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夏の三角  作者: 役立 愚弐他
夏の三角
9/9

 どれくらい時間が経ったのだろう。

 待てとは言われたが、大人しく待っているのは心配でつらかった。

 考えが頭の中でうずめき、焦りを加速させる。小花が犯人と出て行ったからには、何か策があったからだろうが、それがわからない僕は、ひたすらに心配だった。

 もう待っていられない、探しに行こうと決意して、椅子から立ち上がる瞬間だった。

「泰都君、おまたせ!」

 満面の笑みで彼女が現れた。僕の心配など何処吹く風、むしろ楽しいことがあったかのような、晴れ晴れとした笑顔だった。

 やっぱり彼女に似合う表情はあれだな……いやいや、ストーカーはどうなった。

「泰都君、もう何も心配いらないよ」

 小花は笑顔のままでそう告げる。

「気にかけてくれてたんだよね、ありがとう。でもさっき解決したから、泰都君はこのことについてもう考えなくて大丈夫だよ」

 色々と思うことはあった。訊きたいこともあった。だけれども、被害者であるところの小花がそう言うのだ。

 僕には、それならいいんだ、と言う他になかった。それに、自らの誓いも破らずにすむ。

 それから僕らは、もう一度、先ほどと同じ注文をして、他愛のない話をするのだった。



 翌日、月曜日。

 僕は小花に言われて、校門で彼女を待っている。少なくとも事件が解決したのは事実のようで、僕も小花も何を気にするともなく一日をすごした。

 じっとりと暑い日は続くが、この日は、動かない限りはまだましな一日だった。

 これから迎える本格的な夏。

 暑さには参るが、僕にさえ、確かに何かを期待させるものだった。先のことに思いを馳せていると、ふいに名前を呼ばれた。

「結城、泰都君、だよね」

「え、はい、そうですが……」

 すらりとした体躯、長い髪。緑色のリボンを着けたこの人を、僕は見たことがある。何故僕の名前を知っているのだろうと、僕が驚いている姿を横目に、ふっと笑った後、彼女は言った。

「……なるほど、小花君の言った通りだ」

 その言葉の意味もわからなかったのだが、それを尋ねる前に彼女は続ける。

「実は、小花君を介して、君のことを教えてもらったんだよ。君が私と同じ道を帰るのを見たことがあってね。良かったら一緒に帰らない?」

 僕は戸惑っていたが、そこに小花がやってきた。

「泰都君、お待たせ! あ、香菜実先輩も! 一緒に帰りましょうよ!」

 こうして、僕ら三人は、下校を共にするようになったのだ。

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