⑩-1 ツバメ世界
扉を開けるとそこは森の中だった。
きっとツバメ世界の四国のどこかだな。
マップを開くとかなりの数の赤の光点が映し出された。
「ツバメ世界の四国はモンスターに解放してるんだっけな」
「人類とモンスターの棲み分けだよ。最初にダンジョン化したからそのまま解放エリアにした」
英雄神のツバメは交ざる異世界を敵とは見なさなかった。
お互いに不幸な事故として最初から敵対することなく会話を求めたという。
例えるならアフリカのライオン、日本のクマ。
襲われれば対処するが探してまで駆除しない。
その考え方は私にも通じるものがある。
そこに後続のみんながやってきた。
「やりやがったな!」
「どうやったんだ?」
「お見事ですわ」
「おつかれさん」
異世界メンバーに、簡単に攻略の経緯を伝えた。
「最初の部屋はクマ吉のおかげだな」
「たまたまクマ吉がいたからなんてどんなラッキーなんだよ」
「で、結局は地脈は隠されてたんだろ? つまりは攻略なんて無理で、どうやっても見つけようがなかったってことだな」
「地脈センサー、確かに持っておくべきだったね」
確かにな。
なんとかなったのは完全なまぐれだ。
これも幸運∞の効果なのかもな。
さらに花川さんからの通信が入る。
「シシさーん!」
「花川さん! ちょうどよかった! 地脈センサーのおかけでダンジョンクリアできましたよ!」
「それはよかったであります!」
「あ、先にすみません。なにかありましたか?」
「いえいえ、実は前に話していた異世界間の転移装置が完成しそうなのでありますよ」
「え!?」
「もう少し早ければ良かったのですが人数制限がなかなか面倒でありまして」
「いやいやすごいじゃないですか!」
「もう少しで最後の調整が終わるのでまたその時に連絡するでありますよ」
「了解です! 引き続き宜しくお願いします!!」
3つの世界をまたがる異世界間転移。
神ですら成し得ないってやつだろ。
あ、花川さんも半神だったか。
なんにせよ天才すぎるだろ。
ツバメ世界のダンジョンはとんでもなく複雑でかなり難航していると聞いた。
冨川さん、ネモさん、メグ軍団、神獣、四神がランダムにペアを組んで攻略中らしい。
「とりあえず四国中央にベースにしている拠点があるからそこへ移動しよう。攻略が終わればそこに集まることになってる」
ということで私たちはベース拠点へ転移した。
見た目はちょっとおしゃれなコンテナハウスだ。
中に入るとしっかり拡張されており、広いオープンキッチンをしつらえたリビングダイニングがあった。
そして。
そこには明らかに人外の力を持った者たちが揃っていた。
あれがツバメ伝記に登場した伝説のレジェンドメンバーたちだろう。
とんでもない実力者たちがずらりと並んで談話中であった。
「おいおいヤバすぎだろ」
「すごいな/すごいね」
息を呑む私たちを尻目にナビィだけは能天気にはしゃいでいた。
「みんなー♪」
「おー、ナビィか!」
「久しぶりだな!」
「「「ナビィ!」」」
ナビィは伝説メンバーたちの頭上をくるくる飛び回っている。
ほどなくしてナビィが私たちを紹介してくれた。
「みんな久しぶりー♪ この人が新しい世界の勇者、獅子川 湘くんだよ。シシとかショウって呼ばれてるよー♪ で、この人が女神さま!」
「ショウの妻の木花です/シシの嫁の咲那だ」
もう否定も面倒だわ。
「みなさん宜しくお願いします。伝説の方々に会えて光栄です」
まずはツバメファミリー。
ここには戦闘特化の半神たちが揃っているようだな。
「ないはーい♪ 端から紹介するね♪ まずネモ!」
「ネモです。シシくんよろしく」
「うわ、ツバメ三人衆だ!」
「お、君がシシか。冨川だ。宜しくな」
「うわー! トミーさん! 会えて光栄です」
「ちょっと待て。なんでそっちの世界にまでトミーで広まってるんだ!?」
「それから沢木くんとタモだよ」
「伝説のパイロットだ!」
「もう一度言ってもらえますか?」
「録画しておきたいです」
「タクスケだよー」
「神獣や四獣を餌付けした伝説のシェフ!!!」
「えー、なんだかなあ」
「で。これがメグとその軍団ね」
「やべえ! 俠気の塊! かっこよすぎです!」
「初めてお目にかかります。シシさん」
「「「「「「「宜しくお願いします」」」」」」」
「それから神獣と四獣ね。前に神界バーベキューで会ってるんだよね?」
あー!
あのときは見かけただけだけど。
確かに強そうな人がいるなあと思った!
「肉、持ってきたか?」風神フェン
「屋台メシ頼むわ」龍神クロ
「あれは美味しかったよねー」海神ウミ
「おでんがいいな」炎神ほむら
「餃子はあるか?」雷神ボルト
「カムジャタン!」土神クミホ
「煮物も食べたいがのう」セイ(青龍)
「デザート!」スウ(朱雀)
「肉肉肉!」ビャク(白虎)
「量が大事だぞ」ゲン(玄武)
「伝説が勢揃いだ。ヤバすぎるだろ」
あ、フェニックスのフォウはヒカリさん付きの神獣だったか。
てかヒカリさんは英雄神と一緒なのかな。
あ、そうだ。
「フェン、リル……息子だけど今回は向こうに残ってオレの家族を守ってもらってるんだ」
「ああ。知ってるよ。神界から見ていた」
「フェンの教えだからと、最後まで離れないと言ってたんだけどさ。オレの判断だ」
「フン、そのことはもういい」
やべ、不機嫌そうだな。
でもあんなかわいいリルをなにがあるかわからない場所に連れていけないだろ。
「フェン泣いてたからね」
「! ほむら! 何を言ってる!」
「そやそや、大号泣しとったで」
「やめろ!」
「ガオガオ泣いてたぞ」
「お主たちも泣いておっただろうが!」
「な、泣いておらん」
「せやで。あれはまあなんや、笑い泣きや」
「みんな泣いたよ。ボクも感動した」
あー、なんだ、怒ってないのな。
照れ隠しか。
慌てるフェンとそれをからかう仲間たち。
会ってすぐに彼らの絆を知ることができた。
なんて気持ちのいい絆だろう。
ツバメ伝記にもたくさん感動する話が書かれていた。
みんな優しいの知ってるぞ。
ていうかさ。
ひとりひとりがもれなく神話級なんだよなあ。
とんでもないメンバーたちだ。
この真ん中に英雄神がいるのか。
ほんとにすごい人だよな。
いつか会いたいな。




