て直すにしても、一人はつらい。だが冒険者仲間はもう御免だしなぁ…」


仏の顔も三度まで、では5回も手酷い目にあったソーマはどんな心境か。


金で割り切った関係も良いが、毎回説明やら折半やらは面倒くさい。


どうしたものかーと悩みながら街を歩いていると、外縁部へと出てしまった。


そこでは、奴隷市が開かれており、奴隷商がテントを立てたり露天状態で連れてきた奴隷を紹介していたり。


因みにこの世界での奴隷は、ソーマ達地球人の考える奴隷とは少し違う。


一番分かり易い例えは、派遣社員だ。


奴隷商は、食うに困った村人や子供を買い取り、需要がある場所へ連れていき売る、買った側には衣食住を保証する義務がある。


つまり、給料代わりに衣食住を保証される、農奴的な立場が殆どである。


また、魔物等の被害で人手が足りない土地では開拓民として国や領主が奴隷を集めたりするし、奴隷側も別に手足を鎖で繋がれて重労働に酷使され、使い捨てられる事は殆どない。


そう言うのは犯罪者が落とされた犯罪奴隷である。


犯罪奴隷は鉱山やら危険な場所へポイされるので、この奴隷市に居るのは殆どが地方の村や別の国からの出稼ぎ的なスタンスの労働奴隷達である。


その為、殆どは若い男性や元兵士等で、主に労働力として買われていく。


交易都市なので、人足はいくら居ても足りないのだろう、先程からちょいちょい商人に買われていく若い男性が多い。


女性は娼館へ…と思うだろうが、娼館は専門の商人を抱えているので、こういう場所で娼婦用の奴隷を買う者は居ない。


身分は元より、病気などもちゃんと把握されてないと娼館では扱えないからだ。


どこからか誘拐してきた女性を娼婦に売り飛ばして~とか、普通に犯罪で捕まるのである。


無論、隠れてやってる奴は居る、それはどんな世界でも同じ事だ。


この奴隷市に居る女性は、行き先は大抵が宿や商店の店子、店員としての仕事が殆どだ。


ある程度立場が保証されているとは言え、労働奴隷なので汚れ仕事をやらされるし、奴隷側も分かってその仕事を受ける、食うに困って野垂れ死ぬよりは多少臭い汚い思いをしても、ちゃんと食べれて着るものを与えられて屋根の下で寝れるのだ。


