表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第四章──普遍的な愛なんて、この世に存在しないのかな?
71/77

シンデレラグレイー1



7階建てのビルが爆炎で砕け、吹き飛び、一瞬で消し炭となる。ガラガラと崩壊するビルの破片を避けながら、ティアラは地へと着地した。

爆風でなびくツインテールとスカートをそのままに、ティアラは自分の生み出した光景を見渡す。

歌舞伎町という雑居ビルだらけのはずの街が、見渡す限り、灰色の瓦礫に変わり、平地と化していた。


彼女の第一解放はホルダーの中でも指折りの破壊力を持っている。

ティアラの第一解放『マイン・フィールド』を食らって生き残ったETは、いまだかつて存在しない。

任務を平気でサボって遊び回るティアラが、常にSランクであり続ける由縁だ。


身を隠せるようなものは存在しない。奴の姿は見当たらない。間違いなく消し炭に出来たはずだ。ティアラはそう確信し、腕を組んだ。


「アンタが悪いんだからね。アンタがてぃあの邪魔するから……てぃあはちゃんと忠告したもん。悪く、ないもん」


組んだ腕の上にある指先が、カタカタと小刻みに震える。


どうしよう。てぃあ、本当にアイツのこと殺しちゃったのかな? 人を殺すのなんて、はじめてだよ。

どうしよう。どうしよう。


高揚感が去り、ズキンズキンと胸の奥が痛み、罪悪感が一気に押し寄せる。

さっきの仲間が来るかもしれない。早く逃げないと──。


駆け出そうとした時、


ガラガラ。


近くのコンクリートの瓦礫が動く音がし、誰かが姿をあらわす。ティアラは信じられないような目でそちらを見た。

瓦礫から這い出し、刀を杖代わりにして立ち上がったその人物は、永月だった。永月は右目に青い炎が灯し、ティアラを睨む。


「うそ……なんで……?」


「俺の第一解放も爆発系だからな。同じタイミングで発動することで、テメェの爆発を相殺してやったんだ」


「相殺?」


エナジクトの攻撃は使用者には干渉しない。そこで永月は考えたのだ。

彼の第一解放、刺突爆雷を発動することによって周囲に自分の爆撃を展開し、彼女の爆撃を防ぐという方法を。


「そんな……それじゃティアラの攻撃、アンタには効かないってことじゃん」


戦意喪失し、へたり込むティアラに永月は歩み寄る。刀を手に歩いてくる永月を見上げ、ティアラはガタガタと震える。


やばい。絶対やり返される。だっててぃあ、コイツのこと殺そうとしたんだもん……殺されちゃうっ!


目の前まで歩いてきた永月がティアラに手を伸ばす。ティアラはぎゅっと目を閉じた。しかし、しばらく待っても何も起こらない。

恐る恐る目を開ける。永月はこちらに手を差し出していた。彼の武器である刀は、鞘に収まっている。


「……なに?」


「立てよ」


「なんで?」


「どっか怪我でもして、立てないってのか?」


「そうじゃなくてっ……なんで、なんでティアラに何もしないの? ティアラ、アンタに攻撃したんだよ? 死んでもおかしくない攻撃した! 殴るくらいすればいいじゃん! ボコればいいじゃんっ!」


永月は煩わしがるようにチィ! と舌打ちをし、答えた。


「俺をテメェみたいなガキと一緒にすんな。俺には女を殴るような趣味はねぇっつの」


「趣味とかじゃないよ。男ってそういうもんでしょ? 『気に入らないことがあったら殴って躾けるんだ』って、パパだってずっとそう言ってた。てぃあのことボコボコに殴ってた! ……星亜くんだけだもん。てぃあのこと殴らない男は、星亜くんだけ。星亜くんが、そう言ってたもん……っ」


ぽろぽろと大粒の涙を流し、ティアラは訴えかける。永月はため息をつき、若干やわらかい声のトーンで言った。


「それはお前のいた環境がイカれてたってだけだ。そんなクソみてぇな野郎共と俺を一緒にすんな。だいたいお前は6課の人間、いうなれば俺の仲間。そんな奴に手を上げて、何の得がある?」


