晧の章 ボーイズ、計画を立てる(4)
だけどそれでうまくいったとしても、二人は喜ばないような気がした。
自分たちの力だけでやり遂げたいという気持ちは、僕にもある。秘密を守れないやつだと思われるのもいやだ。だから結局、僕はパパに言うのはやめた。
その代わりってわけでもないけど、あの拾った反重力システムはスミカ重工が五年前に開発したものらしいことは聞き出した。パパの話す特徴と一致していたから、たぶん間違いない。
反重力システムにはいくつか種類があって、スミカ重工のものは下向きに重力波を放ち、そこに元々ある重力を打ち消す……と言われているけど、くわしいことはわからない。反重力システムの仕組みは一般に公開されていない。
そして、これらの最大の特徴はそれ単体だと動かせないことだった。
ブースター、つまり増幅器がいる。だから、拾ったあの小箱だけでは空を飛ぶことはできない。
さすがにブースターまで一緒に落ちている、なんて都合のいいことは起こらなかった。
僕はパパに聞いて一連のことを知っていたから、それを二人に教えた。そこから僕らの挑戦が始まった。
最初のうち、問題はわりと早く解決した。試しに瀬戸の作るホバーカーのターボをつけてみたら、あっさり動いたからだ。
でも出力が足りなくて、それだと一人分の体重を空中にとどめておくことすらできなかった。
ターボをたくさんつけてもその分力が大きくなるというわけでもないし、第一、少しでも軽量化をしなきゃならないところに、重いホバーカー用のターボをいくつもつけていられない。
一人乗り用を開発する、という考えはなかった。僕たちは全員でいっせいに乗れるものを作ると決めていた。どうせ期限があるわけじゃないんだから、時間がかかっても自分たちの希望を通そうと僕たちは話し合った。
とは言っても、一人で乗るのすら浮揚力が足りない状態を、三人分の体重とスタージェットの機体を支えるほどのレベルまで引き上げ、かつ飛行するというのはかなり難易度が高い。
機械いじりを専門として、実際に生計を立てているのは瀬戸だけだ。僕はプロフェッショナルではなく、瀬戸ほどの知識はとても持っていない。
有太はそんな僕よりもさらに機械に疎い。だから結局のところ、瀬戸一人の力に頼らざるを得ない状況だ。
それを思うと、僕は心に暗いかげりが差すのを感じる。
でも、僕が申し訳なさを抱いていたからって瀬戸の助けにはならないだろう。
毎日朝から晩まで工場にいられるわけではない僕を瀬戸と有太が待っていてくれることにも、複雑な思いがある。
もし僕がいなければ、作業はもっと早く進むはずだからだ。だけど、二人は決して僕がいない時にスタージェットをさわろうとはしない。
そのせいか、最近では家に帰って妹がまとわりついてくるのを見ると、以前のように優しい、かばってやりたくなるような気になれない。
僕の冷たいふるまいに泣き出しても翌日はまた甘えて寄ってくる妹を見ると、僕は胸が詰まって、その時は少し優しくするけど。