晧の章 ボーイズ、放課後を駆ける(6)
いつかテスト飛行をするならそれはもちろん、昼間だ。問題が起きた時、視界が暗くてはいけない。
でも、僕は、三人で夜間飛行するところをよく思い描く。
夜風を受けて、安定した飛行を続ける僕たちのスタージェット。
瀬戸の工場も、僕の学校もみるみるうちに遠くなってまるで星のよう。
やがて山の上にさしかかると、大好きな掬星塔のあかりや、メリーゴーラウンドのまばゆい電飾、ローラーコースターのレールがちいさな光の蛇のように眼下に見える。
それはどれほど美しいだろう。幼いころ、熱望していた景色だ。
「晧、どうした?」
瀬戸に問われて、僕ははっとなった。想像が膨らんでフリーズするのは僕の悪いくせだ。集中すると、ぐっとそれが目の前に迫ってきて、のめり込んでしまう。
「ああ、ごめん、ちょっと」
そのせいで、午前中もニックにからまれたんじゃないかと僕は自分を叱咤した。
……だけど、本当のことを言っても、瀬戸と有太は笑ったりしないだろう。そう思うと、足元にやわらかなクッションが敷き詰められているみたいな、眠いのにも似た気持ちになる。
瀬戸が不可解そうな目つきになったので、僕は「ねえ」と話しかけてみた。
「何だよ」
「絶対、完成させようね」
予想外の発言だったのか、瀬戸はちょっとたじろいだように見えたが、ああ、と返事をしてくれたので僕は嬉しかった。
「薄荷ボーイズ、空へ行くの巻」
有太が僕と瀬戸の肩に腕を回して、自分の方に引き寄せた。急に上半身だけ引っ張られた形になり、僕はよろけた。
「やめろよ、その名前」
瀬戸は自分の首に回った有太の腕から逃れようとしたが、上背のある有太は腕も長く、しっかり抱え込まれて動けないでいる。
「いいや、やめない。おれたちは薄荷ボーイズだ。だろ?」
有太の人なつっこい笑みに、僕は大きくうなずいた。
有太は瀬戸に顔を寄せた。「お前は? イエスかはいで答えてくれ」
瀬戸がそろそろ真剣に怒り出すんじゃないかと僕は心の底がひやっとしたが、しかめっつらの瀬戸は有太の言葉を聞いてもがくのをやめ、あきらめたように笑った。
滅多に見ない瀬戸の笑顔だった。
満足げな有太の目を見て、僕も自然と笑みが浮かんでくるのを感じていた。




