表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私と貴方と彼女と

作者: 二木浜代季

目の前で1人の青年がめそめそと涙を流している。

「ねえ、どうして貴方は泣いているの?」

私は青年に訊いた。

「大切な人がいなくなってしまったんだ。」

青年はそう言って、また泣き始めてしまう。

「どこか遠くへ行ってしまったの?」

青年は「違うよ。」と答えた。

「違う人の所へ行ってしまったの?」

青年は「それも違う。」と答えた。

「解ったわ。死んでしまったのね。ご愁傷様でございます。」

私がそう言うと、青年はワッと泣き始めてしまって、手が付けられない。どうやら図星だったようだ。

「ねえ、輪廻転生という言葉を貴方は知っている?死んであの世に還った魂が、この世に何度も生まれ変わってくることを言うのよ。知っていた?」

青年は「よくは知らなかった。」と答えた。

「貴方の大切な人も、転成しているかもしれないよ。」

青年は「そうだといいけど。」と捻くれたようにそう答えた。

「貴方にそんなに想われているのだもの。きっとすぐに転成して、すぐに貴方の近くへ来ているハズよ。」

青年は「そんな訳ないじゃないか。」と答えると、またまた目にお水を溜めて流し始めてしまった。

「最近、新しい生命が産まれてくるとかはなかったの?もしくは、何か大切にしているモノはない?」

青年は「僕は犬が好きで、1匹家で飼っているよ。彼女と一緒に選んだ犬さ。すごく可愛いんだ。」と答えた。

「じゃあ、その可愛い犬に貴方の大切な彼女の霊が乗り移っているかもしれないね。」

私がそう言うと、遠くから1匹の犬が駆け寄ってきて、青年に飛びついた。

「ほら。やっぱり彼女なのよ。迎えが来たのだから、さっさと帰りなさい。」

しっしっと、猫を追い払うようにすると、青年は笑顔で犬を抱きしめ、いなくなってしまった。


「いやだわ、私も早く仕事に戻らないと。」

私はそう言うと、暗闇の中に姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