「あはは……そんな男、この世に存在するんだ。今までの彼氏で、てぃあのこと殴らなかった人なんか……いなかったよ」


黒いネイルが光る指先で涙を拭い、ティアラは落ち着きを取り戻したように、膝を抱えて座り込んだ。


「分かってるよ。今の状態が良くないってことくらい。でも……せいあくんに会わないなんて。そんなこと、考えられない」


「なんで?」


「てぃあだってね、 星亜くんがてぃあのこと金づるとしか見てないってこと、ちゃんと分かってるの。でも星亜くんは、貢いだら貢いだ分だけちゃんと応えてくれる。てぃあのこと愛してくれる。かわいいって言ってくれる。抱きしめてくれる。褒めてくれるの。そんなふうにしてくれる人……こんなゴミカスなてぃあを大切にしてくれるのは、星亜くんだけなの。星亜くん以外に、てぃあのこと大事にしてくれる人なんて……この世に居ないんだよ? ママにてぃあは星亜くんが好きなの、星亜くんに捨てられたら……生きていけないの!」


「呆れるな。そんなカスみてぇな承認欲求満たすためだけに、任務ほっぽって身体売ってるってのか? そのクズ野郎に愛されるために、クソオヤジ共に身体を許してるのかよ」


「違うもん! てぃあは身体売ってないっ! 色んなとこに行って、エナジクトの力を使ってトンネル採掘手伝ったりしてんのっ! ちゃんと汗水垂らして金稼いでんのっ! 人の役に立って手に入れた、綺麗なお金なのっ!」


「だったら尚更だろ。その金、自分のために使えよ。そのうるせえ口を、自分を守るために使え」


「でも──!」


言葉を遮るように、秋人はティアラの頬を掴む。そして顔を近づけ、目をしっかりと見つめた。


「誰かに縋るな。救ってくれる誰かを待つな。自分以外の誰かを使って、自分を承認しようとすんな。お前の力を利用しようとして近づいてくるクソみたいな連中はな、お前に利用価値を感じられなければ絶対離れてく。縋ったって、媚びたって、本当に呆気なく、ゴミみたいに捨てられるんだ。その時に残るのはなんだ? 散々利用されるだけ利用されて、ボロボロになったお前自身だけだろ? お前は人を愛せたんだ。人に尽くせたんだ。だからこれからは、そのクソ野郎を愛したように自分を愛せ、自分に縋れ、自分を救え、自分のためだけに、自分の力を使え。俺はそうした。楽になったよ……間違いなくな」


動揺に揺れる瞳を見つめながら秋人は語りかけ、そして立ち上がる。

ティアラはへたり込んだまま、その言葉を胸の内で反芻しているようだった。


「秋人くんの言ってること。全然分かんないよ。自分を愛するなんて。自分のために生きるなんて。そんなの全然わかんない……てぃあ、ママに言われてたんだ。『アンタは寄生虫だ。アンタは誰かに寄生しないと生きていけないんだ』って。だから、どうやったらいいのか分かんない。酷い人だとしても、利用されてるだけだとしても、好きな人から離れるなんて、出来ないよ。だって、今までずっと甘やかしてくれたんだもん。てぃあにとって星亜くんは神様……生きるための希望だったんだもん」


「……分かった。だったら俺がぶっ壊してやるよ。そのくだらない幻想をな」


「え……きゃっ!?」


ティアラが驚いた声を上げる。秋人が強引に腕を引いたからだ。立ち上がったティアラはおずおずと秋人を見上げる。

その瞳をまっすぐ見つめ、秋人は言い放った。


清甘しんかん、ホストクラブに戻るぞ」


「ホストクラブって……なんで」


「俺があのクソ男を負かして、目を覚まさせてやるよ。テメェの貢いできた幻想が以下にくだらないもんが、思い知れ」

↓の★マークでのポイント評価、ブックマーク、感想、いいねなどもらえたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