1-7 警告音
創造神さまにはスイーツでも差し入れてみるか。
ふと思いたってそのまま渋谷のデパ地下へ足を伸ばした。
平日の早い時間とあって、店内は混雑していない。
見て回るといつもなら大行列の洋菓子が比較的空いていたので並んで購入した。
チーズケーキを模した手軽なものだ。
「これはウチの女の子のお土産にするか。創造神さまには和菓子のほうがいいかもな」
となればド定番、狼屋の羊羹だ。
ポピュラーな羊羹と、ひとくち羊羹がセットになったものを買ってから帰路についた。
―――――――
「ただいまー」
奥から女神が走ってくる。
おお、ちゃんと言うことをきいてるな!
かわいいなあ。
走ってきた女神を抱きとめるとそのまま頭を撫でる。
「えらいな。ちゃんと飛ばずにきたな」
「えへへ。褒めて/褒めろ」
うーん。幸せだ。
「昼は外食にしようか。近くにおいしいお蕎麦屋さんがあるから行ってみないか?」
「いくぞ/いきたいな」
「えーナビィ出られなくてつまんない」
「みんなからは見えないから出てて大丈夫だよ。小さな店だしうまく隠してあげるからナビィも食べていいぞ」
「ならいくーーー♪」
木花と咲那には認識阻害をかける。
さあ出かけよう。
目的の店までは10分ほど歩く。
近くにも蕎麦屋あるが、蕎麦より他のものが美味しい謎店なので今回はパスだ。
大通りに出た時に、チリリンと小さな鈴の音がしたような気がした。
風鈴かな。
冬なのに珍しいなと思ったその時、少し先で子どもの乗った自転車が転倒した。
「大丈夫か?」
すぐに駆け寄り子どもを助け起こすが幸いケガはないようだったので安心した。
「ありがとう」
「気をつけてな」
子どもは元気に自転車に乗って走っていのを見送る。
さっきの鈴の音ってもしかして――。
その時、今度は大きめのアラーム音が鳴り響く。
慌てて周囲を見渡すと交差点に信号無視のクルマが飛び込んでくるのが見えた。
「やっぱり警告音か!」
横断歩道には下校中の小学生たちが飛び出している。
私はとっさに時間停止をかけていた。
小学生ふたりを歩道にもどしてから時を動かす。
クラクションを鳴らしながらクルマは交差点を通過していく。
たまたま居合わせた警察官が自転車で暴走車を追いかけていくが捕まえられそうにない。
小学生たちは何か起きたのかわからずキョトンとしている。
「みんな、信号は変わってもすぐに渡っちゃだめだ。今みたいな悪いクルマがいるからな。周りを見てから渡るんだぞ」
「は、はい」
さてドライバーにはお仕置きだな。
「木花、咲那、ここで待ってて」
私は再度時を止めて瞬速で暴走車のもとへ。
クルマをひょいと持ち上げ、逆さまにひっくり返してから時を戻した。
はい、ちゃんと捕まってろ。
あんな運転許せるか。
中を見るとドライバーの男の手にはウイスキーボトル。
怪しげな注射器も転がっている。
完全なジャンキーだった。
信号無視だけじゃ済まないな。
しっかり更生しなさい。
警察官に捕まるのを見届けてから交差点に戻る。
「お待たせ。さあいこうか」
「あんな危ないものが走り回っているのか/こわいね」
「なあ、さっきから何か事故が起きる直前に予告みたいな音が鳴るんだけど」
「予知だろ/予知ですね」
そういえばそんなスキルも持ってたか。
「命を救えた。これはいいスキルだな」
「そうだね/そうだな」
「オレがいなければあそこで小学生は大怪我を負うか、もしたしたら死んでたかもしれないよな」
「うむ/うん」
「こういうのって『運命』を変えてしまうことになるのか?」
「人が死ぬような運命なんてないよ/すべては偶然の結果にすぎないな」
「そうなのか」
「運命はせいぜい出会いにしか作用しない/そうだよ」
「へえ、そういうものなのか。なら気兼ねなく人を助けていいんだよな」
「もちろんだよ/シシならダメでも助けるだろ」
うん。その通りだな。
さあ、蕎麦屋についた。
遅いランチだ。店も空いてる。
テーブル席に案内されて、私は瓶ビールから。
つまみには板わさとざるそばだ。
木花と咲那には天ざるを注文してあげた。
「ナビィ、うまく食べろよ」
ナビィは見えなくても空中に浮く蕎麦は見える。
私の服の中にかくれて嬉しそうに蕎麦を食べるのであった。
女神は蕎麦が気に入ったようで何枚もおかわりしていた。
丼も美味しいよと教えたらカツ丼もおかわりしてた。
すごいな。
太らないのかな……。