とは言え、労働奴隷の需要は圧倒的に男性だ。


労働力と言う面では男性に敵う面が少ないのが理由だ、時折魔力が高い為に男性より力強い女性も居るが、そう言う人は率先して売れるので残る事は少ない。


今も、ソーマの視線の先で膝を抱えて佇んでいる少女も、売れずに残っているのだろう。


別に鎖も何もない、首の所に所有者を示す奴隷紋と言われる痣があるだけの普通の少女だ。


格好はボロで薄汚れているが、別にこれは珍しくない、地方の貧しい村では当たり前の格好。


何度か依頼でそう言った村へ行ったことがあるからソーマには分かる、あの少女は口減らしに売られたのだと。


村では子供=労働力である、だが過剰な労働人数や、その中で労働力が劣る女子の扱いは基本低い。


大抵が嫁に行かされ、嫁いだ先が長男なら最高、他の場合は新しく家と土地を切り開かないと行けない。


親は労働力目当てで子供をポンポン拵えるので、地方の村で5人8人兄弟なんて当たり前である。


聖水と治癒魔法の存在が、子供を山ほど拵えるのを手助けしているのもあるのだろう。


そしてどんどん作った子供の中で、男は成人するまで労働力、女は年頃になったら嫁がせる。


だが、その前に食うに困ったら労働力として低い者から売られてその場を凌ぐ。


鬼畜に思えるが、奴隷として売れば売られた先で衣食住が保証される事が殆どなので最悪の未来だけは回避出来る。


親としても断腸の思いが多いだろう、中には金になるからと子供を産んでは売ってる毒親も居るらしいが。


「お客さん、冒険者かね?どうだい、荷物持ちにウチの若い奴隷は。毎日飯を食わせてやればガンガン働くよ!」


少女を眺めていたソーマに気付いた奴隷商が、手近に居る若い男性奴隷を進めてくる。


冒険者が、荷物持ちに奴隷を持つのは珍しい事ではない。


大きな冒険者グループ、クランになると荷物持ち専用の奴隷が数人居るのが当たり前だ。


「奴隷…奴隷か…奴隷なぁ……なぁ店主、奴隷は裏切らんよな?」


「え…?え、えぇ、そりゃ奴隷紋があるし、まぁ気が強い奴は反抗もしますが子供の駄々みたいなもんですよ」


「いや、いやいやいや。こうさ、これから宜しくね!とか今後も長い付き合いになりそうね的な事を言った次の日にこっちの荷物持ち逃げした上に、衛兵に犯されただの物を取られただの通報して濡れ衣着せようとしてくる、そういう事はないよなって話」


「ありませんよ!?え、冒険者ってそんな騙し騙されな仕事なんです!?」


ソーマの言葉にギョッとして首を振る奴隷商。


奴隷商はある意味信用が第一だ、売った奴隷が役に立たない、粗相をする、または犯罪に走ったら売った自分に類が及ぶ。


だから品物であり人材である奴隷の扱いには気を使っている。


「いや、無いならいいんだ、うん、そういう奴の方が少数だよな、俺が運が無いだけだよな…5回も連続で遭遇する運が悪いだけ…むしろ運が良いのか笑えないが」


「お、お客さん…苦労してるんですねぇ…」


ソーマの呟いた言葉に思わず目頭を押さえる奴隷商と、周りで聞いていた奴隷達。


ソーマが見ていた少女も、自分のほうが奴隷で売れ残って大変なのに心配げな目でソーマを見ていた。


「店主、あの少女を売ってくれ。心配いらない、別にやましい理由じゃない…潤いが欲しいんだ…もう次の日の財布や荷物の心配や、濡れ衣が嫌なだけなんだ…」


「ア、ハイ」


情婦目的で女性の奴隷を買う冒険者も少なくない、だが買った以上は衣食住の世話をする義務が発生する。


なので殆どの冒険者は娼館で済ませる、総合的な出費がそちらの方が安いからだ。


情婦目的で奴隷を買えるのなんて、ある程度稼いでる高ランク冒険者位だ。


女性で年も15と若いので、比較的安いとは言えポンと金額を支払うソーマに、高ランク冒険者かなと思う奴隷商。


「あ、あの…よろしくお願いします、ご主人様」


「先ず一つ、これだけは言っておく。裏切るな。俺を絶対に裏切るな。舐めた口を聞いてもタメ口でも我儘言っても悪態を付いても喧嘩売ってきてもいい、全部許す。だが俺を裏切るな。裏切る事だけは許さん、それ以外は全て許す。だから俺を裏切るな……俺に、情を抱いた相手を殺させるな…いいな?」


「は、はいっ」


奴隷市から連れ出し、人気の少ない場所で立ち止まったソーマに少女がおずおずと頭を下げると、ソーマがその肩を掴んで、顔を眼前へと突きつけて、死んだ目を見開いて少女に念押しした。


その迫力と、ソーマから感じる圧倒的な威圧感と恐怖に、少し粗相をしてしまうが、確り頷く少女。


「よし……名前は?」


「ぷ、プラカ村の…ミシュ…です」


スカート状になっている服の股を押さえ、モジモジしながら答えるミシュ。


通常名字があるのは貴族や商人などの立場ある人間であり、ミシュのような村出身者は村や街の名前を最初に付ける。


「ソーマ、ソーマ・ナリシロだ。ミシュ、お前には今後俺の助手として冒険者や商人の真似事をして貰う。あぁ心配するな、その為の装備も環境も強さも全部用意してやる…俺を信じて付いてくれば、あのまま労働奴隷をしていた未来とは格別な未来を用意してやる」


