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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第四章──普遍的な愛なんて、この世に存在しないのかな?
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ダーリンダンス-7


「ちょっ待ってよティアラちゃん! 永月!」


そう叫んだけど、二人はビルを次々飛び移り、遠くへ行ってしまった。

取り残された私は、呆然とそれを見送るしかなかった。


「なんか取り残されちゃったねぇ~」


孔雀さんは呑気に声を上げ、チューハイをぐびりと飲む。先輩だろうと今は関係ない。私は孔雀さんに怒鳴りつけた。


「孔雀さん! どうして止めないんですか!? 味方同士で争ったって意味ないでしょ!」


「そうか? 俺はそうは思わないけどな。大事だよ。こういう衝突も」


「え?」


「アイちゃんもこっち来なよ。こうなると思って、ジュースも買っといたんだ。ほら、お菓子もあるよ」


孔雀さんはコンビニ袋から色々出して、私に見せてくる。


全く、どいつもこいつも。はぁ……もういいや。


ため息を付き、もうどうでもいいやと孔雀さんの隣にどかりと座り、差し出されたオレンジジュースをお酒みたいにぐびりとあおる。

階段に座ってジュースを飲むなんて、なんだか少し葛西先生と一緒にいた時の事を思い出した。


「アイちゃんってなんで6課に入ったの? まだ高校生だろ?」


「それは……冬華に誘われたから。それに、実家に居場所なかったし」


「人に誘われたからか、俺と同じような感じだな」


「孔雀さんも誘われたんですか?」


「いや、俺は言われたんだ。6課のホルダーになれって」


「誰に?」


「姉さんに」


姉さん。意外な言葉に驚く。

歌舞伎町で億を売り上げるような伝説のホストをやってたのに、お姉さんに言われただけで、そのキャリアをあっさり捨ててまでホルダーに?


「じゃあ、もしお姉さんに6課を辞めろって言われたら?」


「辞めるよ。すぐにでも辞める」


「……どうしてそんなにお姉さんの言う事を素直に聞くんですか?」


そう問いかけると、孔雀さんはチューハイから唇を離し、ゆるく笑った。その横顔は視線を吸い寄せるようなアンニュイな憂いを含んでいて、俳優顔負けに綺麗だった。


「だって、姉さんは俺にとっての全てなんだ。俺は姉さんに死ねと言われたら死ぬ。姉さんに殺せと言われたら殺す。姉さんの言うことには逆らえない」


「どうして?」


「だって俺は、姉さんを愛してるから。この世の誰よりもね」



「点火!」


天愛来 (てぃあら)の叫び声が響き、それと同時に周囲に散った手榴弾が爆発する。秋人はビルを足場に蹴り、その爆発を華麗に避けてみせた。


「逃げ回んないでよ! 正々堂々戦えっ!」


「やだね。テメェみたいなバカガキにまともに向き合ってやるほど、俺は暇じゃない」


「はあぁっ!?」


秋人のその返しに腹が立ったのだろう。天愛来 (てぃあら)はスカートから大量の手榴弾が生み出し、まるでサッカーボールのように蹴り飛ばした。


「点火、点火……点火ぁっ!」


秋人のすぐそばに手榴弾が迫り、爆発する。大量の手榴弾が一斉に爆発し、連鎖し、周囲一体を焼き尽くすほどの大爆発が起きる。

しかしその爆炎などお構いなしといった感じで、秋人は身を翻して空中を舞っていた。ティアラはそれを信じられない目で見つめた。


「嘘!? てぃあの手榴弾は通常の手榴弾の100倍の威力なのに! 絶対殺れたと思ったのに!」


「どこ狙ってんだ? センスがねぇな。本当にSランクかよ? ホルダーなんか辞めちまえよ。このノーコンクソ地雷女」


「はぁ!? アンタが避けるからでしょ!? じっとしてろ!」


「んなアホなことしてやるかっての」


秋人はビルを足場にして蹴る。そして刀を構えたままティアラに迫った。


「やばっ!?」


ハッとしたティアラはすぐに自分の周囲に手榴弾を量産して展開する。


「点火っ!」


周囲の手榴弾が一気に爆発する。爆煙で見えないが、この距離なら確実に食らっているはずだ。

そう確信したティアラの目の前に、キラリと光る切っ先が差し迫る。すぐに永月の姿も現れた。


やばい!


この距離じゃ手榴弾を生み出すのも間に合わない。

そう直感したティアラは、後退した。シュンと前髪スレスレを刀が通り過ぎる。


「ぎゃっ! っとと……あだぁっ!?」


なんとか避けることは出来たが、バランスを崩し、その場に背からまともに転げた。


「いったぁ~……ひっ!?」


尻もちをついたティアラの足の間、コンクリートに刀が突き刺さる。永月が目の前に立ち、自分を見下ろしていた。


「なんだよ。もう降参か?」


コンクリートに刺さった刀を抜き、ティアラに向かって突きつける。ティアラはそれを呆然と見上げ、すぐに睨み、叫んだ。


「ふざけんな……ふざけんな、ふざけんな……ふざっけんなぁ!!」


座り込んだまま、ダンダンと地団駄を踏む。その様子を見て、秋人は何かを察したように言った。


「なるほどな。お前のエナジクトの代償は”理性”か」


「だから何!? あんたのは血でしょ!? そっちのが不利じゃん!」


血が流れ落ちている永月の指先を見る。


エナジクトの使用には代償が必要である。代償が『前払い』か『後払い』かは個々人によって異なる。

アイがエナジクトを使用した後に数日眠るのも、代償によるものだ。


「テメェみたいなクソ雑魚相手じゃ、血の使用も少なくて済むからな。そう関係ないさ」


「むかつく……むかつくぅ~っ!!! だいたい国民的アイドルが何!? アンタどうせ、てぃあのこと救ってくれないじゃん! 優しくしてくれないじゃん! 愛してくれないじゃん! てぃあのこと愛してくれるのは、本当に必要としてくれるのは、この世で星亜くんだけなのっ! てぃあは星亜くんのために生きたいの! 星亜くんに捨てられたら……てぃあは生きていけないのぉ!!!」


ティアラの右目にピンクの炎が灯る。まさか、と永月が後退しようとしたその時──。


「てぃあの邪魔するやつなんか死ね!! パパとママもしね!! てぃあのこと愛してくれないやつらなんか……みんな死んじゃえ!!!」


「おまえ、まさか──!」


「第一解放! マインフィールド!」


ビルの屋上の床の全てに、いや、周辺の半径1キロメートル四方一体に、地雷が敷き詰められる。

まずい! そう思ったその時には──。


「点火ぁっ!」


その声を合図に、全ての地雷が一斉に爆発する。

次の瞬間、視界が全て炎の赤で埋め尽くされ、周辺の酸素が一気に燃焼し、爆発が爆発を呼び、何もかもが消し飛んだ。

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