表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/120

0-1 出会う



それは地方のロケ現場に向かう途中のこと。


旧知の事務所の社長がどうしても見てほしい新人がいるというので久しぶりに現場に顔を出すことにした。


現場が山の中だったので、地図で指定された麓の駐車場にクルマを停めてから林道を歩く。

香盤は気にせずゆっくり来てくれていいと言われているので午前中オフィスで仕事を済ませてからのんびり現場入りした。


特に観光名所でもない山の中。

当然誰も歩いている人は居ない。

澄んだ空気は気持ちよく、森林浴を楽しみながら歩いていると、やけに寂れた神社が目に入った。


香盤についてる手書きの地図ではこのまま道なりに10分ほどぐるっと歩いていけば着くようだが、携帯ナビによるとロケ地はこの裏手を抜けたあたりだ。


今思えば。


地図にもナビにも神社は記載されてなかった。


その神社を通り抜けてショートカットしようとしたらこうなった。


神社の裏から林道が見えたので山に分け入ったらなんかストンと落ちた。



で、かれこれもう5分くらい落ちている。



最初はくだらない走馬灯もどきを回想してたけど、これは明らかにおかしい。


落っこちすぎて少し冷静になりつつある。


というか落ちていると思っていたけれど、だんだん落ちている感じがしなくなってきた。


なんか浮いてるのかも。

そう思ったら浮遊感が纏わりついてきた。


やがてゆっくり着地した。 

地面はないけど。不思議と歩ける。


あたりを見渡すと少し明るい感じがする方向を見つけた。


明るくないがそんな感じなのである。


ここまで不思議なことが続くともう怖いものはないのでスタスタ歩いてそちらへ向かう。


急にふわっと優しい光に包まれる。



何も無い空間には、女の人が寝転んでいた。 



真白なワンピースを着て顔はこちらを向いている。

大人に見えるけどまだ未成年のような気もする。

明らかにめちゃくちゃ整った顔立ちをしているけれど、綺麗なんだかかわいいんだかわからない。


というか。

はっきり言って見た瞬間から好きになってた。

こんなことあるんだな。

顔もそうだけど、なんか惹かれるんだ。

おっさんなのにダメだな。


まあ勝手な一目惚れは置いておくことにした。


明らかに怪しいけど、ほかにどうしようもないのでとりあえず声をかけてみる。


「こんにちは」


身動きしない。


近づいてみたら寝息が聞こえる。

寝ているな。

この展開はどう考えれば?


明らかに普通じゃない。

死んだ覚えはないが死後の世界っていうのがいちばん納得できるシチュエーションかもしれない。

でもこんな時は意外とパニックにならないもんなんだな。


何度か声をかけるが起きる気配がない。

スヤスヤである。


「事案になるかなあ。いや明らかに異常事態だしいいか」


私は少し肩を揺すってみた。


「大丈夫? 起きてください」


突然、女の子の目が開く。


しばらく私を見つめたあと―――叫んだ。


「うわーーーーー! いたーーーーー!」


「え?」


「ねえ! どこから来たの? おい! どこから出られるんだ? ねえねえ! おい! てかあなた誰ーーー! 」


めちゃくちゃパニクってますやん。


「いや、こっちが聞きたい感じかな」


「あなたも!? なんだよ迷子かよーーーー!」


女の子はうつ伏せになって手足をバタバタさせている。


「全力でガッカリしてるね」


「するわよ! ガッカリしかしてねーし!」


「あのさ、オレもわけわからないんだわ。ちょっと落ち着いて話しようよ」


1分ほどでバタバタには飽きたようだ。


「さみしかった。もうずっとひとりだからな」


「そんなにここにいるの?」


「誰かとお話ししたのは……。うん、100年ぶりだな」


「は?」


「? なに?」


「いろいろ。どこからツッコめばいいんだ」


「なんかヘンだったかな。どこに疑問があるんだ?」


「おなか空くよね? トイレは? 子どもだよね?」


「空かないよ。しないし、大人だ!」


「……人間?」


「神よ。女神だ」


「…………」


「? なに?」


「いや、たぶん普通は驚くか否定するとこだと思うんだけどさ、まあ本物なんだろうなと思って」


「すごいね。なかなか落ち着いてるな」


「いやそうでもないけど。てか神様が出られないなら戻るのは無理なのは確定だなあと思って。ここまで落ちるのも普通じゃなかったし。あの世かと思ったけど違うっぽいな。なんか次元の狭間的なやつだよねここ」


「そうよ。そんな感じだな」


「詰んだなあって思って落ち込んでるよ」


「どういうこと? なんでよ」


「オレ人間だし。おなかもすくし、トイレもいく。水飲まないと3日で死ぬらしいよ」


「あら大変。その割には軽いな」


「それはオレも不思議なんだわ。普通ならパニックになりそうなもんなんだけど、いざなってみると意外と普通っていうか」


「落ち着いているのね。まあたまにいるけどな」


「だよな、彼女にフラれてこの世の終わりって言ってもお腹はすくしな。幽霊とかUFOなんて見たらもう怖くて二度と眠れなくなるとか思ってたけど普通に寝るし」


「そんなの見たことあるの? すごいじゃないか」


「見たことあるよ。子供の頃に。UFOなんて家族とご近所さんみんなで見たから間違いじゃない。でもなんでかみんな普通に生活してたなあ」


「あら。それは本物だな」


「え、そうなの?」


「本当に見ちゃいけないものを見たときは補正がかかるものなのよ。知らないのか?」


「知らないし。でもなるほど、補正ね。なんかピンとくるわ。変だと思ったんだよ。あんなに凄い経験したのにそれほど人に話そうとしなかったし、なんか知らない間に忘れてたりする」


「……あなたセンスいいわね。見込みあるぞ」


「ん?」


「いけるかも。……いけるな」


「なんだよ、怖いな」


「私はいま神力を使えない。でも人には力を与えられるの。すごいだろ」


「おお!」


「あなたとなら。ここから抜け出せるかもな」



お読みいただきありがとうございます。


迷子の女神と出会いました。

ここからテンポよく展開していきたいと思いますのでどうぞお付き合いください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