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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第四章──普遍的な愛なんて、この世に存在しないのかな?
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シンデレラグレイー3

次は来週の月曜までにアップします!



「……あ、帰ってきた」


店の外で孔雀さんと待っていると、永月とティアラちゃんが連れ立って出てきた。


「刃金、こいつを何とかしろ……そろそろ手が出る」


「えへへ~♪ てぃあ、アキトくんのこと絶対離さないよ~?」


ティアラちゃんは上機嫌に言って永月の腕に抱きついている。永月の表情には明らかに「鬱陶しい」と書いていた。


「ラブラブじゃん。彼女出来てよかったね、永月」


「てめぇぶっ殺すぞ」


「なんだよ秋人。お前もしかして童貞か?」


「え!? アキトくんドーテーなの!? ギャップ萌えなんだが!?!? てぃあが貰ってあげるんだが!? 今からホテル行こ!?!?」


「孔雀さん黙っててください。テメェも黙れ真甘しんかん


「もぉ~『ティアラ』って呼んでって言ったじゃん♪ 秋人くんってほんとに奥手なんだぁ~ガチメロい~?」


「チィッ!」


ティアラちゃんは目の中にハートを浮かべ、媚びた甘ったるい声で永月を見上げている。

永月が時折腕を動かして振り払おうとしているが、ティアラちゃんはエナジクトの力を使っているようだ。びくともしない。


店の中で何があったのか知らないけど、どうやら永月はティアラちゃんを上手く手懐けたようだ。


「えーと……とりあえずティアラちゃんは、6課の仕事に戻ってくれるってことでいいの?」


「うんっ! だって秋人くんがそうしろって言ったんだも~ん♪」


ティアラちゃんは一ミリたりとも永月から視線を外さずにそう言った。


「そ、そうなんだ……とりあえずは、これで一件落着?」


「よ~し今日は解散かな? では俺は呑みに……じゃなかった。パトロールいってきま~っす!」


孔雀さんは片手に持ったストゼロを上機嫌に掲げて歩き出し、ふらふらと行ってしまった。

擦り切れたジーンズの裾を引きずりながら、へべれけ状態で歩く後ろ姿を眺めながら私は思う。

この人、本当にSランクなのか?


「とりあえず、俺達も帰るぞ刃金」


「うん。だけど……ティアラちゃんどうする?」


「おい、テメェもさっさと帰れメンヘラ女」


永月がぎろりと睨むと、目が合ったことが嬉しいのか、ティアラちゃんはでへぇ~と表情を崩し、幸せそうに言った。


「てぃあ帰るとこない~。秋人くんの家行く~っ!」


「は? 絶対無理」


「ええ~!? てぃあ秋人くんの家行く! 行く行く行く! ぜ~~ったい行くっ!」


「はぁ!?」


ティアラちゃんはぶら下がる勢いで永月の腕にぎゅっとしがみつく。すごい。コアラみたいだ。


「ちょっ! 離せっこのクソメンヘラ女!!!」


「やだやだやだっ! てぃあもう決めたもんっ! 秋人くんはてぃあに本当の愛を教えてくれた人っ! 救ってくれた人! 親すらくれなかったガチのラブをくれた人だもんっ! てぃあはもう他の男なんか興味ないの! 秋人くんのお嫁さんになるのっ! 絶対絶対ぜ~~~ったい! だからもう離れないのっ!!! 秋人くんと一緒に住むのぉっ!!!」


「ちょっいいから離せ……って……」


バタンと、急に永月が倒れてしまった。


「秋人くん!?」

「永月!?」


ティアラちゃんと同時に叫んで、慌てて駆け寄ると、地に伏せた永月は目を閉じていた。顔色が真っ白だ。


「永月っちょっとどうしちゃったの! ティアラちゃん、もしかしてこいつお酒飲んだ!?」


「ううん。一滴も飲んでなかった。もしかしたら……てぃあとの戦闘で血を使いすぎたのかも」


「血の使いすぎ?」


そうか。永月はエナジクトを使用する時に血を使うんだったっけ。それに最近激務であんまり寝てなかったっぽいし……とりあえず、家に送り届けてあげないと。


倒れたままもアレなので、永月を背負う。エナジクトの力を少しだけ使えばそう重くもなかった。

っていうかこいつ……軽すぎない? ちゃんと食べてる?