「は…はい…」


名乗り、ミシュの頭を優しく掴んで抱き寄せ、頭にコツンと額を押し当てる。


一瞬羞恥で赤くなるミシュだが、相変わらずの死んだ目の主人にまたもチョロっと粗相が溢れる。


「それじゃ最初に……身体をキレイにしよう」


「は、はひぃ!」


ソーマ的にはニッコリ笑ったつもりだが、目が死んでいる上にこれまでの経験で性根が捻れまくったからか、まるで三日月のような形に釣り上がった口と見開かれた目が、凄く怖くて、ミシュは三度目の粗相をチョロりした。


所謂チョロインである。











「ご、ご主人様、これは一体…と言うかどこから…?」


交易都市から少し離れた森の入口で、ミシュは並べられた物体を目にして困惑していた。


股の辺りを気にしながら徒歩で連れてこられたのは森の入口、もしかして悪どい冒険者がやる肉盾という鬼畜行為の餌食になるのではと不安に思っていたミシュだが、ソーマは森の入口の、少し拓けた平らな場所を探すと、そこに腰の袋からどう考えても入らない大きさの物体を次々取り出して何かの準備を始めた。


「ん?マジックボックスは知らないのか?」


「え、それがマジックボックスなんですか…!?私、てっきりボックスって言うからもっと大きな箱かと…」


魔法がある世界、定番の何でも入るマジックボックスも当然存在する。


だが当然値が張る代物で、上等な物だと豪邸が建つレベルの金額である。


噂には聞いたことがある代物を、まさか主人が持っているとは思わず驚くミシュ。


当然嘘である。


アイテムボックスなんて目じゃないもっと酷いチートの一端である。


取り出してる袋はただの革袋で、実際にそれから出している訳ではない。


誤魔化すために袋から出しているように見せているが、2度目の仲間にこの袋を盗まれ、しかも濡れ衣まで着せられそうになった苦い思い出もある。


それを誤魔化すように、ソーマは取り出した物…耐熱ブロックと、新品のドラム缶をセットしていく。


周囲にはスノコを敷き、木製の階段も設置。


そして大量の水の入ったタンク…飲用可能な非常時用飲料水タンクである。


前の世界では何度も災害が国を襲い、防災という考えが根強くなった。


その為、ソーマが愛用していたオアシス、ホームセンターでも防災グッズの中に、長期保存が可能な飲料水タンクが売られていた。


これが、それである。


それを豪華にもザブザブとドラム缶の中へ入れていく、ドラム缶の蓋は無く、中は綺麗なまま。


当然である、これはドラム缶風呂用セットのドラム缶なのだから。


耐熱ブロックと丁度いいサイズに切断されたドラム缶と保温用の蓋、中に入れるすのこ、さらに入る為の木製の踏み台とその周りに置ける足場すのこまでセットになっているレジャー用品である。


