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1-⑫ 告白からのブチギレ



「とんでもない話だが……本当だろうな」

「シシさんが嘘つく意味ないですもんね」


「とりあえず認識変化を外しますね」


17歳相当の姿に戻すとふたりは目を見開いて絶句する。


「シシ、それはちょっと羨ましいぞ」

「かっこいい! シシさん俳優やりましょうよ」


何を言い出すんだこの人たちは。


わかりやすい収納のスキルを実演して、姿は見えないもののナビィも紹介した。


「なんかボクの事件なんかよりよっぽどデカい事件だと思うんですけど」


「確かに。世界がひっくり返るな。よし、シシをゆするか!」


「勘弁してくださいよ。とりあえず素材はひと通り渡しますけど、使える使えないは判断してくださいね。自宅は防犯カメラを付けていたといえば大丈夫ですよね」


「ボクの無実は確定できる。実行犯もアウトだね。でも黒幕ふたりを捕まえないと意味がないか」


「クルマと事務所の分は盗撮、盗聴だと反論されると証拠能力は無くなるだろうな」


「個人的な意見ですけど。私なら法的な処罰より社会的抹殺を望みますよ。法的にアウトでもこれを出せば彼らのやったことは間違いなく証明できる。この業界では生き残れないでしょう」


「確かにな。オレも賛成だ」


「ボクもそれで大丈夫です」   


「それにしてもシシがこんなに怒っているのは初めてみたな」


「小さな人間なんですよ。オレはゴシップが大嫌いなんです。もちろんダメなものはダメだ。でもコソコソ嗅ぎ回って勝手に人の秘密を晒して人生ぶち壊しておきながら、さもそれが正義だと偉そうにしてるのは気に食わないんです。同じ業界にいてほしくない。オレは今回で週刊大波を潰しておきたい」


「決まりだな」

「ええ」


私たちは週刊大波の発売日に記者会見を開くことにした。


―――――――


発売日前日には週刊大波の記事がメディアにリークされ、世間は大騒ぎとなった。


警察も動くという噂が流れた。


編集長の越野はニヤけた顔写真とともにテレビに偉そうなコメントを出している。


まあせいぜい楽しんでろ。

お前はあと1日で終わりだからな。


「あー、オレってマジでこいつが嫌いなんだな。マイナス感情が止まらないよ。いま完全に悪役のセリフを脳内で発したよ」 


「珍しいねー/珍しいな」

「シシさんらしくないよ」


「このデリカシーの無さがそもそも生理的に無理。今回のヤラセは当然、同じ雑誌編集者として無理。人間として無理。はあ、ダメだなあオレ」


「立派な動機ですよ。ひとつめの理由は世間の人たちもみんな同じだと思います」


「こんなやつのコメント拾うメディアもバカだよ。なに写真まで用意して勘違いも甚だしいだろ。持ち込みかこれ。目線外してんじゃねえよ。奇跡の一枚か? あーー! だめだ。負のスパイラルが止まらない! あと1日待てる気がしない。ちょっと散歩してくる!」


頭を冷やそうと部屋着から服を着替える。  

玄関を開けるとそこに待ち受けていたのはその人、週刊大波のクズ編集長、越野だった。


スタッフを連れて勝手に門扉の中に入り込んできてバンバンフラッシュを焚いて写真を撮ってくる。

動画も回しているようだ。


「あなたここの人? ここに野村卓司容疑者がいるって聞いたんですよ。出してもらえますか?」


は? こいつは何だ? 何を言ってる?


「あの、あなたはどなたですか? これは何ですか?」


「容疑者、ここにいるんでしょ。あんたこのままだと犯人隠匿罪ですよ」  


そう言って家の中を映そうとどんどん玄関に押し寄せてくる。


あー、ダメだ。無理。


「なにいきなりひとんちで暴れてるんですか? ここ敷地内だけど大丈夫そう? まず名乗れと言っているんだけど、わかんないのかな? 名前も名乗らない人に話すことなんてねえんだよ。(あ、抑えろ)あと容疑者ってなんだ? 犯人隠匿罪だ? 警察なんてまだ介入してねえだろうが。(無理だわ)てめえの記事がすべて正しいって思ってんのかよ!このクズが!」


いかーん。ブチギレてしまった。


本気の怒気にこいつ、腰抜かして漏らしちゃったけど。


「な、なんなんだお前! 暴行罪だ!」


「バカなのかな? 指一本触れてないよ。あとお前なんか漏らしてるぞ。ひとんちで何してくれてんだよ。掃除しとけよ」


「な、なんだと!『おい、バカ映すな!』おいお前、覚えとけよ。絶対に晒してやるからな」


「晒すってやっぱりそんな気持ちで雑誌作ってるんだな。お前クズすぎだよ。それにまた犯人っつったな。お前こそ覚悟しとけよ。オレは友人である野村卓司を信じている。あの人は間違いなく無実だ。犯人呼ばわりするやつは許さねえからな!」


「なんだこのガキ、おまえ誰に物言ってるかわかってんのか?」


「知るかよ! お前なんか勘違いしてねえか? お前みたいに他人の秘密を勝手に漁って晒して人生ぶち壊しておきながら正義ヅラしてるヤツがオレはいちばん気に食わないんだよ。同じ業界にお前みたいなのがいるのが許せねえんだわ。よくメディアに出てこれるな。どんだけデリカシーないんだよ。周りもちゃんと冷静になれよな。こんなヤツをテレビに映すな」 


「な! なんなんだキサマは!」


(あ、オレ17歳バージョンじゃん。やべえ) 


「お前がなんなんだよ。まずここはオレの家の敷地内だ。自分の不法侵入を動画で公開してバカなのか?」


思わずジリジリ下がっていくクズ越野。


「おいおい、なにそろりそろり下がってんだ? とっくに不法侵入成立してるぞー」


「う、うるさい! 容疑者を出せ」


「あのな、バカなのかな? だからまだ警察介入してねえよな! オレの親友を容疑者呼ばわりすんのはやめろっつってんだろ。何回言わせんだよ。クズな上にバカなのか?」


「う、うるさい!こっちは証拠を握ってるんだよ!」


「うるせえな! 明日会見やるから待ってろ!」

(あ、オレが宣言してどうする)


そこに卓司が玄関から出てきた。


「あ、野村容疑者です! 容疑者が現れました!」


「てめえまだ言ってやがんのか!」  


熱り立つ私を卓司が止める。


「シシさん、大丈夫だ。ありがとう」


「越野さん、明日会見を開きますから続きはそこでお願いします。ここは友人の家です。速やかに出ていってください。これ以上は本当に不法侵入で訴えますよ」 


「!」


「これ生配信してますよね。もう一度言いますよ。明日会見を開きます。逃げも隠れもしない。ここは大切な友人の家だ。……今すぐ出ていけ!」    


日本のトップ俳優の有無を言わせぬひとことに越野はおもわずたじろぎ、外へ出た。


私は門扉を閉めてひと息ついた。


「すまん、卓司。ついカッとした」   


「シシさん、嬉しかったよ」 


生配信って聞こえたけどマジ?

さてどうしたものか。

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