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晧の章 ボーイズ、放課後を駆ける(4)

 工場の屋根は古く、ところどころ隙間がある。そこから陽の光がいくすじも入ってきて、スタージェットは木漏れ日の下にいるみたいにあちこち光っていた。


「晧、今日は早いな」


 扉をがたがたさせて、有太が中に入ってきた。逆光で黄金色の髪が白銀に見えて、一瞬目がくらんだ。


「いつも通りだよ」


「じゃあおれが遅いのか。うちの時計、遅れてたかな」


 有太は南の壁際に座り込んで、楽器ケースを開けた。


「今日は何吹くの」


「ザ・ランプローラー。今日来るメンバーが好きなんだ」


 バーで、有太も大人たちの出番の合間に演奏することがあるらしい。


 僕はそれを聴きに行きたいけど、有太には「時間も遅いし、子どもの来るところじゃないよ」と困った顔をされた。有太も僕と同い年なのに。


 ふくれる僕を気遣ってか、有太は「一人で来ちゃ駄目だ。大人と一緒じゃなきゃ」と言い直したけど、両親は僕がどんなに頼んでも首をたてに振らなかった。お酒を飲む場所に子どもは連れて行けない、の一点張りだ。


 パパはいつも僕を大人と同じように尊重してくれるけど、そこだけは譲れないと言われて僕はますますふくれた。


 それは一年以上前の話だ。今ではもうあきらめて、有太が工場で吹いてくれるのを楽しみにしている。ひそかに、中学生になれば何とか一人で行けないかな、とは思っているけど。


 僕のパパは古い音楽が好きで、よく家で聴いている。だから僕も有太のレパートリーの半分くらいはわかる。


 ザ・ランプローラーはジェットブラックの相棒、キャプテンジャスパーの登場曲で、僕にとっても特にお気に入りの曲のひとつだ。


 有太がチューニングを始めたのを見て、僕も鞄から書き取りの宿題を取り出した。瀬戸が作業をきりのいいところまで片付ける間に、僕たちもこうしてやらなきゃいけないことを進めておく。


 できれば手伝いたいけど、真剣な目と手慣れた手つきを見ると声はかけられない。


 やがて瀬戸が作業を終えると、僕と有太はそれぞれの持ち物をしまい、スタージェットに近寄った。活動開始だ。


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