都心のホームセンターでは馴染みがない商品だが、山間のキャンプ場近く等の店舗では扱っていたりするこの商品。


それを、同じものをもう一セット取り出して設置していくその手並みは手慣れている。


何せソーマは日本人だ、異世界に転移しようが若返ろうがその精神は魂の根底に染み付いている、業と言っても過言ではない。


故に、水やお湯で濡らした布で身体を拭くだけなんて、我慢ならないしたくないという思考回路。


これは王道な異世界転移主人公なら気にしないかお金稼いで風呂に入る生活を送るのだろう、だが彼は残念ながらそういう王道からは逸れた男だ。


そう言うのは王族とかヒロインに呼び出された誰かがやっているだろう、彼には関係ないし関係する気もない。


「一瞬で火を…!?ご、ご主人様は魔法使いだったの…あ、ですか?」


「敬語が苦手なら無理に使わなくていいぞ、俺が対処に困る。言っただろう、舐めた口を利いても文句を言っても構わないと。俺を裏切らなければ全部を許してやる」


「はひぃ!」


チャッカマンという文明の利器を持ったソーマに、ずずいっと腐った目で覗き込まれて仰け反りながらちょっぴり粗相をするミシュ。


内心、何その理想過ぎる環境と戸惑い100%だが。


いくら労働奴隷という名前で立場がある程度保証されているとは言え、そんな甘過ぎる関係を許すなんて頭おかしいか博愛主義者()しか有り得ない。


あ、そうか頭が…と内心考えてハッとするミシュ。


彼女の考えを見透かしたような腐った目をした主人であるソーマが見ているが、彼は何も言わずにうんうんと頷いている。


戸惑うミシュだが、彼にしてみれば何を考えているか分からない奴や、笑顔の裏でどう騙して搾り取ろうかと考えている女より万倍マシと言うか癒されるレベルだ。


さて、ドラム缶の下で燃えているのは、やはりソーマが取り出した束になった加工済みの薪である。


煙があまり出ないのでちゃんと乾燥された上質な薪であり、これもやはり地方のホームセンター、特に寒い土地では極普通に売られている物だ。


入り口脇に薪ストーブとセットで置かれている事が多い。


片方には多めに、人が入る事を考えずに水を注ぎ、もう片方は普通よりやや少ない。


適度に薪を入れて後は湯が沸くのを待つだけという状態で、ソーマが取り出したのはメモリが付いた紐…メジャーである。


「背筋を伸ばして両手を真横に上げろ、そして動くな」


「ひぃ…わ、分かりました…!」


謎の紐を手にして近づく主人に、もしかして縛られて煮込まれるのでは、とカニバリズム的な事を考える、チャーシュー的な料理があるのだろう。


「ふむ…細いな」


「やん…っ、ご、ご主人様、くすぐったいよ…で、です」


「だから敬語苦手なら無理に使わなくて良いと言ったろう。他の奴の手前で舐めた口利かなければそれでいい」


流石に周りに舐めた口を利く奴隷を見られると、ソーマが舐められるしミシュの評価も駄目な奴隷として広がってしまう。


メジャーでミシュの身体を計測していくソーマ。


やがて暫くブツブツと数値や英単語をつぶやくと、腰のマジックボックス…に見せかけている布袋から、幾つかのビニールに包まれた品物を取り出す。


「ブラはサイズが良くわからんが、まぁスポーツブラなら問題無いだろ。アウトドア用のシャツとハーフパンツ、厚手の靴下と登山ブーツ、上着は…作業用ので良いか」


ドサドサドサと取り出されるそれは、ホームセンターで売られている下着類やアウトドア向けの衣類などだった。


ブラジャーはサイズとか付け方を知らないから教えられないので、簡単なスポーツブラをセレクト。


ミシュ自身が、痩せた状態なので胸もあまり大きくないから良いかという考えもある。


最近のホムセンってこういう商品が豊富だよなぁと、速乾性とか保温性とかに優れた商品を眺める。


「まだ温いが、身体を洗う分には十分だな…ミシュ」


「え、あ、はい!?」


積まれた衣類をなんだろうこれ、服かなと眺めていたミシュに声を掛けると慌ててこちらへやってくる。


「脱げ」


「はい…はい!?」


「身体を洗うんだ、脱げ」


「あ、そっち…は、はい…」


脱げと言われてもしかしてこんな野原で身体を求められちゃう!?と勘違いしたミシュだが、洗うと言われて納得とちょっと落胆。


落胆した理由は、冒険者の情婦になれれば冒険者が死なない限りは安定した生活を得られるから。


専用の情婦を買うような冒険者は大抵が上位ランクの手練だ、稼ぎも半端ない。


それに情婦になれば、身体を優先してもらえるので、最初にソーマの言った手伝い、つまり冒険者の付き人のような危険な仕事に従事しなくて済むと、先輩奴隷のお姉さんが言っていたのを思い出すミシュ。


