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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第四章──普遍的な愛なんて、この世に存在しないのかな?
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ダーリンダンス-3


テツさんに言われた場所、第六トーチビルへとたどり着く。

夜の店やホテルが連なる場所にある。少し年季の入った洋風のお城っぽい白い建物だ。


「ここに手がかりがあるのか?」


「うん。なんか探偵事務所があるらしくって」


「……この建物にか?」


建物の入口ではひっきりなしにホストやキャバ嬢が客を引き連れ、エレベーターに入っていく。どう考えても探偵事務所があるようには見えない。

もしかして、ビル名聞き間違えちゃたかな……。

念の為エレベーターの前にある店舗一覧のプレートを見てみる。当然のように水商売の店が連なっていた。

しかし──。


「あ、あった」


ビルの最上階である7階に、『鳳玉ほうぎょく探偵事務所』という名前があった。

私達は顔を見合わせ、とりあえずエレベーターに乗り、7階へと向かった。

薄暗い廊下を歩き、鳳玉探偵事務所のプレートがついた扉の前にたどり着く。ごくりと生唾を飲みながら、私は扉を開いた。


カランカランと扉ついたベルが鳴る。リラックス出来そうな暖色の間接照明。赤い絨毯。木製のバーカウンターと丸椅子。内装は明らかにバーのそれだ。

やばい、間違えたかな。開いた扉を閉めようとすると。


「いらっしゃいませ」


穏やかな声がそれを引き止める。

恐る恐る扉を開けると、バーカウンターに立っているバーテン服を着た青年が、グラスを拭きながらにこりとこちらに微笑んだ。


「あ、えっと……ここって鳳玉ほうぎょく探偵事務所であってますか?」


「はい。ご依頼ですか?」


お兄さんが柔和な笑みを浮かべたまま首を傾げて問いかける。22、23歳くらいといった所だろうか。

全体的に穏やかで落ちついた雰囲気をまとった、茶色の柔らかそうな髪と右目の下にある泣きぼくろが印象に残る美青年だ。


この人がテツさんが言ってた探偵? ……違うか。別の人がいるのかな?


「あの。私達、テツさんの紹介でここに来たんです」


「テツさんの?」


永月がサングラスを外してお兄さんに詰め寄る。そして私のスマホの画面をお兄さんに見せた。


「単刀直入に聞く。こいつを知らないか?」


「え? ……ああ、天愛来 (てぃあら)ちゃんか。こないだこの辺で見かけたよ」


「知ってるんですか!?」


「うん。何度か見たことあるからね……キミは刃金はがねアイさんで、そっちの彼は永月秋人くん。だよね?」


名前を言い当てられ、私と永月はぎょっとする。


「お前、俺達のことを知って……一体何者だ?」


警戒しながら永月が問いかけると、お兄さんは笑みを崩さず、自分の目を指さす。そのうす茶色の瞳の奥に、虹彩が怪しく渦巻いていた。


「僕、ナチュラルなんだ。人の顔を見ると名前が『視える』能力。それとは別に、一度見た人の顔は忘れないっていう元々の特性もある。探偵向きの能力でしょ?」


「ナチュラル……あんたはエランか」


「そ、鳳玉叶汰ほうぎょくかなた。お酒が大好きなしがない探偵さ。どうか以後お見知りおきを」


叶汰さんが名刺を差し出す。私たちはそれを受け取った。


「叶汰さん。実は私達、6課の人間なんです。ティアラちゃんに関する情報何か知りませんか?」


「捜査協力だ。答えろ」


「ちょっと永月、あんた失礼すぎっ」


「6課の? ……ああそうか。『永月秋人』くんだもんね。ティアラちゃんは今、星亜せいあってホストに入れ込んでるみたいだよ」


「ホスト? ティアラちゃんってまだ未成年のはずなんだけど……」


「星亜って奴は、そういうの気にせず手当たり次第営業掛けてるみたいだからね。店のナンバー1だし、トラブルを起こすこと無く姫を上手く転がすみたいだから、周りも強くは言えないみたい。ハマった女の子を夜の店に斡旋したり、海外に売り飛ばしたりもしてるって噂もあるけどね」

「そんな……サイテーじゃん」


「よくあることだろ。どっちもクソだな」


「叶汰さん。その星亜って人はどこのお店で働いてるんですか?」


「『スターダスト』だね。ここから歩いて5分くらいの所だよ」


「分かった。行くぞ、刃金はがね


永月がサングラスを掛け、早々に店を出ようとしたその時。


「永月くん」


叶汰さんが呼び止めた。永月が振り返ると、叶汰さんは片目を閉じ、人差し指を立てた。


「永月秋人くん。今回のこと、貸しイチだよ。もし僕が困った時は君の力を貸してもらうよ。例えば……君のお父さんとか?」


「……考えとく。行くぞ、刃金はがね


「じゃあ叶汰さん、失礼します」


「うん。今度は飲みにおいで~美味しいソフトドリンク作ってあげるよ~」


にこやかに手を振る叶汰さんに会釈して、私は永月についていった。


店を出てエレベーターに乗る。永月が壁に背を預け、CBDデバイスを取り出して吸う。そしてため息混じりに煙を吐いた。


「ホストクラブか。クソ男がバカ女に接待する場所だろ? 絶対行きたくねぇ」


「ていうか私達年齢的に入れないよね? 先輩にお願いする?」


「捜査目的なら店に入ることは可能だ。潜入捜査で客として入るとなるとグレーだが……室長は手段を選ぶなって言うだろうな」


「確かに、冬華ならそう言うかも」


「とにかく今日はここまでだ。その格好で店に入るわけにはいかねぇしな。明日は私服で来い」


「分かった。出来るだけ大人っぽい格好で行くわ」


こないだ冬華に買ってもらった服があるし、あれ着てこっかな? 

エレベーターが地上階に到着する。降りてビルを出ようとしたその時、前を歩いていた永月の足が止まる。私は思いっきりぶつかってしまった。永月は足元を見て立ち止まっている。どうやら何かがあるようだ。


「ちょっと、何急に立ち止まっ……て、」


私も足元を見て、固まった。

怪しく光る色とりどりのネオンが、ピクリとも動かない白い素肌を照らす。砕かれた宝石が、キラキラと光っていた。


私達の足元、アスファルトの上に転がっていたのは──女の子の死体だった。

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