一
『ユウキタイト様へ
彼女と付き合ってはいけない。
もしも付き合うと言うのなら、あなたにとって、良くない結果になる。この手で、そうしてみせる。
明日の約束は、破るべきだ。』
出席番号三十七番、学校の下駄箱、僕の靴箱にそんな便箋が入れられていた。
今週の水曜日を境に、考えなければいけないことが急増した。僕は自分の置かれた状況に着いていく為、一人の時間は大抵頭を働かせている。水曜日は彼女の言葉、木曜日は彼女の行動、金曜日はそもそもの理由、そして今日は……。
葛藤は、あった。
今まで考えていたことは、自分自身の問題だった。けれどこれは違う。誰かの為に何かを成すことはしない……それは自分自身の誓いだ。
とは言え、もしかすればことは一刻を争う。そんな状況なら、少なくともこの脳の中を検索するくらいは許されるのではないか。
そもそも気がつくだけで、考える分には僕はそう賢くない。無理矢理な理由をつけて、僕は考えてみることにした。
便箋を見つけたのは、今日の放課後、帰るときのことだ。この便箋が書かれ、僕に送られた訳には心当たりがある。
便箋が予告する通りなら、考える時間は明日の約束までの時間しか残されていない。約束の日にちを変えられるならいいのだが、何せ僕は彼女の連絡先を知らないのだ。
僕は携帯電話を持っていない。必要以上のものを求めるのなら、自分で金を稼いで手に入れろ。というのが我が家の方針で、その為のアルバイトも探してはいたが、生憎まだ僕は働いていないのだ。
その旨を彼女に伝えると、
「じゃあ買ったら絶対に教えてね!」
とまぁ、先の話として片付いた。
ここ三日と同じなら、今日の下校も彼女と一緒のはずだったが、今日は用事があったらしい。話すことはできなかった。約束の変更は難しい。
行かなければいい、という選択肢もあったが、彼女は何時間でも待っているような気がした。ならばと僕は、帰ってからずっとこうして考えている。
冷たい麦茶で喉を潤した後、僕は自室に上がる。現状で考えられることは、三日前のことだ。この日の出来事に答えがあるのではないか。
薄気味悪い印象を感じずにはいられなかったが、この便箋が言うところの彼女、小花は多分、何者かにつけられている。