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有太の章 ボーイズ、心に火を放つ(2)

「流星群、の、ニュース、聞いた?」


 乱れた息を整える間も惜しいのか、妙なところで息継ぎをしながら晧が問いかけてくる。おれは首を横に振ったが、瀬戸はああ、と低く呟いた。


「来年の夏だよ」


 晧はかばんを床に丁寧に下ろすと、ふうっと息を長く吐いた。「その頃には、スタージェット、完成してると思う?」


 おれは晧がなにを言いたいのか分からなかった。問い返そうとしたら、瀬戸が口を開いた。


「より近くでってことか。まあ……どうだろうな」


 それでおれにも飲み込めた。つまり、スタージェットで空を飛びながら流星群を観察したいということだ。


「だって、もしかしたら流星雨になるかも知れないって」


 晧は今にもスキップしそうな足取りで、スタージェットのそばに寄った。「手にすくえるくらい、近くで見たいよ」


 今度はなんのことかわかった。晧は東の山の上にある遊園地の、掬星(きくせい)塔が好きなのだ。……掬星、つまり(すく)えるくらい近くで星が見えるあの塔の上を飛ぶなら、確かに見応えがあるだろう。


「直接手になんか取れないだろ」


 瀬戸は不愛想にそう言ったが、どこか上の空だ。視線が宙の一点を見つめている。考えごとをしている証拠だ。

 晧は瀬戸に見えないようにおれに素早く目配せした。おれもかすかに頷いておく。


 来年の夏まで、あと十か月以上ある。それまでにこれが完成するのか、機械に疎いおれには判断できないが、瀬戸がやる気になったのは見て取れた。


 早速図面を持って来て、瀬戸と晧は熱心に話し始めた。おれは聞いたところでどうせ半分も理解できないんだが、メンバーであるからには一応聞いておく。


 二人はおれにもやれることを与えてくれるし、せめてそれには応えたい。


 晧がもし時間を気にせずにここにいることができたら、きっとスタージェットの開発は早まるだろう。


 だけど、叶わないことを口にして晧の顔を曇らせたくはない。なにより晧自身がそれを気にしているのは、傍目から見ていてもよく分かっている。


 瀬戸と晧がおれを呼ぶ。おれは返事をして、二人が持つ図面をのぞきこんだ。



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