ヌヴェル43 恋文 雪の夜のともしびの下
掲載日:2026/09/26
男は、恋文をしたためた。
こおりたる
インクの壜を火にかざし
あなたに向けてしたためる
ペンに想いめぐらせば
夜のしじまはいっそ深まり
さびしき心を凍てつかす
そういえば
さっきから雪が降っているのだ
あなたにつのる想いのように
しんしんと
しんしんと
雪が降っているのだ
男は、恋文を四つ折りにし白い封筒に入れると脇机の抽斗を開けた。
そこは白い封筒で溢れていた。
男は、躊躇うことなくその中に封筒を入れた。
窓の外、雪が降っている。
あらゆる音が雪に吸い込まれていくような夜。
男は抽斗を見ながら、次の休みの日には整理をしなければいけないなと呟いた。
参考 石川啄木 作短歌 こほりたるインクの壜を火に翳し涙ながれぬともしびの下