「うぅ……」


「遅かれ早かれ全身を俺に見せるんだ、早くしろ」


服を脱ぐが恥ずかしさにモジモジするミシュ、薄汚れていて田舎臭いが、少女である事は間違えようがない。


本来のソーマなら興奮しただろうが、色々捻れた今の彼には、ミシュの羞恥は作業を遅らせる余計な感情でしかない。


なので無慈悲に服を脱がせ、その裸体を青空の下に晒させる、とんだ鬼畜な羞恥ぷれーである。


汚れた衣服と下着代わりの布、紐パンに近いそれを脱がせると、やはりガリガリな肋の浮いた身体に、控えめな胸。


下の毛は生えてないので、ソーマは面倒が減ったなと至極外道な事を考えていた。


「その椅子に座れ」


事前に取り出してあった風呂用の椅子にミシュを座らせると、身体を縮こませるミシュ。


「熱かったら言えよ」


「ひゃっわっ、ご、ご主人様、お湯が勿体無いですよ!?」


多めの水を入れた方のドラム缶から、手桶でぬるま湯を組み上げてミシュの首から下に優しくかけてやると、途端に慌てるミシュ。


彼女達農村部の人間の風呂は、水浴び用の井戸で水を掛けるか、沸かしたお湯に布を付けた濡れタオルで拭くかだ。


お湯を贅沢に掛けて使うなんて勿体なくて出来ないのだ。


「いいから、全身をちゃんと濡らせ」


「は、はいぃ…」


なんなのこのご主人様…と、他に主人を持ったことがないミシュは困惑するしかない。


他の主人を持った経験があれば、変な主人か奇特な人間だと思うのだが、その経験が無いので困るしか出来ないのだ。


「湯で流すだけでも汚れが出るな…」


「す、すみません…」


流したぬるま湯でも茶色くなる状態にポツリと呟いたソーマに、真っ赤になって羞恥に震えるミシュ。


そりゃお前汚いなんて言われたら恥ずかしいに決まっているが、ソーマにそんな配慮は求めてはいけない。


「ちょっと本気出すか」


「へ?」


上着などを脱ぎ、濡れても平気な状態になるソーマ。


その両手には、ミシュの見たことがないモコモコとした物体と、謎のボトル。


そのボトルから白濁した液体をたっぷりと物体へとぶっかけ、そして手桶のお湯を含ませて揉み込むと、途端に白い泡が大量発生。


「な、なんですかそれ…!?」


「石鹸だ」


石鹸って、そんな泡大量に出る物だっけ!?と軽く衝撃を受けるミシュ。


その泡たっぷりの物体…スポンジを、ミシュの背中に当ててゴシゴシ。


「ふひゃん!?」


「我慢しろ、汚れを落とさんと先に進まないだろ」


先って何!?私何されちゃうの!?とスポンジの気持ちいい感触と泡のふわふわ感の同時攻撃に身悶えるしかない。


背中や腕、脇、そして無遠慮に胸や腹、尻に股、足先まで丁寧にゴシゴシと洗われていくミシュ。


後半もうどうにでもして状態で股を洗われていたが、まるで愛車を丁寧に洗うような状態のソーマの姿に、エロい筈なのにエロく見えない不思議。


情緒って大事だなと見ている人が居たとすれば、思った事だろう。


泡が黒っぽくなったらお湯を掛け、またスポンジに石鹸ことボディソープを足して洗うの繰り返しで、垢や土汚れで薄汚れていたミシュが。


何ということでしょう、健康的な肌色と瑞々しい肢体を持つ、綺麗な少女に大変身したではないですか。


顔も同じように洗顔用ソープで洗い、一度鏡を取り出して自分の顔を見せてやる。


高価な鏡をソーマが持っている事に内心驚きつつ、水やガラスに写っていた自分とは比べ物にならない綺麗な鏡の中自分に驚愕するミシュ。


「汚れってのは、人相まで簡単に変えるんだ」


「はい…ありがとうございますご主人様…」


色々恥ずかしくなってもう泣くしか無いミシュ。


そんなミシュに、そうだろうそうだろうショックだろうと頷きながら、髪にお湯をザバー、先ずはリンスをどばー。


