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瀬戸の章 ボーイズと流星の夜(5)

「もうちょっと南!」


 有太が地上を指した。「この辺は岩が多いから駄目だ、南は草むらになってる!」


 高度はおよそ三百メートル。


 晧が右へと操縦桿を倒す。俺は更に高度を下げた。今、二百七十五メートル……二百六十二メートル……真夜中ながらも、地上の様子が分かる程度の高さだ。有太の言う通り、真下は岩場のようだ。


 もう少し南へ行けば、草が生えた空き地の区画がある。それと岩場の境目が、夜目でも見える距離まで来た。


 このままなら、何とか穏便に軟着陸できる。と思った瞬間、スタージェットは急に重力をなくしたかのように自由落下を始めた。


 俺はもう、叫び声が出なかった。下からのすさまじい風で目も開けられない。


「エンジン!」


 有太が、俺の肩越しに晧の腕をつかむのを感じた。「もう一回!」


 頭の裏で何かが光った。


 高度が下がれば、増幅器がなくてもエンジンだけで飛行可能だ。せいぜい地上三メートルしか保てないが、そこで止まれば地面に激突せずにすむ。今……高度六十七メートル!


 俺は風圧をこじ開ける勢いで、晧のいる操縦桿の方へ身を寄せた。エンジンボタンはその右側だ。俺は風に腕をもぎ取られそうになりながらも懸命に手を伸ばした。


 晧も我に返って、手を伸ばした。俺たちは同時にエンジンボタンを押した。


 低い振動を床に感じたかと思うと、速度が一気に落ちる。俺たちは再び床に叩きつけられた。


 必死で顔を上げる。高度はもう五メートルもない。俺は夢中で操縦桿を前に倒した。


 深い地響きと激しい振動で、俺はなすすべもなく床から跳ね上げられる。腰につけたベルトの金具が、あっけなくはじけ飛ぶのを感じた。


 自分が上下左右どっちを向いているのかも分からないまま、俺は地面に投げ出された。思わずうめき声が出た。


 身体中にざわざわしたものが当たっている。雑草だ。ということは目論見通り草地に落ちたのか。


 俺は痛みをこらえて起き上がろうとした。


「瀬戸、無事か」


 右肘に何かが当たった。有太だ。額に血がにじんでいる。


「晧は?」


「痛いけど、生きてる」


 左から声がした。俺たちは並べられたような格好でそれぞれ投げ出されたらしい。


「お前それ、大丈夫なのか」


 晧は左腕をひどく擦りむいている。俺が顔をしかめると、晧は含み笑いをして俺を指した。


「瀬戸こそ、右頬がひどいことになってる」


 全身ひりひりするので、右頬と言われてもぴんと来ない。俺がどうにか肘をついて上半身を起こすと、晧と有太も同じようにした。


 スタージェットの機体の下部はすりおろしたようにえぐれていた。


 何の準備もないまま胴体で着陸したのだから無理もない。むしろ、原型を留めていることを誇るべきかも知れない。


 詳細を調べる必要があるとは思ったが、今は全く立ち上がれる気がしない。二人も同じらしく、俺たちはしばらく黙って寝転んだままでいた。


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