御前試合
「二年?」
お上の御前にて力を競い合う、腕に覚えの猛者たち。召し抱えられれば、全てが保証される。ある者はそれを追い、ある者はただ勝つために、競う。二年後を目指し、動き出した者がいるというのだが、俺には信じられなかった。
お上の御前試合は、時に行われないものだ。前触れもなく立ち消え、誰もその実情を知らない。武芸者たるもの、常在戦場。仕上げているようでは話にならぬ、と思っていたのだが、二年。これが一年であれば、まだ理解するのだが……俺が考えていると、丸越がささやいた。
「本当はなかったんじゃねえか?」
以前は十年で消えた。その通りにというなら、もうない。今年集まった武芸者たちに、無理を言う代わりに二年分を約束した。二年あれば、腕を磨ける。より強く、より鋭く。できないことではない。その場にいる者たちは、皆願っている。もっと。お上からの、垂涎の申し出に、飛びつかない者はまずいないだろう。動き始めた猛者たちは、これからもう二年を死に物狂いで生きる。その、絶好の機会だったのではないか。ならば、ありえないとは言えない。
……バカな、と俺はかぶりを振った。いくらなんでも……ただ、それならば……あながち無駄では、なかったのかもしれない。俺は爺様の形見を手に、大きく振りかぶった。




