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有太の章 ボーイズ、心に火を放つ(5)

 実際のところ、おれは父ちゃんに食わせてもらっているわけだから大人ではない。大人というのは、自分の食い扶持を自分で稼げる者を指す言葉だろう。そういう意味では、おれは早く大人になりたい。


 でも、マスターが言ったのはそういうことではない気がする。


 瀬戸と晧のやり取りを眺めながら、おれは考えていた。


 そう言えば、瀬戸は自分で稼いで生活しているんだから、おれの理論で言うと大人ということになる。まあ、瀬戸は頭脳も能力も並みの大人以上だから、おどろくことではない。


「片付け、終わった?」


 晧が声をかけてきた。「これ、持って来たんだ。一緒に食べよう」


 晧はなにやら黒い長方形のかたまりを両手のひらに載せている。なにそれ、と聞くと、ガトーショコラだよという返答。調理実習で作ったらしい。


 瀬戸が切り分けた一切れを口に放り込む。思ったより粘着力がある。


「なんか、接着剤みてえ」


「言うなよ、おれも思ったけど」


「え、そんなにひどい?」


 瀬戸とおれの発言を聞いて、晧が慌てたように一切れを自分の口に入れた。なんとも言えない顔をする。


「味は変じゃないから、あっためたらましになると思うんだけど」


「トースターならあるぜ」


 切り分けたそれらを適当に炙ると、確かに美味くなった。プディング寸前、という柔らかすぎる食感だったが、ちゃんとチョコレートの味もする。


 晧のこわばりかけた表情が緩んだので、おれはほっとした。


「やっぱり、小型化っていうのは難しいね」


 ぬるくなった紅茶を飲み干すと、晧は言った。おれと瀬戸は頷いた。


 春頃に機体づくりが終わってからのこの半年は、エンジン小型化との戦いだったと言っていい。まあ、主に戦ったのは瀬戸と晧だけど。


 原理的にはホバーカーのエンジンと同じでいいはずだ、と瀬戸は言った。ただ、スタージェットの機体の大きさを考えると、ホバーカーのエンジンの半分の大きさにしないといけない。


 また、ホバーカーは道路から一メートルより上に浮くことはまずないが、おれたちは地上六百メートル以上ある山上遊園地の上を飛ぶ予定だから、上空千メートル程度を想定している。


 なんとか機体を空中にとどめておくことができるようになっただけでやり遂げた気になっていたが、一定の速度で飛行するところまでたどり着けるのか、おれは自信が持てなかった。


「いっそのこと、大型化するってのは?」


 おれは思いつきを口にした。「ホバーカーと同じ大きさにすれば、エンジンもそのまま流用できるだろ?」


「それだと、上空千メートルまで行けないよ」


 晧が空になったカップを重ねながら言った。


「ホバーカーのエンジンを搭載して、瀬戸のターボと反重力システムをつけて行けるのはせいぜい二百メートルだよ。まあ、理論上の話だから実際はわかんないけどね」


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