1-⑭ 真相露呈
「では続きまして太陽プロ田城社長よりお願いします」
「本日は会見にお越しいただきありがとうございます。この度は野村の件でお騒がせしました。ご心配をおかけしたファンの皆様、関係者の方々には心よりお詫びいたします」
卓司も立ち上がり頭を下げる。
ただしほんの数秒。
なにも悪いことはしてないからな。
「では今回の記事についての説明を野村からさせていただきます」
「野村です。宜しくお願いします」
フラッシュが続く。
「先にお伝えしておきますね。写真を撮るなら私ではありません。カメラは全て大波さんたちに向けるべきだとお知らせしておきます」
場内がざわめく。
「まず私はここ数日悪質なストーカー被害に遭っておりました。警察にも相談しています」
警察への相談、これは後付だ。
微妙な言い回しだが嘘はついてない。
「ですので実は事件当日にも民間に警備を依頼していました。警備担当の方をご紹介します」
はい、私、再登場です。
認識変更で顔も年齢も変えてるけどね。
「私、警備担当の守山といいます。このような会見は不慣れですがどうかご容赦ください」
卓司が引き取る。
「守山さんからのアドバイスで、廊下と部屋に防犯カメラをセットしていました。記事で事件があったとされた日、同棲相手を自称している方が……誓って私は会ったことのない女性ですが……薬物を発見したというその日ですが、私は遠方の仕事で不在でした。そしてこちらがその時の映像です」
場内に映像が流れる。
次は私の番だ。
「私から説明します。まず男性がピッキングをしているのがわかると思います。はい、開けて侵入しました。続いて女性です。なお、ピッキングの痕跡が確認できたのでこの映像とともにすでに警察には被害届を出してあります」
会場が静かにどよめく。
「いま女性が行っているのは同棲相手がいた証拠を捏造するための工作です。下着まで洗濯機にいれる徹底ぶりです」
さらにどよめきは大きくなる。
「ここが重要です。薬物が発見されたというクローゼットに男性が入ってきました。手に持っているのは持ち込んだ衣装です。女性の服も並べてますね、あ、いま置いたのは薬物が見つかったとされる衣装ですね。大波さんの記事に出てきたものです。はい、いま薬物を入れました。はっきりと映っています」
会場は静まり返った。
「……守山さんありがとうございます。皆さん、私は無実です。犯人たちに嵌められたのはおわかりいただけたと思います。先ほどシャターを狙うべき相手が違うと言いましたが、それはこの事件が大波さんの単なる誤報という意味ではありません。お願いします」
「少し動画が暗いので明るくします。お待ち下さいね。はい、ここです。拡大します」
「ありがとう。この男性、見覚えがありますよね。先ほど質問した大波の記者です」
ざわめきがさらに大きくなりついには怒号が交じる。
逃げようとする大波の記者を、ほかの記者が取り押さえる。
編集長は大汗をかいて狼狽えているが、離席していない。
部下を切って自分は逃げるつもりのようだ。
そうはいかないよ。
「映像はこれだけではありません。深刻な被害に遭っていた私はマンションの外も守山さんに見張ってもらっていました。……おや? 越野編集長、どちらへ行かれるのですか? これからあなたの出番ですよ?」
察した記者たちが越野を取り囲む。
「表に不審なクルマが止まったのを見て、私は咄嗟に中の様子を動画とスチールで撮影しました。それがこちらです」
車内で笑っている越野と侵入した記者と女が映し出される。
「越野さん、何か言うことはありますか?」
「ち、ちが、ちがう。ちがう。ちがう」
越野はその場で失禁して動けなくなり、ついには失神したのだった。
「ここからまた私が説明します。彼らが嫌がらせをしているストーカー犯だと確信した私はこのまま犯人グループを追跡しました。そのクルマが戻ったのはこの建物でした」
録画を早回しして、車両が入っていくビルを追うと白木プロという看板が映る。
場内はまたも静まりかえる。
「ここからは私の勇み足ですが、私は不法侵入をしてしまいます。この罪は追って償います」
会場はあまりの展開に静かなまま。
「エレベーターが最上階で止まったのを見届けた私は遅れて追いかけてこの映像と写真を撮りました」
そこには実行犯3人と大笑いをする白木社長、そして俳優の影田雅司が実行犯と乾杯をしている姿があったのだった。
マイクを田城社長が引き取る。
「以上が今回の真相でした。後のことは警察に委ねます。すべての証拠も預けるつもりです。
わかっていることは野村は潔白であること。
薬物を所持し仕込んだのは週刊大波であること。
記事は完全な捏造であること。
そこに白木プロの社長と所属俳優の影田さんが関与していること。
本日お伝えししたかったのは以上です」
場内が大きなどよめきをあげたのだった。
速報中継を始めるマスコミ、白木プロに走る記者、影田の居場所を探す電話。
会見場は一気に過熱したのであった。




