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夜の都  作者: 水澤しょう
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番外編 So Cute Bunny!! ~2~

 随分と長く歩いたようだが、コーディはあまり疲れを感じない。夢の中だから、体力は無限にあるのだろう。


 あいつと繋がる玉子はまだ見つからない。


 大きな声で名前を呼んだりもしてみたが、玉子ばかりの草原が返事をするわけもなく。


「もう……」


 裏路地では簡単に見つかったのに。まったく。


「アルー……」


 力なく呼んだその時、


「あ」


 それは目の前に、唐突に現れたように見えた。

 赤地に、白い花模様。


「……アル?」


 囁くほどの声で呼びかける。

 すると、



 ぴき ぴきぱき



 玉子にひびが入る。コーディはとっさに身構えた。

 玉子の中から、


「あ――……狭っ苦しいったらないぜ」


 コーディの方に倒れ込むように出てきた青年は、


「でも……よく寝た」


 黒いうさ耳を生やした上に、黒いうさぎの着ぐるみを着たアルだった。


「……え」


 コーディが唖然としてその青年(うさぎ?)を見つめていると、


「あ? お前誰だ?」


 起き上がったアルが伸びをしながら、コーディを見上げた。


「……」

 ばっと口元を押さえる。手の下の顔が、どうしようもなく、にやついているのがわかった。

 なに、こいつ。着ぐるみって。着ぐるみって。しかもうさぎだし。


「……ラブリーなあなたも、なかなか貴重だわね」

「は?」


 しゃがみ込み、アルと視線を合わせる。手を伸ばしてその長い耳に触れると、


「ばっ……な、なにすんだよ!」


 ものすごい勢いで振り払われた。


「なに? 触ると痛いの?」

「ちがっ……そうじゃねえ! けど!」

「じゃあ」


 再び手を伸ばして、うさ耳を撫でる。


「おまっ……くっ……やめ……」


 アルは何かに耐えるように、ぎゅっと目をつぶった。みるみる紅くなる顔に、コーディはぼんやりと思う。


 あらー、耳が敏感なのねー。感じやすいところなのねー。面白ーい。


 反応に満足したコーディが手を離すと、アルは深く息を吐き出した。手で顔を煽ぎ冷ます。


「……誰なんだよ、お前」

「あたしはコーディリア。コーディって呼びなさいね」

「なんで命令形なんだよ……」


 それはあなたに「コーディリア」なんて他人行儀な呼び方をされたくないからよ。とは直接いえるはずもない。


「トミーの紹介でここに来たわ。あなた、名前は?」

「トミー、あいつめ……」


 アルは耳を避けるようにして頭を掻きむしると、


「俺はアルバート。アルって呼ぶなり、バートって呼ぶなり、好きにしろ」


 驚いた。このアルも自分のことを知らないようだが、ルーファスやトムと違って、名前は変わらないようだ。


「……そう。素敵な名前ね」

「だろ。名前は財産なんだぜ」


 名前を褒められて、得意げに腕を組むアル。


「じゃあ、アル」

「なんだ」

「抱きついてもいいかしら」

「…………!?」


 突然のお願いに目を白黒させるアルに、コーディは、はしたない問いだったかしら、と自分の大胆さに自分で驚いていた。さすがは夢の世界だ。


「だめ? だってアル、うさぎの毛でふさふさしてて気持ちよさそうなんだもの」

「……」


 夢の世界でもだめかしら、とやや諦めかけていた時、アルがふい、と顔を背けた。


「アル?」

「――」


 小さな声で、なにかを言ったようだ。残念ながら聞き取れなかったが。


「え?」

「だから!」


 耳まで真っ赤にしながら、ほとんど怒鳴るように言う。

「勝手にしろ……って」

「……」


 またもや口元が緩むのを感じる。

 だめだ。ラブリーで素直なアルは、破壊力が強すぎる。

 うさ耳ルーファスも新鮮で、トムもとんでもなく可愛かったけれど。


「じゃあ、お言葉に甘えようかしら」

「おう」


 そうしてコーディは、何年ぶりかに、思いきりアルに抱きついた。


 *


「――……」


 寝ぼけながら枕を抱きしめていたコーディは、ゆっくりとベッドから起き上がった。


 窓からはさんさんと陽の光が差し込み、サイドチェストには籠に入った色とりどりの玉子が置いてある。一番目につく位置に、赤地に白い花模様の玉子。


「……イースターだから、妙な夢を見たのかしら」


 未だ開き切らない目で、コーディは小さく呟いた。


 Happy Easter!! 〈fin〉

なにが書きたかったんでしょうこれ……

と、とりあえずみなさん、ハッピーイースター!

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