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瀬戸の章 ボーイズ、過去と未来に出会う(3)

 今は、この闇は毛布のようなものだ。俺は目を閉じた。視界が暗くなると、様々なことを考えてしまう。


 あの頃、俺は一番幼く、体も小さかったから、よく小突かれたり食事を奪われたりしていた。


 ユーランとニナはそれに気付くと割って入ってくれたが、どちらかと言うとあいつらの方が異質だ。


 何も得はない、むしろ自分の取り分が減るだけなのに、誰かを庇う余裕のあるやつは少ない。一緒に暮らしている以上ある程度のルールはあったが、小競り合いはよく起こった。


 ここを出てからも、あいつらは俺に会いに来る。俺には渡せるものなど何もないのに。


 俺はそれを不可解に思っていたが、晧や有太と出会ってから少し、その気持ちが分かるような気がしている。


 俺には家族というものがない。一度も持ったことがないからか、それが辛いと思ったこともない。


 晧もそうだが、有太の家の話であっても俺には自分からは隔たった遠い世界のできごとに聞こえる。


 子どもが独力で生きてゆく不便さはあるが、それも長じるにつれ解消するだろう。そうなると、ますます一人でいることに問題はなくなる。


 重くやわらかな眠気は、ゆっくりと耳をふさいでゆく。俺は体の力を抜いた。


 深い水の底に少しずつ沈む。


 時折目が覚めて上に引っ張られ、やがてその力も弱まってまた沈んでいく。そんなことを繰り返しながら俺は眠りにつく。


 沈みゆく意識の切れ切れに、俺は晧と有太のことを思い出す。


 出し抜こうとする表情、値踏みする目、蔑む態度には慣れている。


 ユーランやニナのように誰かを守り庇う者はそれとは比べものにならない穏やかさを持つが、それも俺と対等な目線にはいない。


 晧と有太だけが俺と肩を並べ、無造作に大事なものを預けてくる。その重みは、決して手を離してはいけないという緊張をはらんでいるが、同時にひどく心地よい。


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