EP6 たまには息抜き。
ここの酒場はウルスの行きつけらしい。マスターとは顔見知りで、少し安くしてくれるみたいだ。
そんなイメージはなかったが、話を聞いている限りは、酒豪らしい。
…覗くのはやめよう。多分、すぐ分かる。
ハイル「にしても、この国は名の通り寒いけど、人は暖かいな。ボルケーノとは違う。…もうあそこには行きたくないな。」
マイト「そうだね。ホルーレの言っていた通りだ。いい国だし、スキーも楽しかった。」
ウルス「ボルケーノから来たのね。あの街は…そうね。私も行きたくないわ。この国は、ボルケーノからは何も仕入れていない。…そう、あの鉱石もね。」
マイト「…ウルスくらいの実力者なら分かるんだね。知りたくなかったよ。」
ハイル「宴だ。もうその話は終わりにしよう。さ、飲もうか。」
マイト「ごめん。そうだね。」
ウルス「ウィスキ一つ、ビール二つで。」
………多分すぐ酔うな、ウルスは。
ウルス「そういや貴方達はどういう関係?かなり仲が良さそうだけれど。」
ハイル「…同業者だ。ボルケーノ鉱山でたまたま会った。それから一緒に過ごしている。」
ウルス「………忌み子同士って訳ね。私は忌み子でもないし、呪いにもかかっていない。貴方達を見て、すぐ分かったわ。オーラが違うもの。そして、特徴がある。文献で見ただけだから、詳しくは知らないけれど。 実力のある忌み子には、模様が浮かぶ。戦闘の時、一瞬だけ。ハイルはわかりやすいわね。マイトのは分からないけれど。」
どうやらウルスはお酒を飲むと饒舌らしい。…まあ、酒豪って言ってはいたが、寂しくて飲む相手が欲しかったんだろう。貴族の生まれだから、プライド的なものなのだろうな。
けど、いい事を聞けた。つまり忌み子の区別はしやすいって訳だ。これからはより警戒をした方がいいな。
剣士狩りの件もあるし。
ハイル「忌み子同士というか………言うか悩んでいたんだが……… いや、今はまだ話す時じゃないか。忘れてくれ。」
ウルス「…………なるほどね。大体理解したわ。貴方達は……」
席を外している時に、二人で話していたようだ。不思議な事に、この二人の心や思考は読めない。…信頼を持つと、多分使えないのだろう。戦闘時以外は。
ハイル「ほら、マイトも飲め。息抜きも必要だからな。」
勝負、と言っていたがハイルには勝てそうにもない。もう10杯以上は飲んでいる。
………ウルスの絡みも少し面倒になってきたが。
ウルス「貴方達とってもタイプなの ねえ、少しくらいいいでしょ?ね? この国じゃ貴方達みたいなイケメン、少ないのよ だから、ね?」
ハイル「遠慮しとく。美人だけどタイプじゃない。」
ウルス「私みたいないい女を振るの?! 顔も体型も完璧よ?! ハイルってもしかして…」
ハイル「いや、それは違う それは」
ウルス「ふーん、そうなのね」
…………歳上なんだよな? なんか…………貴族ってこうなのか? ソルトでもこんな事があったな…
ウルス「そういや貴方達恋人はいた事あるの?」
ハイル「ああ、そりゃ何人も。」
マイト「え?あ、ああ、いたよ。可愛かったな。」
………勿論嘘である。恋人はおろか、そういう行為すら……… いや、そういう行為はあったか。
ウルス「マイト貴方もしかして」
マイト「いや!それはない!した事くらいは!」
ウルス「あらあら。こういう時だけ坊やね。してあげようか?」
………正直に言うとウルスはタイプだ。けど……なんかしちゃいけない気がする
ハイル「よっ!色男!」
マイト「そんなんじゃない!」
ぐいっとビールを飲んで、二人に捲し立てた。
マイト「大体ハイルはいつも宿屋でその…してるだろ?! たまに寝付けないんだよ!」
………けど女の人の声は聞こえてこない。………そういう癖でもあるのか?
