剥き出しの光としてのわたしとして
わたしのこころは
もっとも小さな家である
壁と窓と扉と
天井と床でわたしは出来ている
表のこころは
取り澄ました面を
日中の通りに晒している
わたしのこころには
もっとも小さな暗渠がある
暗い流れが
ぼつりぼつり雨を集め
しとしと滴を落とし
ばばばばばと滂沱の滝となり
裏のこころは
かたちなき逆巻く激しさで
今も流れている
どうして
夜明けに感動なんかして
どうして
0時を打つ時計の針に絶望してしまうのか
そうして
流れているのに
どうして
わたしはまともなんです
こんなに笑えるんです
なんて薄笑いを
ほんとうの夜明けがみたいのです
真っ青な朝日が
小さな家を明らかにする
壁なんか窓なんか扉なんか
天井なんか床なんか いらない
真っすぐに
あの光だけに空っぽであった
このこころを晒したい
世界なんて分からない矛盾に満ちているのだから
わたしなんて分からない矛盾にみちているのだから
論理だけ信じるこころだけ抱いて生きては行けないんだ
ぶ厚いコンクリートを叩き割って
暗がりからわたしの全てを開放するなら
思いもよらない空想が湧き上がり
信じられなかった言葉の本当を知り
びりびりするような晴れやかさで目の前が開けるだろう
胸骨をばきばきと割って
この心臓が羽化する
やがて乾いた羽を震わせて遠く高く飛び去るだろう
呪いなんて時代遅れの
これは……
タイムトリップだ
過去の出来事は
面影は
言葉たちは
感情は
どれ一つだって失われていないんだ
すべてはこの暗渠のどこかに隠れていて
こころの深いところから
間欠泉となって
全部 全部
空へまき散らして
嘘だとかどうでもいいんだ
真実なんて名前でしかないんだ
全てはあるがままであって
誰がどういったって
なんでもかんでも
本当でしかないんだ
だから
わたしたちは矛盾を憎む
こころを作っているのは論理だから
もっとも小さな家を守るために
でも
わたしたちも矛盾なんだ
この小さな家はもう古いって
きっともう分かってるだろう?
新たな放浪へ旅立とう
大切な静かに輝いている想いでの
虹が大きく西から東へ
このアーチを潜り
朝の新しさを
昼の安寧を
夜の騒めきを
全て引き連れて
孤独を恐れずに
矛盾を憎まずに
剥き出しの光としてのわたしとして
感情は暗渠からの噴出する反抗であり
不可思議な涙は矛盾世界との共感。
わたしたちは、いつも遺伝子にインプットされたあるべき世界の姿を追う。
それは傲慢な自虐であり、全てが論理で構築される真っ白な世界。
これからの時代に、破壊よりも手探りの探索を。
古いこころの形よりも、新たなこころの放浪の旅を。




