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瀬戸の章 ボーイズ、夏に集う(プロローグ)
俺たちは境遇から性格から何もかもが違う。
そう言うと、晧はひどく驚いた顔をした。
それを見て似ているとでも思っていたのか、と俺も驚いたが、晧はどうしても共通点を見つけたかったらしい。ある日、これだよ、と差し出してきたのはドロップの缶だった。
僕も有太も瀬戸も薄荷が好きだよね、と晧は宣言するように缶を掲げた。
薄荷は白くてすうっとしてまるで魔法みたいなキャンディだ、というのが晧の言い分だった。晧によると、学校では薄荷が苦手なやつの方が多く、外れ扱いされて言い争いになったらしい。
鼻白む俺に気付いているのかいないのか、有太はじゃあおれたち、薄荷ボーイズだなと言い出し、晧が嬉しそうな顔をしたので慌てて遮った。
それは随分前の話だが、有太は今でも時折「おれたち薄荷ボーイズ」という表現をする。晧はその度目を輝かせるが、俺はいつもその名前を否定する。
有太の超絶ダサいこのネーミングセンスは、本気なのか冗談なのか分からなくてタチが悪い。
しかもあいつは、やたらと物に名前をつけたがる悪癖がある。迷惑極まりない。