マイト「ウルスもそういう身だしなみはどうなんだ?!誘い待ちみたいなもんじゃないか!!」
頭がふわふわしてきた。今僕はなにを言ってるんだろう。
マイト「そうやって男食ってきたんだろ?!そりゃ美人だもんな!!! 経験豊富だもんね!!」
ハイル「………」
ウルス「………いや…その…」
マイト「じゃあ僕がしてやろうか!!このスケベ女め!!!」
ウルス「……………」
ハイル「そのくらいにしておけ、な?」
マイト「そうやって気取ってるハイルも好きじゃなーい!さっきまで飲みまくってたのに!!!」
ハイル「…………」
スッキリした。寝よう。
ハイル「…………可愛いな。ちょっとくらいなら……」
ウルス「………可愛い。好きになっちゃいそう。」
なんだか柔らかい感触と、なにか硬い物を握りながら、僕は眠りに落ちた。
起きると頭がズキズキする。飲みすぎたかな。記憶がない。
ハイル「おはよう、マイト。アイスダイヤでもう少し休んだら、出発しよう。次はアカシアオジギだ。森だから、少し警戒がいる。」
ウルス「私も着いていくわ。許可を貰ってきた。改めて、これからよろしくね。」
ウルス「それと昨日………可愛かったわ。」
ハイル「ああ…それには同意する。」
二人が顔を見合わせてニヤニヤしている。…おそらく何か僕がしたんだろう。けど思い出せそうにない。
ウルス「ああ、伝え忘れていた事があるわね。手紙が来ていたわよ。」
手紙?誰からだろう。どうやって知ったのかな。
ウルス「クルスって子からよ。どうやらボルケーノから情報が伝わったらしいわ。」
クルスか。なんだか嬉しいな。そうか。なら郵便物も届いたな。喜んでくれるといいんだが。
ウルス「貴方の妹、いい子ね。顔も綺麗。」
ああ、僕の鞄からクルスの写真を見たのか。妹が褒められるのは嬉しいな。
マイト「ああ、ありがとう。今度会えたら伝えるよ。まあ、当分会えないと思うけれど。」
ウルス「まあ、そうね。ゆっくり頑張りましょう。」
どうやらウルスは博識な様だ。僕達の使命もよく知っている。こんなにいい魔術師は少ない。丁重に扱おう。
ハイル「この国で得れたことはあったか?」
マイト「そうだね。あった。人の暖かさと、魔術だ。」
ウルス「あら、いつの間に。その分厚い辞典、読んだのね。」
二人が行動している間、図書館に行っていた。魔術に関するものが沢山あったので、一つお金を出して買わせてもらった。この辞典を完全に理解出来れば、かなり力になりそうだ。
ウルス「その辞典を理解出来れば、私の8割くらいの力は出せるわ。貴方にはセンスがある。期待しているわ。」
色んな場所を見た。綺麗な国だなと、再認識した。
もう少しいても良かったが、甘えているとまた傷つく人がいるかもしれない。気を引き締め直した。
門を出ると、ホルーレが待ってくれていた。
ホルーレ「アイスダイヤ、楽しかったなの?」
ハイル「ああ、楽しかった。とっても。そして、美人な魔術師も仲間になった。」
ホルーレ「ほんとなの!美人さんなの!これからよろしくお願いしますなの!」
ウルス「………本当にいい馬ね。最高。」
本当にホルーレは優しい。僕達三人が乗っても、まだ人が二人は乗れるくらいのサイズがある。
ホルーレ「次はどこにいくなの?」
ハイル「アカシアオジギ。そこを抜けたらウインドストームだ。」
ホルーレ「あそこはちょっと危ないなの けど私も着いていけるの!頑張るなの!」
ホルーレみたいな子が危ないって言うなら、かなり危ないのだろう。ハイルもウルスも、あまり詳しくはないらしい。危険という情報しかないのだ。
休息は出来た。さあ、また前に進もう。




