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晧の章 ボーイズ、夜天の夢を見る(1)

 二十時前になると、妹がぐずりだす。就寝時間がせまってくるからだ。


 もっと起きていたい、お兄ちゃんばっかりずるい、と妹は言うけど、僕も妹の年ごろはそれくらいに眠っていたんだから、別にずるをしているわけではない。


 半泣きの妹を何とかなだめすかして、ママが寝室に連れて行く。リビングには僕とパパだけになる。僕も二十一時には寝室に行かなければいけない。それまでの少しの間、パパと二人きりで話せるこの時間が僕は好きだ。


 パパは理屈に合わないことは言わない。「子どもだから」と話を聞いてもらえないことは生活していく上でたびたび起こるけど、パパに限っては一度もなかった。


 僕はママのことだって大好きだけど、そこがパパとの違いだ。


 瀬戸や有太のことを話すと、パパはとても興味を持って聞いてくれる。


 スタージェットのことは秘密だから、その辺は工夫して言わないといけないけど、二人とのやり取りは本当のことだから僕の罪悪感はいつも薄れてしまう。


 エンジンについて質問するのもこの時間だ。パパはとてもわかりやすく説明してくれる。実際に、開発に携わっている人の話はとても面白い。


 だけど瀬戸の工場にはパパの勤めるラボと同じ設備があるわけではないから、言われたことをそのまま再現するのはとても無理だ。


 僕たちには工夫が要る。パパの話を聞きながら、僕はその辺のことを考えている。


 瀬戸の知識と技術にはとても及ばないけど、僕だってスタージェットに関わってるんだから、少しでも役に立ちたい。


 やがてママがリビングに降りてくる。僕が紅茶を淹れて持っていくと、ママは微笑んで受け取ってくれて、僕は少し大人びた気分になる。


 パパとママはソファで、妹がいるとしないような大人の会話をしている。それが僕には誇らしい。


 でもそれも少しの間のことで、すぐに僕の寝る時間がやってくる。促されて、なごり惜しいけど僕も階段を上る。妹みたいにぐずったりはしない。


 ベッドに入って、枕もとのサイドランプスイッチを切る。部屋は目覚まし時計のわずかな燐光だけになる。


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