「ティアラちゃん。悪いけどタクシー呼んできてくれる?」


「あ……うんっ!」


タクシーに永月を乗せ、私達も乗り込む。

こいつの住所わかんないし、とりあえず冬華の所へと思っていると、何やら後部座席でごそごそやっているのが見えた。

振り返ると、永月の隣に座っているティアラちゃんが、永月のジャケットをごそごそ漁っていた。


「あの~ティアラちゃん……何やってんの?」


「あっ、あったぁ!」


そう言って宝物を見つけた子供みたいに目を輝かせ、永月の財布を掲げる。そして慣れた手つきでそこから一枚カードを取り出し、「運転手さ~ん」と威勢よく発した後、住所を読み上げていた。

唖然としているとタクシーが動き出す。私は愕然とした顔で問いかけた。


「ちょっ、ティアラちゃん?」


「んあ?」


「念の為の確認なんだけど、さっきの住所……ティアラちゃんのじゃないよね?」


「へ? モチのロンで秋人くんのだが?」


ニコニコと満面の笑みでティアラちゃんが持っているカードを見せてくる。

予想通り、載っているのは明らかに不機嫌そうな表情の永月の顔写真。それは、永月の運転免許証だった。


「はい、アウトー!!!」


「え? なにが?」


「駄目でしょ勝手に人の住所見ちゃっ! っていうか人の財布を漁ったら!」


「てぃあの業界ではこのくらい常識だが? というか、スマホのロック解除してないだけまだマシだが?」


「どんな業界だそれっ!! あっコラ免許証の写真を撮るんじゃない!」


「お客さん、もう少し静かにしてくださいっ!」


「あっハイ……スミマセン」


運転手さんに言われ、私はシュンとしながら席に座り直す。

明らかにアウトな行為をしてるティアラちゃんを注意している私が怒られるなんて……なんて理不尽。


「へへ~あきとく~ん。す~りすり♪」


ちらりと背後を見ると、ティアラちゃんはぐったりと気絶している永月を抱きしめ、幸せそうに頬ずりしていた。


「秋人く~ん♪ 今日はてぃあが看病してあげるからねぇ~♪ ゲロの処理もおもらしの処理も、エッチな看病だって、てぃあ何だってよろこんでするよぉ~♪」


永月はたぶん一人暮らしだろう。このまま二人を一晩共に過ごさせてもいいものだろうか? 

面倒くさいから関わりたくないけど、後で私が永月にどやされる未来が見える。

ものすごく嫌だけど……私も一緒にいるべき?


そんな事を考えている間にタクシーが目的地についてしまった。

一等地にある高級タワーマンション。ではなく、何故か普通の佇まいの、単身者用のアパートだった。


「ここが永月の家?」


「きゃー秋人くん庶民的ぃっ! そんなとこも好きぃ~!!!」


はしゃいでるティアラちゃんの代わりにタクシーの代金を払い、永月をタクシーから引きずり出す。

ティアラちゃんはすかさず永月の全身をさわさわと探り、「あった!」と家の鍵を探り当てた。

鍵には律儀に部屋の番号が書いたキーホルダーがついている。一応国民的スターのはずだよね。安全管理大丈夫かこいつ。


「やった~! さっ行こうアイちゃん! てぃあと秋人くんのラブラブスイートホームへ!」


「あ~うんはいはい」


もはや突っ込む気力を失った私は永月を担いで部屋の前へと移動する……あれ?


「ねぇ、部屋、電気ついてるんだけど」


「消し忘れたんじゃない? えへへぇ~もう我慢できないよぉ……挿れるねっ?」


ティアラちゃんはニヤニヤしながら、これまた慣れた手つきでガチャリと鍵を開ける。そして蹴破らんばかりの勢いで扉を開けた。


「はっろ~! ナイストゥーミーちゅ~? 秋人くんのおっ部屋ぁ~!!」


「あれ……どちらさま?」


廊下の先、リビングへと続く扉のすりガラスの向こうから、声が聞こえる。

玄関に踏み込もうと勇んでいたティアラちゃんぎょっとし、固まった。

ガチャリと扉が開く。そして声の主が様子を窺うように半身を覗かせた。


こちらを不審がるように見つめる、ぱっちりとした丸くて大きな青い瞳。腰まで届く銀色の髪。そしてオレンジのワンピースから伸びる、幼い手足。


扉からこちらを覗いてるその人は、少女と呼ぶには幼すぎる。

そう、言うなれば──幼女と言って差し支えない女の子だった。

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