セミロング位はあるミシュの髪をワシャワシャと洗うが、やはり長年の皮脂や油で指通りが悪い。


なのでリンスを使って過剰な油分を中和して落とし、かつ次のシャンプーで毛が痛まないようにするテクニック。


今まで水で洗うだけだった髪だ、ダメージも酷いだろうとリンスでしっかり馴染ませ。


洗い流してシャンプーダバー。


ワシャワシャと泡立てる頃には、ミシュはもう好きにしてとなんかビクンビクンしている。


「痒いところはありませんかー」


「ありまひぇん…」


お決まりな台詞を吐くソーマに、ビクンビクンしながら蕩けた声で答える。


髪を洗われる心地よさに蕩けているようだ。


シャンプーも洗い流し、そしてもう一度リンス。


軽く洗い流したら、すっかり汚れや油が落ちて綺麗な栗毛色になった髪を、新品のタオルで丁寧に巻いてやる。


「殆どお湯使い切ったな…」


ドラム缶に大量に沸かしたお湯だが、殆ど無くなっていた。


それだけ汚れが凄かったのだが、まぁ仕方がない。


むしろソーマが綺麗にし過ぎたとも言う。


「ちょっと待ってろ」


「ふぁい…って、きゃっ!?」


蕩けた状態のミシュに声をかけると、その場で脱ぎだすソーマ。


それに気付いて慌てて顔を手で覆うが、お決まりの指の隙間からバッチリ見てる。


この一年近くで鍛えられ、かつレベルが上がった為に相対的に強化された肉体。


傷痕もいくつかあるのを見るに、修羅場も潜っているのだろう。


残ったお湯で手早く身体を洗うと、もう片方の火を消してある方のドラム缶へ。


中敷きのすのこを足場に、ザブリとドラム缶風呂へ入るソーマ、ふぃ~というお決まりな声も流れる。


「ギリギリ入れるか…ミシュ、入れ」


「え…えぇ!?そ、そんな狭い場所にご主人様と!?」


「嫌か」


「嫌とかじゃなくて、そんな、だってご主人様の上に乗る形になっちゃうし、失礼だし…!」


いい感じに頭が蕩けた影響か、言葉遣いが自然になってきている。


変に畏われるよりは自然な言葉の方が良いソーマは指摘せず、良いから入れと強引に混浴させる。


「し、失礼します…うぅ…」


今更な恥ずかしさに顔を染めながら、慎重にドラム缶に入るミシュ。


大きさ的に、ソーマの膝の上に座る形になる、当然ソーマの下半身と触れ合うし、上半身はピッタリ抱き合う形だ。


お湯の量もミシュが入ると丁度溢れる手前にまで上昇し、丁度いい水位になった。


「あ…気持ちいぃ…」


だがそんな恥ずかしさを吹き飛ばす、お湯に入るという感覚。


今まで贅沢と言えば、夏場の水浴び程度。


それが狭いとは言えお湯である。


じんわりと身体を温めるお湯の温度と、ソーマの力強さを感じさせる肉体と鼓動。


半ば納得していたとは言え奴隷として売られ、未来が見えなかったミシュがその温もりと感触に蕩けてしまっても仕方がない。


「あ、あの…しないんですか?」


ソーマの胸板に額を押し付けながら、モジモジと問いかけるミシュ。


彼女の大事な部分にソーマの適度に硬度を増した秘剣が当たっているからだろう。


流石に生理現象までは死んでいなかったらしいソーマ。


だが手は出さない、軽く頭や肩を撫でる程度、愛でる程度だ。


「もう少し、肉が付いたらだな…」


その方が好みだと、腕や足の肉付きを確認するソーマ。


細身の女性は好みだが、細すぎるのは悲壮感を感じてしまい興奮し切れないのだろう。


「……覚悟しときます…」


「うむ」


この主人に何言っても無駄だし、もうなすがままになるしかないと諦めて、ミシュはソーマの身体に縋り付いた。


なおその事を後悔するのは午後からの話である。





ヒロインはチョロッイン(強弁

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