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1-⑪ トラブルシューティング



東京で待機する。


1時間ほどで卓司を連れた田城社長がやってきた。


「シシさん、面倒かけてすみません」

「気にするな。別宅のオーナだ。助けるに決まってるよ」 


「田城さん、こんなときなんですが。オレの彼女の木花咲那です」

「おー、噂の美女か」

「妻だよ/妻だ」

「だから、まだ結婚はしてないだろ」 

「なら婚約者だね」

「「婚約者!」」

 

いかん。婚約者というワードを覚えてしまった。


「ふたりとも自分の家だと思ってゆっくりしてね/DVDがいっぱいあるぞ」


喜んでるな。

まあいいか。


「卓司。現場を見たい。住所教えてもらえるか? あと悪いが部屋にも入りたい」


「もちろんです。住所は携帯に送ります」


カギを預かる。


「女のことはわかるか?」


「週刊誌に直撃されたときに少し聞いた程度です。たしかマキとか言う名前だったかな。写真も見せられましたが見たことのない顔でした」  


「了解だ。じゃあオレたちは調べてくるよ。ゆっくりしててくれ」


「ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」


―――――――


まずは現場を押さえよう。

秋葉原で高性能の隠しカメラを購入して卓司のマンションへ。


「まずは使ってみるか。事件前日に【タイムリープ】!」  


侵入したと思われる日をイメージしながらスキルを唱えると、夜だったのが一瞬で朝になっていて、時間が巻き戻ったことがわかった。


この時間軸の卓司がいるとまずいので、【時間停止】をしてから部屋に入る。


幸い、卓司はすでに不在だった。

まだ侵入された形跡もないようなので、そのままみんなで手分けして玄関とクローゼット、部屋の各所と廊下にも隠しカメラをセットしてからクルマに戻る。


準備は完了だ。

【時間操作】で早回しをする。


やがてマンションの前にワンボックスカーが停まった。


同時に脳内アラームが鳴る。


「あれが侵入犯だ」


通常のタイムラインに戻して隠しカメラを起動させると、タンドラの中にセットしたモニターに部屋に仕掛けたカメラから映像が届く。 

はい、録画スタート。


男がカギをピッキングで開けて侵入してくる。

女はあちこちに私物をセットしている。

風呂場にシャンプーセット、洗面台には歯ブラシ、ドライヤーまで。

同棲の証拠作りだな。


やがて男がクローゼットにやってきて、女の服を並べていったあとに男性の服をハンガーラックにかけた。


そしてその洋服のポケットに白い袋を入れるところをしっかりカメラが捉えた。


「はい、無実の証拠ゲット」 

「やったね/これで大丈夫だな」


やがて男女が戻ってクルマに乗り込んだ。


ひとまず【時間停止】してから車内を覗くと中には先ほどの男女のほかに、ひとりの男性が乗っているのが見えた。


「あーね。そういうことか」  


それは週刊大波の編集長。確か越野といったか。

スクープというゲスい仕事をしているクセによくメディアに出てくるから顔はわかる。   


時間停止をしたまま、3人がクルマで話している車内の写真をしっかり押さえる。

フラッシュもしっかり焚いて、外から車内を写した写真も撮っておく。 

あとは場所がわかるようにクルマとマンションが写り込む写真も撮っておいた。


ついでに車内にも隠しカメラをセットする。 


「さて黒幕まで辿れるかな」


時間停止を解除すると、車内の映像と音声が届いてきた。   

もちろんこれも録画している。


「どうだ? うまくいったか?」

「はい、編集長。クスリは持ち込んだ服のポケットに入れておきました」 

「同棲の証拠は?」

「大丈夫よ。使用済みの下着まで洗濯機に入れておいたわ」


はい、自白もらいました。

まあこれは盗撮に盗聴だ。

使えるかは微妙かな。


やがてクルマが発進する。

こちらは目立つクルマなので【認識阻害】をかけてから跡をつける。


たどり着いたのは六本木。

そしてクルマが滑り込んだのはかつて卓司のライバルとされていた俳優・影田雅司が在籍している白木プロだった。  


「あー。分かりやすすぎるな」


地下駐車場に駐車して、実行犯が乗り込んだエレベーターは最上階で止まった。


「最上階……社長室かね。なんにせよ会社ぐるみか。残念だ。あとは影田くんが絡んでいるかどうかだな」


そこからまた時間停止で私たちも最上階へ。 

残念ながら社長室では影田雅司が大笑いしていた。


写真撮影、カメラセット、録画、を繰り返してひととおりの証拠を収めてミッションは完了した。


報酬受け取りの契約書があったのでサインと捺印を双方が押したものをコピーしておいた。


越野と白木社長、影田、実行犯のふたりが乾杯している写真はよく撮れていた。



「……なあ。この力を誰かに開示したらなにか神界からペナルティとかあるのかな」

 

「ペナルティなど聞いたことがないな。生きにくくなるだけだ/それに信じないと思うよ」 


「世界に開示なんてしないよ」


「そうだね。大丈夫だと思うよ/あのふたりだろ。ならいいんじゃないか」  


「そうだな。信じられるふたりだ」


―――――――

 

時をすべて戻してから家に戻った。


証拠を並べると田城社長と卓司は信じられないといった顔でこちらをみてくる。


「ふたりに聞いてほしい話があるんだ」


私はふたりにこれまでのことを隠さず話したのだった。

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