表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/42

晧の章 ボーイズ、計画を立てる(3)

 僕の住むここは自然と生まれ、栄えたわけではなくて、人工的に作られた街だ。


 最初は大学の工学研究機関が、次に大企業のプラントが来て、山野だった一帯を変えた。


 今では工学だけではなく、芸術や運動などを学ぶ大学もある。こういうのを学術都市と言うらしい。これらは主に街の西にある。


 僕の通う学校は、高速モノレールの終着駅から少し歩いたところにある。街の最東端に近い、街外れと言われる場所だ。


 瀬戸の工場はその外れからもさらに外れたところにあって、モノレールもバスも歩く歩道も通っていない。だから僕は自分の足で行く。


 夕食までには家に帰らなきゃいけないから、工場から駅までの遠さはもどかしい。そこからモノレールに乗って自宅に帰るにはさらに三十分はかかる。


 だから、僕はエンジン付きキックボードの完成を楽しみにしていた。それがあれば、僕はもう少し二人といられる。


 でも、まさか……空を飛べるかも知れない、なんて。


 それは僕にとって、幼いころからのひそかな夢だった。


 憧れのヒーロー、ジェットブラックが乗っていた、一人乗りのちいさな飛行機。幼い僕はあれに乗りたくて仕方なかった。


 その飛行機はキャノピーが申し訳程度の大きさしかなく、天井は覆われていない。ジェットブラックは風を受けてコクピットに座っている。


 コクピットと言えるのかどうか、というくらいの狭さで、操縦桿と数本のレバー類の他は、ピアノの鍵盤をカラフルにしたような操作パネルしかない。


 機体はスノーホワイトで、翼の先だけインディゴブルーだった。主翼にしようと瀬戸がもらってきたあのホバーカーのコバルトブルーを見て、僕はあの白地に青の翼がどれほど好きだったかを思い出していた。


 ジェットブラックは、大抵のヒーローがそうであるように普段は正体を隠している。


 彼の表向きの顔は、ちいさな遊園地のアクションショーに出演する俳優だ。いつもは悪役を演じている。そして、ひとたび危機が迫れば使われていない倉庫に隠してあるスタージェットに乗って、敵を迎え撃つ。


 僕は彼がスタージェットで空に飛び出していき、今さっきまでいた遊園地が急速にちいさくなっていくシーンがとても好きだった。


 自分の目でそれを見てみたいとずっと思っていた。空を飛ぶ機械を作れるんじゃないかという話になった時、まっさきに思い出したのはそのことだった。


 でももちろん、三人の作業のことは秘密だ。僕は誰にも明かしていない。二人もきっとそうだろう。


 ただ、実はパパにだけは打ち明けようか、と悩んだことはある。


 僕のパパはエアカー開発の技師だからだ。僕たちがうまくできないでいる部分に、パパならいいアドバイスをくれるんじゃないかと思ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