夜はじっとそれを見つめている
わたしには悲しみが足りないのだろうか
それとも誰もみな足りないのだろうか
どこか乾燥している心の一部
欠落している情緒の湿り
こんなにも亜熱帯に近づく島国なのに
どこか乾きを否定できない日々
記号が支配する街では
人間もまた桝の中に納まり
そこからはみ出ることを許されない
気が付けば
手を伸ばしていた
髪振り乱し叫ぶ
わたし自身から
我慢ばかりしている
わたし自身へと
わたしを区切る
立場という建前を超えようとしている
夜はじっとそれを見つめている
もし一足狂気に踏み込めば
メロンパンの月がふっくらと微笑み
日常の崩壊が近しく迫る
そんなこと
分かり切っているだろうに
道祖神は冷たい
「我慢できない奴は
はみ出るだけさ
世間の外で生きる運があるかい」
野良猫のボスは言う
「まさか
毎日が連続しているなんて嘘を
信じてはいないだろう?」
雲が真実
日々は形なく
時は無常にわたしたちを刻む
ひと時ですら同じであることを許されないのに
明日またね
なんて約束している矛盾
明日を約束するために
文明はあるけれど
今を確かにするためには
約束は時間遅れだから
周り全ての存在への信用なんて
不確かなもので綱渡りしていること
これが悲しみであろうか
確かさなど幻想でしかなくて
唯滅びへと
滅びへと
転がり落ちる爽快感なのだろうか