0-3 発動
2時間走って1時間ハグ。
2時間筋トレして1時間ハグ。
それを繰り返して寝るときはいろいろハグした。
うん。いろいろ。
初日からめちゃくちゃに幸せすぎた。
とにかくがんばりました。
翌朝。
といっても朝晩の区別がつかないのでなんとなくなのだけど。
起きてみたら明らかに寝る前と体調が違った。
「なんか違う」
「外見はね。でも神気はそんなすぐには馴染まないよ。まあ待つことだ」
なんか身体はもう10代後半の頃になったらしい。
自分でもこのあたりがいちばん動けた気がする。
いいことしかないぞこの遭難。
神様ありがとう。
あ、だからここに女神がいるんだった。
それにしても……力がみなぎる。
明らかにとてつもない力が湧き上がってきているぞ。
「いや、なんかイケそうな気がする」
その場で飛び上がってみた。
めちゃくちゃ高く飛べた。
「え!? なに!?」
「ほらな!」
「なんだそれ。ありえないけど」
「やっぱりたくさんくっついたのが効いたんだよ」
「……。ヤメロ」
「もっとくっつくべきだ。……早く出られるぞ」
「!? なにいってんのよ!」
「というか、オレは戻れなくても幸せだけど」
「 ……嬉しいです。ダメだ帰るぞ!」
とかいいつつ、朝からあれこれとくっついて神力を馴染ませるのだった。
―――――――
しっかりと育んだ。
若返ったから昨日より激しく育みました。
「…………。今日からスキルを渡していくからな」
「おお、ついに!」
「どれが有効かわからないから順番にね。1日ひとつずつテストする」
「そんなペースなのか?」
「シシならもしかしたらふたつくらいいけるかもしれないけどな。慌てずやりましょう」
「どんなスキルがあるんだ?」
あれこれ聞き出してふたりで検討した結果、脱出に使えそうな次の3つの譲渡を試すことになった。
【肉体強化】【転移】【攻撃魔法】
まずは肉体強化。
いつものようにハグをして受け取る。
すんなり。
というかあまり変化がない。
「これはもう渡せてたみたいだね。ありえないけどな」
「だよな。あんだけジャンプできてたし。次は転移か!」
「転移は神気の扱いが難しいんだよ。ショウは先に攻撃魔法にしておくのがいいかも」
ハグする。
少し複雑な感覚がまず入り込み、すぐにそれが溶け込んでいくのがわかった。
「ん。もらった」
感覚的に使い方は理解した。
いちばん強そうなのは……雷かな?
「雷撃」
途端に指先から雷が迸る。
だが何も起きない。何もないから。
「とんでもない出力だな。……すごいよ」
「そうなのか? 比較対象がないからわからないよ」
「もし戻れてもその力は使わないほうがいいぞ。とんでもないことになりますね」
「ん? そうなの? まあわかったよ」
次に風。
空間を斬るイメージかな。
とりあえず撃ち込んでみる。
「カマイタチ」
鋭い旋風が巻き起こる。
少し先の空間が少し歪んだ気がする。
「なんかいい感じだぞ」
連続で発動してみる。
たしかに空間が揺らいでいる。
「強めの風でしっかり神気を込めて……強そうな名前がいいな。………乱舞!」
より鋭い旋風が連続で叩きつけられる。
明らかに空間が斬れた。
すぐに閉じてしまったが。
「なあ! なんかいけそうじゃね?」
後ろをみると口をあんぐりと開けた女神がいた。
「なんだそれは。めちゃくちゃよ」
「え、そうか?」
「そこらの神の一撃より上だ。信じられないよ」
「たくさん繋がったからかな」
「ヤメロ。……恥ずかしい」
かわいいが止まらんな。
とりあえずハグしておこう。
「それにしてもすごいよ。ふたつも渡せるなんておかしいぞ」
「なんか感覚的には全然余裕だぞ」
「おかしいだろ……元は私の器なのにな」
「よほど相性がよかったんだな」
「聞いたことはあるな、シンクロの相乗効果か。そんなのよほどのことよ」
「まあ女神さんと特別に相性いいのは実感してるよ」
「だからヤメロ。……そうだよね」
「せっかくだからほかにも貰ってみるか」
「無理だろ。そんなに入らないと思う」
器の上限というのがあるらしい。
とりあえず話し合って欲しいものを順番に並べてみた。
【転移】
【神眼】
【時間停止】
【収納】
【クリエイト】
【コピー】
【予知】
「悪くないな。いいと思うよ」
「本当は収納が一番欲しい。おなかすいたんだ」
「神気があるからもう問題ないはずだぞ。おなかすくの?」
「そういうことじゃないんだよ。食べることは大事なことだ!」
「でも収納の中身はカラだぞ。最初はなにもないのよ」
「え、そうなの? いろいろ詰まってるのかと思ってた。ならクリエイトを先にしようかな」
「クリエイトも食べ物を作れるか知らないぞ。そんな使い方、聞いたことないよ」
そこでオレは思っていたことを話す。
「あのさ、その前にやっぱり名前が欲しいよ」
「は? なんで?」
「女神って呼びにくい」
「別にいらないだろ。そんなに付けたいの?」
「まあここではふたりきりだからいいんだよ。でも外に出たら名前は必要だろ。ていうか、やっぱり好きな人の名前を呼びたいし」
「え? え?」
「え?」
「……ここを出たら別々だろ。一緒にいるつもりだったの?」
「え! そんなの当たり前。え! なに? もしかしてどっか行っちゃうつもりなのか?」
「……いいの? いまさら神界には戻れないし行くとこなんてないけど」
「当たり前だ! 手放すはずがない。だったら一緒に住めばいいよ」
「……まあシシがそういうなら。……いいのかな。嬉しい」
「あーびっくりした。じゃ名前な。何がいいかなあ。見た目、明らかに日本人じゃないもんな」
女神は英語でなんだっけ。
アフロディーテか。
美の神だよな。ぴったりだ。
でも長いな。愛称アフロはいかん。
日本神話は……木花咲耶姫だな。
コノハナサクヤヒメ。
木花で「このは」か、咲耶で「さくや」。
おお! どっちもいいな! 聞いてみるか。
「なあ、木花と咲耶ってどうかな」
「……綺麗な名前だな。……どんな意味なの?」
「オレ小さな頃から日本神話が大好きでさ。日本で一番美しい女神の名前が木花咲耶姫っていうんだよ。『このは』か『さくや』で迷ってるんだ」
「………ここでふたつ名前が出てくるんだな。もういいか。……もういいよね。ねえどっちがいい?」
なんかブツブツ言ってるな。
「シシ、両方もらうよ。私が咲耶にする/ショウ、私は木花にするね」
「ん?」
「シシ、私たちはふたりでひとりだ/ショウには打ち明けておくね」
「なんだーーーー!?」
女神はふたりでひとりだった。




